第3話 老人の正体
起きると同時に炊飯器からお米が炊けた音が聞こえた。
……何だったんだろう? さっきの夢。
「あぁ、感謝を忘れるな……か」
心の中でこの間の老人に感謝をした。肩の重みが少し取れた気がする。
炊飯器に付いていたしゃもじで米を掬って茶碗によそった。俺は久々に自分の口の中によだれが溜まるのがわかった。
「こんなに米が美味しそうと思ったことがない」
この白くきゅぴんとテカっている米。これはおいしいに決まっている。
今日のおやつはこのお米となる。モクモクと立っている湯気。これもおいしさの象徴だ。
「やはり最初の1杯はそのままだな」
米を食べた。この時、俺は衝撃を受けた。フィクションの世界によくある衝撃の落雷を受けたと言ってもいいレベルだ。
「なんだろう、熱いからだけじゃない、甘みもある。そして、程よい硬さ。んー、いくらでも食べたい」
……いくらでも食べたい……?
そういえば、この前酒の肴用に魚卵のいくらを買ったのを思い出した。解凍もしているので冷蔵庫に向かった。
もちろん、茶碗も同伴だ。2杯目のおかわりだ。
冷蔵庫からいくら、食器棚からスプーンも一緒に持ってきた。今度は豪快にスプーンでご飯といくらをかきこんだ。
「うまい!」
これにはめんつゆと大葉をかけてもいいな、わさび醤油もありだ!
この日、狂ったように米を炊いて食べた。するとどうだろう、肩の重みがなくなりかなり軽くなった。これくらいなら湿布を貼って寝れば1日で治りそうだ
しばらくして仕事中に不動産屋から電話がかかってきた。
『あっ、ごめんなさい、大家さんからさっき連絡あってあなたの部屋いわくつきだったらしいんで家賃1万円下げるか退去お願いしたいらしいんですけど……』
「え、退去は困ります! その差し支えなければ……」
この時、俺の脳内にはこの間のお米を勧めてくれた老人を思い出した。しかし、あの老人はスマホを使っていたしな。
『えっと、嘘みたいな話なんですけど妖怪が出るらしいんです』
「妖怪……?」
なんだろう、この感じ。あの老人はやはり……。
『えっと、妖怪名なんだったかな? あぁ、あったあった。【うまい米を食え】って言ってその妖怪が勧めた米を1度は食べないと取り憑くっていうよくわからない話で……。妖怪アニメとか妖怪伝記には存在が明記されてないらしいんです。その……あなたの住んでる部屋だけに現れるらしいんです。大家さんが言うには何代も続く妖怪らしいんです』
ホッとした。あの人が妖怪なら俺は仲良くできる。
あの妖怪のおかげか、俺は米に詳しくなり今となっては会社を立ち上げて農業に携わっている。新たな事業として引きこもりや障害を持ってる人の支援に農業と何か関係を持たせられないか考えている。
終わり




