1.ウロ
――あれは、神様なの。あの砂浜に打ち上げられた流木の横に佇み、じっと、わたしを見つめる。目。
暗く、底がないかのような底なしの二つの丸い空洞。黒いウロ。あれは、神様なの。
――神様が、わたしを、みてる。
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始まりは、本当に、些細な偶然で
偶々、だったと思います。
わたしは、お姉ちゃんと、二人で海水浴に出かけました。
お姉ちゃんと、わたしは、本当にはしゃいでいて、久しぶりの海に、テンションは最高潮、だったんです。
ほぼ、休憩もしないで、二人で、先の小さな島へ泳ぐ競争をしたり、大きなペンギンのボート型の浮き輪にわたしをのっけて、お姉ちゃんが動かしてくれたり、岩場でカニを捕まえたり、いっぱい遊んだんです。
それは、二人がお腹を空かせるまで続きました。
お母さんが、あんまり、夜遅くなっちゃ駄目よ、夜の海は危ないのだから、と、心配気に持たせてくれたお弁当を開けて、大きなおにぎりにかぶりつきました。お母さんのおにぎりは最高です。特にわたしは、肉みそが入ったおにぎりが大好きなのです。ちなみにお姉ちゃんの大好物のおにぎりは、おかかです。
一生懸命ごくごく冷たく冷やしたお茶をがぶ飲みしました。お姉ちゃんが困った顔で、お腹を冷やすから、温かいのにしなさいと言って渡してくれたお茶を断って、一生懸命のみました。
その日は、本当に喉が渇いていたんです。
一生懸命遊んだからかな?とわたしは内心不思議に思いながら一生懸命のみました。
お姉ちゃんが、思い立ったように、
「ねぇ?美鶴?アイスクリーム食べたくない?」
と、急にわたしに振ってきました。おねえちゃんは、普段、こういった場所でわたしをひとりにしないので、それも、後から考えると不思議に思うことだったように思います。
そわそわしだしたおねえちゃんは、我慢できなくなったのか、わたしにじっとしておくのよ?と言い含めて、アイスを買いに走っていってしまいました。
わたしは、ぼんやり、きっと、お姉ちゃんは、マンゴーアイスにするのだろうな、って思って、お姉ちゃん、ちゃんとわたしの好きなメロン味のアイスにしてくれるかしら。ってちょっと思いました。
おねえちゃんの黄色いサンダルと、しろい細長い足が残像みたいに消えていって、お姉ちゃんのショートの髪がぱらぱら風に揺れて、そのまま豆粒みたいになっていくのをぼんやり見つめていました。
よくわからないけれど、なんとなく、目を離せなかったんです。よくわからなかったけれど、急に独りは寂しいと、思ってしまいました。
そう思ったとたん、
ふ、っ、と、なにか視線を感じて、わたしは、ぱ、っ、と、後ろを振り返りました。
――そこには、うろのような、底のない闇のような、二つの空洞、黒いふたつの穴が、わたしをじ、っと、見つめていたのです。
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