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第2話 三人目の勇者に会いに行こう

 昨日あれだけ走って疲れたのだろうか。わたしの袖を引っ張りながら眠っている眠り姫(フェリン)がいた。

 あれだけ「シエル様の隣で就寝するなんて……」と言っていた人には見えない。気持ちよさそーに寝ている。


 改めてフェリンの隣に置かれている銃を見る。確かLSR-44型……だかなんだったっけ。これはフェリンの武器なのか? それではわたしはどんな武器を使っていたのだろうか。


 大きい武器を豪快に振り回すのもかっこいいし、短剣でスタイリッシュに攻撃するのもいいな。そんな妄想をよそに、わたしは疑問を浮かべる。

 そう、わたしはフェリンのことを全く知らないのだ。

 昨日それとなく聞いてみたが、わたしと一緒に行動していた仲間だとか具体的なことしか教えてくれなかった。

 ……まぁ、全て話すのは面倒くさいか。

 色々と考えているうちに、もぞもぞとゆっくりフェリンが体を起こした。


「シエル様……」

「起きたね。……実にいい天気だよ」


 上を見上げると綺麗な青空が見えた。昨日の時点では気づかなかったが、どうやら天井が突き抜けているらしい。

 通りで肌寒いと思った。


 気を取り直して。

 今からプランに会いに行くために村へと向かわないといけない。村は森を抜けたらすぐにあるようだ。

 フェリンは「これももういらないですね」とローブを綺麗にたたみ、テーブルと呼べるか怪しいボロボロのテーブルにそっとローブを置いた。


「さて、シエル様。準備はできましたか?」


 フェリンは銃を背負い、玄関の扉を開ける。わたしは「大丈夫」と返事をするが、道がわからないのでフェリンに道案内を頼むしかなかった。

 目指す場所はマカ村。

 わたしは意気揚々に「レッツゴー!」と青空に拳を打ち上げるのだった。


 ずっと暗かった森を見ていたからなのか、妙に明るく朝の森は昨日と違い鳥のさえずりが聞こえる。わたし達は人の手が通っていなさそうな獣道を歩く。


「ここからマカ村まで後どのくらいなの?」

「そうですね……あと15分ぐらいかと」


 屋敷から体感5分歩いてきた。足に疲れはなく、まだまだ余裕がある。これも勇者の力のおかげなのだろうか。

 フェリンはというと、わたしよりも元気そうで小さくスキップしながら歩いていた。


「なんだか楽しそうだね」

「はい!」


 フェリンは元気よく返事をする。

 そんなにプランと言う人に会うのが楽しみなのか。どんな人なのだろう。わたしも俄然楽しみになってきた。

 と、正面の方が少し開けてきたように感じる。


「シエル様シエル様。マカ村ですよ」


 フェリンが指を刺した方を見ると、見える範囲で家屋が数十軒、ある人は荷物を荷台に乗せ運び、またある人達は会話に花を咲かせていた。

 フェリンはわたしの腕を掴み「プランさんはこっちにいますよ」と引っ張る。

 わたしはその言葉に促されるまま引っ張られていく。


 目の前にある建物は手作り感あふれ、釘を打ち入った跡が多々ある木の建物だった。

 ……正直、あの屋敷よりもこの家の方が綺麗だ。

 フェリンは扉を三回ノックし「プラン。開けてください。フェリンです」と中にいるであろうプランに話しかける。

 すると、ギィと錆びた音が鳴り響き、開いた隙間からひょこっと頭が飛び出してきた。


「ど、どうしたのフェリン」


 年端も行かないような少年であった。

 髪はボサボサで、手入れされていないように見える。髪も長らく切っていないのか右目が髪で完全に覆われていた。

 身長はフェリンと同じに見えるが、猫背のせいでそう見えているのだろう。


「ひっ! だ、だれ?」


 プランはわたしを見るや否や頭を引っ込めてしまった。フェリンは「またか」と言うようにため息を一つ吐く。


「プランが言ったんですよ。シエル様に会いたいと」

「じ、じゃあその人が……シエルさん?」


 プランは恐る恐る顔を出す。わたしはそれに応えるように手を振る。

