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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【驚動編】 第4章 クロウ・シノサカ
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26 1人である、最後の日

◇ ◇ ◇


統一時間11月12日 16時00分。

超大型迎撃艦母艦ヴァルハラ内のメイン研究棟では、思考粒子の増殖作業が行われていた。


棟の中央部には、巨大な水槽のようなものが置かれていた。

その中では、今も黄金色の粒子が動き回っている。


「浸透率90パーセント。思考粒子を追加するわ。クロウ、異常はない?」


「大丈夫です」


槽の前に立ったルーシー・ノイマンが呟くと、槽の横に取り付けられたスピーカーから、少年の声が響いた。


現在彼女は、水槽内にある思考粒子、その意識の持ち主であるクロウと対話を行っていた。


「今追加した粒子で、目標値に達成するわ。あとは各シグルドにあなたを補充すれば、作業は完了よ。お疲れ様」


「はい…博士こそ、2日間もありがとうございました」


自分の意識が拡大していくのを感じながら、クロウは礼を述べた。


特殊な槽にクロウの意識が入った思考粒子と、まっさらな思考粒子を詰め込む。

やがて、まっさらな思考粒子にもクロウの意識が宿る。

槽内の思考粒子のほとんどにクロウの意識がついたと判断されれば、再び思考粒子を補充していく。

これを繰り返して、ヴァルハラに所属する全ての殲闘騎シグルドにクロウ入りの思考粒子を注入できるよう製造するというのが、今回の作業の目的であった。

この作業は、ルーシー主導でまる2日間かけて行われていた。


「浸透率100パーセント。お疲れ様。製造量も目標値に達成したわ」


ルーシーは満足そうに頷くと、再びクロウが詰まる研究槽へと視界を移した。


「お疲れ様、クロウ。今のあなたは、あなた史上最大にまで意識が拡張したことになるわね」


そう言って笑うルーシー。

一方のクロウは、ルーシーの言葉が冗談なのかなんなのか理解できずにいた。


「これからあなたは、このヴァルハラ中のシグルドに意識を移植させられる。そこからはこの宇宙中に広がっていくことになるわ。シグルドと共にね…」


あと3日後のことである。

宇宙怪獣との戦闘激化を予想して、ヴァルハラに駐留する最新鋭の迎撃艦たちは、人類の支配権である主要星系への配備が決まっていた。

1星系につき1隻から2隻の迎撃艦が配備されることになっており、もちろんそこのはシグルドが載せられている。


「今、この艦内ではあなたの意識は全て同期させているけど、今後はそんなこともできなくなるわ。つまり、シグルドに意識が移ったら、あなたは複数の意識を持つことになるはず。それぞれが独立して思考し、生きていくことになる…だから、聞きたいことがあるのだけど」


「…なんでしょう?」


「まだ意識が1つと言える状態のあなたに聞きたい。いや、答えて欲しい」


クロウは、意識をルーシーに向けた。

ルーシーは、その両目で研究槽を――思考粒子を――クロウを、見つめていた。


「悩みがあるなら、言って」


「…っ!」


それはクロウが予想もしない質問であった。

彼は、ルーシーの人となりから、学術的な、サンプルを取るために必要な質問をしてくるものだと思っていた。


「この作業を開始してから…いえ、その前日から、あなたの態度は少しおかしいわ。いつもとは違う気がするの」


だが、彼女は、クロウを1人の人間として扱ってくれていた。

だからこそ、ルーシーは友を心配するような目で、クロウに語りかけていたのだった。


だが、優しさを向けられたクロウは、どう答えるか決めあぐねていた。

たしかに、彼には悩みがあった。

数日前の夜に自覚してしまったこと、自身は何者なのかという悩み。


だが、そんなことを話して、どうなる?

ルーシーを心配させるだけなのではないか?


「…まぁ、私の勘違いなのかもしれないけど…ダメね、ずっと人には興味とかもってなかったから、こういう変化とかも鈍いみたい」


結局、クロウは何も答えることができずに、30秒ほど黙っていたところで、ルーシーは後ろを向いた。


まだ、間に合う。


クロウは、意を決して、口を開こうかと思ったが…


「…大丈夫。心配してくれてありがとう」


結局、自分の悩みを彼女に打ち明けることはできなかった。

そうして、このことが、その後のクロウの後悔となるのであった。





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