19 クロウの正体
◇ ◇ ◇
「宇宙怪獣…だって!?」
その言葉に、クロウは絶句する。
俺はなぜ、宇宙怪獣と共にいるのか? 一体なにがあって、いつからこいつはいたんだ。
「ふむ…」
そんなクロウをよそに、宇宙怪獣――声の主は冷静な様子だ。
「この感情は今まで観測したことのないものだ。恐怖、警戒心…動揺。そしてそれ以外の…あぁ、これは怒りと呼ばれるものかな?」
「ぐっ…!?」
「あぁ、あとは…ごめんよ。僕の感情をある程度伝えようと思ったんだけど、それは不快なようだ」
「当たり前だ!」
宇宙怪獣と接触しているという事実だけでも嫌悪感を抱くというのに、自分の心のうちをズバズバと言い当てられるのは耐え難い。
「落ち着いてくれ。僕は君にそんな感情を抱いてもらいたくはないんだ」
「そんなこと、信じられるか!」
感情を制御しきれず、クロウは叫ぶ。
しかし、彼は理解していた。声の主の感情が、先程の発言に対して嘘をついていないということを。
声に出されたわけではない。しかし、直接そうであるということを、クロウは理解してしまうのである。
「さっきも説明したように。僕たちは望まずとも大なり小なり互いの思考を理解してしまう。嘘をつくことなんてできないのさ」
事実だ。
認めたくないが、この声の主は宇宙怪獣であり、彼はクロウに対して邪な感情を抱いてはいない。同一の存在であるから、わかってしまう。
今自分たちは、1つの肉体に2つの精神が入り込んだようになっているのだ。
いくらクロウが拒絶したところで、その思考は相手にも伝わってしまう。
「…なんで、お前はここにいる」
クロウは宇宙怪獣を拒絶することを諦めた。
それよりも必要なのは情報だ。
この際、相手は誰でもいい。クロウは自分が置かれた状況を知ることを優先した。
「そうだね。その説明は簡単だ。まず僕はこの機械。シグルドと融合したからこの思考粒子にアクセスしている」
「待ってくれ」
その説明のどこが簡単なのか。
「お前がシグルドと融合したというのは、まだ理解ができる。つまりお前は俺の体を乗っ取り、シグルドを奪った、あの宇宙怪獣ということだな?」
「そうさ。君たちのデーターベースでは、今僕はバッタ型と呼ばれているみたいだね」
その言葉に、不思議と驚きはない。
この声の主が、自分を宇宙怪獣と名乗ったときから、なんとなく想像はできていた。
だが、わからないこともある。
「なんで、俺は地球にいる?」
クロウは、オリュンポス恒星系でバッタ型と交戦していたはずである。
だが目が覚めると、地球にいたのだ。
しかも、ミソラのものではない、宇宙怪獣に乗っ取られたシグルドの内部に。
「それも回答するのは簡単だ。君がここにいるのは、僕が君をここまで持ち帰り、その上で粒子を混ぜたからさ」
「…な!?」
持ち帰り、混ぜた? こいつが何を言っているのか、クロウには理解ができない。
「…君の情報では、君は僕と戦っている途中であらゆる情報にアクセスできなくなったようだね」
「あ、あぁ…」
「あの時君は…今の君を構成する粒子は、シグルドの右腕にいたんだ」
「じゃあ、つまり! 俺は…俺は…!」
言葉は返ってこなかった。
代わりに、宇宙怪獣の思考が、情報となってクロウに届けられる。
「俺を構成していた思考粒子、その一部だってことなのか!?」
思考粒子は、殲闘騎の全身を駆け回っている。
あの戦いの時、バッタ型はミソラ騎の右腕を奪った。奪ったのである。
そう、今ここに存在するクロウの意識は、その時に右腕の中に存在していた思考粒子、それによって形成されたものなのである。
「君を回収して、地球に戻った後。残っていた粒子はほんの僅かだった。でも、僕たちには僕たちと融合したシグルドがある。だから右腕の中に残っていた思考粒子を、こっちのシグルドと混ぜ合わせることで、君を構成する粒子の数を、君の意識が僕たちとコミュニケーションが取れる程度にまで増やしたのさ」
残っていた粒子…それを混ぜ合わせて増やした。
わからないことだらけだ。
なんで、そんなことを?
「いくつか理由はあるけれど…僕たちはね、人間のことを知りたかったんだ」
宇宙怪獣はクロウの思考に、答えた。
「人間の持つ意思や感情というものを知りたかった。そこに答えがあるのではないかと思ってね」
答え…?
疑問に思うと同時に、思考粒子が震える。
その波は、クロウの疑問に対する回答が刻まれていた。
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