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何するにしても仕込みは大事。マジックも料理も戦も其れは変わらない

泗水が通る梁国下邑。


徐州へ向けた交易港を併設し、泗水から水を引いた広大な田畑が広がる。


その物資の運搬の易さから郭嘉の提言で徐州との戦いになった際の防衛拠点として増築……魔改造された梁国一の巨城である。


水路を兼ねた水堀が交易港の左右の川から引かれ、更に交易港と白の間を通って一周。


四方に区画があり城内に入るには二重の門を超えねばならない。厚い城壁には投石機が数機鎮座していた。


その城の港で良は船から降りる兵の様子を見ながら近場にいたフェルト帽子伯長に言う。


「全員到着した?」


「はい。全軍が港内へ入っております」


「よっしゃ、ゆっくり休ませといて。

明日からは野宿だし今日は酒も食い物も確りと食っとく様に」


「承りました白獣の頭目!」


定着した賊っぽい呼びかけに頷くと、念入りに地図を凝視する郭嘉に問うた。


「明日の段取りは?」


「中郎将許耽配下の司馬章誑が先導してくれる手筈だ。明朝数騎で向かって来る。細かくは後で伝える」


「良し。取り敢えず明日だな」


良は紅蓮に染まる空を睨む。


現在、郭嘉を参謀に直下の騎兵のみを連れ梁国で川を渡り敵後方、奇策を持って彭城を攻撃しようとしている。


魅入られる様な陳宮の策が成された微山湖西岸、方与城の戦いを思い出していた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー◯ー◯微◯ーーーーーー

ーーー◆ーーーーーーーーーーーーーーー

泗泗泗泗泗泗ーーーーーーー◯ーーーーー

◆ーーーーー泗泗泗ーーーーーーーーーー

睢睢睢ーーー1ー◆泗◯泗泗泗泗ーーーー

2ーー睢睢睢ーーーー泗ーAーー泗泗泗B

ーーーー◆ー睢◆ーーーーーーー◯ーー泗

沙沙ー◆ー◆ー睢◯Cー◯ーーーーーーー

ー3沙ーーーーー睢睢睢ーー◯ー睢睢睢睢

ーー◆沙ーーーーーーー睢睢睢睢ー◯ー◯

ーーーー沙ーーーーーー◯ー◯ーーーーー

ーーーー◆沙ーーーDーーーーー◯ーーー

ーーーーーー沙4ーーーー◯ーーー◯ーー

◆ーーーーーー沙ーーーーーーーーー◯ー

ーーーーーーーー沙5ーーーーーーーー淮

ーーーーーーーー淮淮淮淮淮淮淮◯淮淮ー

潁◆ーーーーー淮ー△ー△ー△ー淮ーー△

ー潁潁ーーー淮△ーーー△ーーーーーーー

◆ー◆潁△淮ーーーーーーー△ーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

*微・微山湖


*泗・泗水*睢・睢水

*沙・沙水*潁・潁水*淮・淮水


数字◆△・呂布陣営

1梁国下邑(良)・2梁国淮陽

3譙国譙・4汝南山桑・5沛国龍コウ


英語◯・劉備陣営

A彭城国彭城・B下邳国下邳(張飛)

C沛国相(劉備)・D沛国銘城(関羽)


策はこうだ。


先ず良が全力で目立って関羽に良の居場所は山桑だと思わせた。


あの一騎打ち。良の旗を城に残したまま硬く門を閉じれば、普通は腰が引けて籠城していると考える。


次いで袁敏を大将として関羽篭る銘城に向けて進軍させ、連れて来た兵の数を数倍にして喧伝し彭城の劉備本体を引き寄せる。


更に許兄弟と紀霊を関羽に向かって出陣させることで、関羽劉備を沛国に縛り付けたのだ。


同時に良と麾下の精鋭騎兵は別部隊に紛れ譙から迂回し敵として突如現れる事で、徐州彭城で留守番してる張飛を引き付け、其の内に荀攸が密約を交わした曹豹が下邳と彭城を奪う策だ。


