26 ドラゴン型への道
◇ ◇ ◇
【ガイア恒星系第11惑星近郊】
統一時間4月8日08時55分。
ミソラ操るシグルドはシグルド部隊を率い、次元振動砲の余波が残る宙域を駆けていた。ミソラたちが目指す先には作戦目標である巨大な宇宙怪獣がいる。
ミソラは目標との距離を確認する。
まだ、こんなにあるの?
数値を確認して、ついつい距離計が壊れてしまっているのではないかと疑ってしまう。
障害物のない宇宙空間では、物と物の比較ができないため見た目からの物体の大きさを把握しづらい。
そのためミソラは機体からドラゴン型までの距離を把握していたが、宇宙怪獣の巨大さをうまく認識できず、距離に対する錯覚を起こしていたのだ。
もちろん彼女はこの宇宙怪獣の体長をデータの上では把握していたし、だいたいの大きさというのも理解はしていた。しかし、いざ実物を目にすると、その数値を認めたくないと考えてしまう。
「……っ!」
センサーが、高熱源反応を感知した。
「回避!」
仲間に向かって叫びながら、機体を右方向へと動かす。
直後、ミソラがいた空間を熱線が駆けていった。
ドラゴン型の射程圏内に入っていることに気がつかなかった!
これはミソラの失敗だった。カドモス隊から事前に情報を受け取っていたにも関わらず、注意散漫になっていたのだ。
ミソラはあわてて、味方機の安否を確認する。
シグルド全騎、健在。
脱落者が出なかったことに、ミソラは胸をなで下ろした。
だが、カドモス隊からの情報通りなら、ヤツは短い間隔で熱線を吐いてくる。
このまま進むのは危険だ。
「ミソラ騎から全シグルドパイロットへ、各自の判断で、熱線を避けながら目的地まで向かって!」
「「了解!」」
ミソラが指示を出すと、7騎のシグルドは陣形を崩し散らばっていく。
仲間が散開したのを確認し、ミソラは前を向いた。
あと3分もすれば、目標にたどり着ける。
だが、それまでに何発の攻撃を避けなければならないのだろうか。
緊張により、嫌な汗が頬を伝う。ミソラは寒くもないのに唇が震えていることに気がついた。
「なに、おびえてんのよ!」
自分を叱咤する。
数日前まで、こんなことはなかったじゃないか。
あの頃の自分の愚かさを理解はしていたが、当時の勇敢さだけは取り戻したいミソラである。
再び、シグルドのレーダーが熱線の接近を感知した。
◇ ◇ ◇
同時刻。
これはまずいかもしれない…
クロウはミソラの思考を読み取りながら、不安を覚えた。
この機体の一部となり、彼女の様子を見てきたクロウだったが、こんなに動揺しているミソラを見るのは初めてだ。
いや、まだクロウが生きていたころにも、彼はこんな様子の彼女を見たことがあった。
ヒュプノス・タナトス恒星系での出来事だ。
戦闘が行われていた宙域で、味方機の残骸を見たミソラはしばらく呆然としたまま、機体を動かすことができなかったのだ。
なんとか彼女を安心させてやりたいが、その手段が思い浮かばない。
結論として、彼は自分ができることに専念することにした。
当たらないように、俺が少しでも早く反応するんだ。
レーダーと、ミソラの思考に意識を集中する。
熱線の発射が確認されたと同時に、彼女の望み通りに機体を導いた。
シグルドは難なく熱線を回避した。
しかし…
レーダーが再び熱源を感知した。しかも、1つではない。
4発の熱線がこの機体に放たれていた。
連射…というか、複数同時に撃てるのかよ!
ミソラからの指示が入る前に、熱線の通過ポイントを算出する。
その結果をミソラに伝え、機体の操縦を促した。
ミソラは、即座に機体をひねらせ、数秒間隔で襲い来る熱線を避けていく。
1…2…3…
4発目の熱線は、機体の頭上数メートルを通り抜けていった。
ミソラの操縦技術がなければ、今頃シグルドは跡形もなく消え去っていただろう。
だが、それで安心してはいられない。
ドラゴン型からは、すでに次の熱線が放たれていた。
クロウは機体の制御を補助しながら、他の機体の状況を確認する。
全騎、健在。
そこで、クロウは気がついた。
散開したシグルドたちは、ドラゴン型からの熱線攻撃を受けていたが、どの機体も1発ずつしか撃たれていない。ドラゴン型はこの機体に集中攻撃をしかけているのだ。
もしかして…
クロウは機体に取り付けられた荷物の存在を見る。
このシグルドには、他の機体の装備に追加してコンテナがくくりつけられている。
その分機体重量は増しており、他の機体よりも機動性が下がっているのだ。
足が遅いことに気づいて、集中攻撃をしかけてきたのか?
背筋が冷たくなる。
ドラゴン型には知能のようなものがあると情報では知っていたが…ここまでやるとはクロウも予想外だったのだ。
再び、熱線が放たれる。今度は5発。
機体と目標との距離が近づいている分、回避にかけられる時間は短くなっていく。
クロウは今まで以上に早くデータを弾き出す必要に迫られた。
やってやる!
元より、この作戦を考えたのはクロウなのだ。
その結果を見届ける前に消えるわけにはいかないし、ミソラを…仲間たちを死なせたくはない。
クロウは機体の中に流れる、思考粒子の速度を早めた。
かつてないほど膨大な情報の塊が、雪崩のように彼の意識を襲った。
クロウは、その物量に一瞬圧倒されるが…
これなら!
粒子の流れを早めた分、やり取りする情報も増える。
それをうまくさばくことさえできれば、機体の制御をさらに繊細にこなすことができる。
ミソラの思考を受け取ると同時に、結果を導き出す。
早く、早く、前回より、さらに早く…
伝達速度の向上により、機体は先ほどよりもなめらかな動きで、熱線を避けることができた。
こうしてミソラ騎はドラゴン型の攻撃を避けきり…
どの機体よりも早く目的地点――ドラゴン型の体内入り口へと到着した。
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