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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【始動編】 第2章 ハート・イン・ザ・スチール
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10 “彼”に起きたこと

◇ ◇ ◇


 シグルドのコクピットの中で、彼は目を覚ました。


 …こんな場所で寝たから、嫌な夢を見るんだ。

 彼の意識の中では、さっきまで見ていた夢の内容がこびりついていた。

 父が死んだ日の回想。そして自分が慣れないことをして死ぬ光景。いや、逆だろうか。

 宇宙怪獣に突撃して…戦死した夢を見た後に、幼い日の夢を見たのだったろうか?


 寝起きのせいか、頭がぼんやりとする。

 それなのに、そのことだけは鮮明に覚えていた。


 変な夢だったな。


 彼は殲闘騎を出ることにした。なぜ自分がこんなところで寝ていたのか、記憶がないことが不思議ではあったが、きっと点検でもしているうちに寝落ちでもしたんだろうと勝手に納得する。


 そうして、コクピットハッチを開けようとした時だった。

 彼はロックを解除するため、手を伸ばそうとしたが…

 あるはずの右腕が、ない。


「…………え?」


 統一時間4月7日 10時05分。

 彼――クロウ・シノサカは異常に気がついた。


 ◇ ◇ ◇


 最初の5分間、クロウはただただ狼狽えることしかできなかった。

 まだ夢でも見ているのではないかと考えるが、何をしても夢から覚めることはない。そして、その一連の行動を経て彼は理解した。


 これは夢じゃない。


 その後の5分間、彼は自身の状況を確認することにした。

 手はない、腕もない、脚もないし、身体もない、コクピットの中はまったくの無人だった。

 奇妙である。彼は思考ができた、視界もあったし、匂いを感じ取ることもできた。

 しかし、この空間には自分というものが全く存在しないのである。


 その次の5分間で彼は冷静さを取り戻しはじめていた。

 もちろん未だに頭は混乱していたが…どうやらとんでもないことになってしまった…ということが理解できた分だけ、10分前よりはマシだ。

 そして、クロウは自分がなぜこんな状況になっているのか、もっともらしい理由を考えた。


 俺は、幽霊になったのではないか?


 さっきまで夢だと思っていた出来事を思い出す。

 カテゴリー1の群れ、友軍機の残骸、姿を消す宇宙怪獣…そして、ミソラの危機。

 ミソラを助けるために単機で怪獣に突っ込んで…トドメを刺そうした所で反撃を受けた。自分の腹に大穴が開き、意識が薄れる中で、宇宙怪獣に一撃を加える…

 そんなこと、自分にできるわけがない…とも思ったが。

 彼はその時の感触を実感を持って、覚えていた。


 つまり、俺はもう死んでいて…


 幽霊になったなど、バカな考えだということは分かっている。

 人類がこの銀河系に進出して、数世紀が経っていた。科学技術は発展し、今や光速を超える速さで開拓が、物資の流通が行われる時代だ。


 だが、それでも幽霊というものの存在は立証されていない。

 誰もいないはずの部屋でラップ音を聞いたとか、暗礁宙域に浮かぶ幽霊艦を見たとか…噂話が広がることはあるが、そんなオカルトを本気で信じている人間はいない。


 もしかしたら、ごく稀に起きる超科学的な現象が自分の身に起きたのかもしれない。やっぱり、夢を見ているのかもしれない。クロウはまだその可能性が0ではないと思っていた。だが、彼はそんな現象は知らないし、いくら待っても夢は覚めそうにない。

 結局、自分が幽霊になったと考えるのが一番納得いくのだ。


 それにしても…とクロウはコクピットの中を見回す。

 これは一体誰の機体なのだろう?

 このコクピットは彼が乗っていた機体のものではなかった。 


 クロウは訓練兵の時から専用のシグルドに乗り続けていた。これは特別なことではなく、全てのシグルド乗りに共通することだった。それはシグルドに搭載されたエインヘリアルシステムが、パイロットの思考を学習する機能を持っていることが理由だった。

 クロウは、コクピットの天井を眺めた。そこには彼が過去につけた傷が付いているはずだったが…綺麗さっぱり消えていた。


 彼がこの機体が別人の者だと確信した理由はもう1つあった。匂いだ。

 コクピット内には、かすかではあるがシトラスの香りが漂っていた。おそらくシャンプーなり、ボディーソープの匂いだろう。

 この香りをクロウは知っていた。彼がそういう匂いのするシャンプーを使っていたというわけではない。

 シグルド乗りの誰かがこの匂いを好んで使っていた記憶があったのだ。


 これは、たしか…


 クロウは匂いを嗅いで、相手を思い出そうとした。


 その時だった。

 コクピットハッチのロックが解除される。

 クロウがやったわけではない、外側から、誰かがロックを解除したのだ。


 ハッチが開き、クロウは機体の主が誰かを知った。

 開かれた扉の外に、ミソラ・アカツキが立っていたのだ。


 そういえば、ミソラの近くにいると、よくこの香りがしたな。


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