既に劉備が本体を連れ彭城から出ており、張飛が彭城に移った事は確認してある。


後は良が上手い事、張飛を引きつけられるかどうか。


「白虎殿、そろそろ行こう」


郭嘉に言われ明日に備えて軍議をする為に評定の間に向かう。


長い通路を郭嘉と馬鹿話かましながら歩き、やたらと飾り物の多い広間へ赤い垂れ幕を上げて入った。


梁国の統治防衛を任されているは郝萌である。派手好きで成金っぽいオッさんの見た目相応に商いに精通し、何より弩部隊を率いる有能な将で有るのだ。


評定の間は彼の好みに合わせてやたらと装飾されていた。


良としては此処に飾られている骨董品の様なツボ等の意味がイマイチ解らない。


ぶっちゃけ戦争最前線に必要だろうかと言う思いがあった。誰もいないのを確認してボソリと言う。


「飾りっ気すげぇな」


「ふむ。白虎殿、こう言った装飾品にも意味はあるぞ」


「へー、どんな?」


「心理的物だ。

戦場になる可能性がある場所でこういう物が有ると、敵の使者が来た時に与える印象が変わる。


使者とは同時に情報を集めようとする者。


元来、衣食や言葉から推察しようとするのだが、こうも装飾品が有れば其方に目がいき余裕を悟らせるのだ。


そもそも此処は港湾都市。まぁ、とは言えこの部屋は過剰に思えるがな」


「ホホホゥ」


郭嘉の背後から少々ネヴァついた声がかかる。


「見込みがあるかと思っていたがぁ、未だ未だな軍師殿ぉ。後で此の宝物のぉ、意味という物を教ぇてやろうぅ」


「若、御久々です。お待たせ致しました」


「郝梁国相、曹性のオッちゃん御久々!」


良がそう返すと郝萌と曹性は拱手して左右の席に座った。曹性は相変わらず西方の曲刀を腰に括り付ける丸顔の気の良いおっさんだ。


反対に曹性の上司に当たる郝萌は金鍍金鎧と白外套を纏う。特徴のない顔に鍛えられた体躯、身体の首のつく位置に装飾品をじゃらつかせている。


矢鱈とキラついた装飾品を身に着けている所を除けば、見た目に特徴は無い。が、纏う物のゴテゴテした煌めきは一度見たら忘れないだろう。


翡翠や玉を散りばめた装飾と絹の衣、黄金の腕輪に至っては何で付けているのか本気でわからない。


「後はぁ、御一人のみぃ、ですなぁ」


何より喋り方がスライムみたいにネヴァとした特徴的過ぎるオッさんである。


「遅くなりました」


漣の如く、しかし耳によく通る心地の良い声が評定の間に広がる。見目は三十代程だろうか?若々しくも落ち着いていて雄大の二文字が似合う男が立っていた。


整った顔では有るが故にこそ額から目を通り顎まで通る傷後と、耳から頬にかけた交差する頬の十字傷が目立つ。細りとした様に見えるが長身故で、均整の取れた体躯は屈強。


彼は袁術軍を撃退した名将である。


評定に集った誰よりも存在感のる此の男は陳国相。駱俊、字名を孝遠と言う。


わかりやすく言えば粥拒否坊ちゃん駱統のパパだ。


彼は姿勢良く流れる様な所作で拱手し頭を下げて言った。


「呂州牧。統が世話になっております」


「いやいや、息子さんは確りしてますよ。さ、世間話も良いけど軍議を始めましょう」


ゆらり頭を垂れて賛同すると、はたまた流れる様に美しい所作で腰かけた。


全員が揃い郭嘉が作戦概要を朗々と語る。


其処で梁国の守備隊の内の半分を攻撃に充てたいと言う話になった。


「俺としちゃぁ、郝国相と曹性のオッチャンに来て欲しいんだけど・・・」


「ぅうむ、その任は陳国相に譲るべきだとぉ、思うがなぁ。守備隊のぉ、指揮系統が混乱するのでは無いかぁ?」


「しかし、私の兵では呂州牧の騎兵について行けませんね」


「白虎殿、郝国相の意見も一理あるぞ」


「えー、でも見せ付けるのには曹性のオッチャンの弓騎兵が居る方が良いんだけど。つー訳で。秘策もあるしお願いします」


「ふぅむ。…まぁ、良いだろう。さて、準備を整えるかぁ」


つー訳で三日後、彭城城まで直ぐの地点。


良達は三千の兵で行軍し泗水対岸の城から身を隠す様に、近くの大きな森の合間に一日かけて小規模な陣屋を拵え体を休めていた。


此の地点が兵を休ませられるギリギリの場所だ。敵には自軍の情報が良く良く入っていることだろう。


敵の注意を引くのには丁度いい。


「陣容は彭城城に向かって郝国相、曹従事中郎。最後に我らの軍だ。


章誑に走って頂き曹下邳国相に夕刻に彭城城に挟撃を決行するよう伝えてある」


「ふんふん。伝達は?」


「郝国相、曹従事中郎には伝えておいたぞ」


「まじか。ありがとよ。じゃあ、俺は明日に備えて寝るとすっかな」


良はそう言うと天幕に入り唯の大布に包まる。


決戦は明日。敵の兵は不明瞭だが同等程の兵力であの張飛と戦う可能性に良は身震いしていた。郭嘉がいるとは言えやはり歴戦の名将が相手と言うのは恐ろしい。


だが、負ける気は無かった。と言うか負けられない。


見上げていた夜空、グズグズ考えず寝ようと寝返り打って「……痛った」石が刺さる。


なんか微妙な気分になりながら、はらい損ねた其れを摘んで茂みに弾き飛ばす。


下は草の隙間に小石なんかがあって鬱陶しいが大地を寝床に夜空を屋根にした野宿には慣れたものだ。三年前なら翌日動けない事さえあったが、今は翌日節々が痛くなる程度でしか無い。


爆睡かますのもお手の物、0.93秒と言う時間で眠りについた。銃があれば0.1秒の早撃ちが出来そうな速度であった。


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