 プランは水に濡れた子犬のようにプルプルと震えていた。


「と、取り敢えず入ってください」


 わたしとシエルは言われるがまま家の中に入る。中は色々な物が散乱しており、真ん中に椅子と机が置いてありそれ以外に家具はあまり見られなかった。

 家の中が汚いと思ったが、わたし達の屋敷の方が汚かったのでその言葉をグッと飲み込んだ。

 隣にも部屋があるそうで玄関の扉以外に二つ扉がある。

 椅子が三つちょうどあったので、プランの対面にわたしが座り、その横にフェリンが座る。


「は、初めまして。僕の名前はプランです」


 最初に自己紹介をしたのはプランだった。内気そうな人だと思っていたが、まさか自分から自己紹介するとは……少し驚いた。


「わたしはシエルだよ。よろしくね」

「あ、実は話は聞いています。フェリンから……」

「話?」

「ちょ、ちょっとプラン!?」


 慌てるフェリンだったが、プランはそんなこと気にもせず話を続ける。


「『シエル様が見つからない』『シエル様を探すのを手伝って』って……毎日毎日言われるので僕も気になったのです」


 ほほぅ? まさかそんなにわたしを大事に思っているとは。

 フェリンの方を見ると机に突っ伏し、耳まで赤くなっていた。流石に可哀想だったので揶揄うのはやめておこう。


「……それにしても僕が聞いた話とは少し違う? 確かフェリンはシエルさんのことをクールで知的な人って……あ、違います違います。貶しているのではなく少し気になっただけで……」


 プランは早口で捲し立てるように話をする。

 恐らく前のわたしのことを言っているのか? どうやら今のわたしと前のわたしで矛盾が発生しているようだ。

 わたしが説明できればよかったんだけど……そもそも記憶って元に戻るのか?


 と、そんなことを考えているうちに頬を赤くしたフェリンが顔を上げて「あぁ、実はですね」と事情を説明した。


「と言うことです」


 所々かいつまんで説明をしていたが、理解したのかプランはこくこくと頷く。


「記憶が……その……大丈夫なのでしょうか」

「大丈夫大丈夫。わたしは元気だよ」


 プランは気まずそうに下を向く。

 恐らくこの大丈夫と言う質問には二つの意味が込められているのだろう。

 一つは精神的に、そしてもう一つは──巣食う者と戦えるのか。

 と、ここでふと気になった疑問をぶつけようと思う。少なくともこの気まずい空気からは逃れられるはずだ。


「そういえばよくわたしのこと見つけられたね。大変だったんじゃない?」

「あ、えっと」


 プランは顔を上げる。


「僕の勇者の目は《未来予知》なんです。少しだけ未来がわかります」


 と、プランの左目が少し光った。瞳の形が時計のような形に変わっていく。


「何それすごい!」

「ひぅ!」


 しまった。興奮して椅子から飛び上がってしまった。机に当たった衝撃でプランの体がビクッと跳ねる。


「すごくないですすごくないですぅ! 本当にほんの少しだけ、シエルさんが生きているぐらいの具体的なことしかわからないんです!」


 プランは首を横に振り全力で否定をする。いや、それでも十分凄いと思うのだが。普通の人なら誰かが生きているとはわからないものではないのか。

 プランはため息を吐きながら「僕にも聖痕があればなぁ」と呟く。


「……で、勇者の目って何?」

「勇者の目とは、勇者が持つ神様からの祝福のことです。性質は様々で、プランみたいにサポートが主な物や、私みたいに攻撃が主な物があります」


 どうやらプランは《未来予知》。フェリンは《操雷》と言う勇者の目を持っているらしい。


「ねぇねぇわたしは? わたしはどんなスキルを持ってるか知ってる?」

「シエル様ですか? シエル様はですね……」


 と、フェリンが困惑した顔でわたしの瞳をじっと見ていた。


「……どうして。どうして勇者の目がないのですか」

今回も説明が多くてすみません。次回はお楽しみいただけると思います。

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