18 迎撃艦シリウスの混乱
◇ ◇ ◇
ドラゴン型の出現に伴い、殲闘騎部隊は全騎、戦線を離れ迎撃艦シリウスへの帰投命令を受けていた。
帰還の途中、パイロットたちは背後に現れた巨大宇宙怪獣の姿を何度も振り返って確認した。
やつはまだ、こちらに気づいていない。それどころか、ホールからも出てこれていない。
確認する度に、安堵する。
まだ、生きることができる。
彼らは、理解していた。
ドラゴン型がホールを出てきたら最後、自分たちは反撃することも叶わずに宇宙の藻屑になることを。
終わりは、まだ訪れていない。
◇ ◇ ◇
【ガイア恒星系第11惑星近郊】
統一時間22時10分。
迎撃艦シリウスの艦内では、先ほど新たに現れた宇宙怪獣に対する作戦会議が開かれていた。
「ホールからやつが出る前に、次元振動砲を使うべきです!」
砲撃長のミゲル・ラックマンは即座にシリウス最大の兵器の使用を提案した。
「次元振動砲であれば、カテゴリー7相手であっても対処できます!」
次元振動砲は、殲闘騎では太刀打ちのできない、巨大怪獣が出現した時に使われる切り札だ。カテゴリー7という強大な敵に対してこの兵器の使用を提案するのは間違いではなかった。
「私は反対だ。次元振動砲を1度使えば、艦はしばらく動けない」
しかし、副長のティルス・ティンズリーが、その意見に反論した。
「それにもし打ち落とすことができなかったら、広がったホールからやつが出てくるぞ? やつは我々を襲い、この艦を沈めるだろう。その結果どうなる? まともな防衛戦力がないこの恒星系は、宇宙怪獣に滅ぼされるだろうな」
次元振動砲は強力な兵器だったが、使用するにあたって、2つのリスクがあった。1つは使用するとしばらく戦闘艦としての行動ができないということ。そしてもう1つが、ホールに次元振動砲が当たった場合、ホールの直径を広げるということ。
「幸い、やつはホールに引っかかって身動きができないでいる。援軍が到着するのを待ち、戦力を整えてから撃退するべきだ」
カテゴリー7の宇宙怪獣が出現するということは、彼らにとって不幸な出来事としか言いようがなかった。
ただ、現在ドラゴン型がホールから完全に出てこれていないということは不幸中の幸いと言えるだろう。ドラゴン型は小型のホールから出てこようとしたために、その巨体がホールの直径を超えてしまい、体がつっかえていたのだ。
次元振動砲を使用した場合、その枷を外してしまうリスクがあった。
「援軍の到着予定時刻は?」
「30時間あれば、8隻のシリウス型迎撃艦がこの宙域に到着可能です」
マディの問いに、ティルスが答える。
「では、ホール拡大に伴うドラゴン型の完全解放予想時刻は?」
「…ホールの拡大速度にもよりますが、早い場合は24時間後、遅くとも36時間後には…」
「もし、ホールの拡大が早かった場合は6時間、我々の戦力だけで持ちこたえなければならないということか…」
マディは腕を組み、下を向いた。
「援軍要請を出した上で、我々はホールの監視を行う」
そして10秒程度経った後、顔を上げ判断を下した。
「ミゲル砲撃長は次元振動砲をいつでも撃てるように準備しておけ。ホールの拡大が早い場合は、使う可能性が高い。」
「…了解です」
「ビラーゴ殲闘騎部隊長。殲闘騎パイロット全員に十分な休息を取るよう、伝えておけ。小型の宇宙怪獣もまだ残っている。必ず出撃はあると考えておけ」
「了解しました」
援軍が間に合わなかった場合のことも考え、彼は各隊長に指示を出す。
状況は最悪。だが、まだ、我々には時間はある…
それがマディにとっての救いだった。
ホールの状況次第で、再度招集をかけることを確認した上で、作戦会議は終了した。
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