兵糧って大事
前々からなのですが今回も細かい地形はモロ適当(いい加減な方)です。
ネットなどで調べてみたのですが大きな川と町の位置程度しか解らず、中原だから平野と丘陵地帯で雑草とか生えてる程度かな?くらいの安易な発想で書かれています。
又、九割自分の為の途轍もなく見にくい地図(想像)があります。
上記の二点が大丈夫な方以外には御覧になる事をお勧めできません。
大丈夫な方のみ暇つぶしにでも読んでってくれたら幸いです。
鋭い眼差しの齢12、3程度の勇士が馬上で頬に手を添え広がる荒野に出来た円状の人壁を見据え熟考している。
常人では見る事の出来ない距離から其れを眺める彼は呼廚泉。
歳の離れた尊敬する兄である於夫羅が病で倒れた為に本拠を叔父の去卑に任せ単于の代わりとして曹操の頼みを受け、少数精鋭300騎を率いて敵後方に潜り込み呂布軍の糧道への攻撃を行っていた。
襲撃の二、三度目までは倍以上の敵を殲滅し兵糧を奪い尽くし持っていけぬものは燃やしてしまっていたが、敵が素早く対応し兵糧部隊を強固に守る為に良将を護衛に着けたようで数日に渡って攻撃するも悉く失敗していた。
空腹の苛立ちを仕舞い込み次こそはと思考を巡らせる。
「アレが漢王朝最強の武人呂布奉先の配下の部隊か・・・。
敢えて雨中で強引に街道を移動しその周辺に泥濘が点在する地に我らを引き込む事で機動力と選択をある程度抑え込んだ知力、その豪雨の中で強行軍を続け我らに三日三晩攻め続けられていると言うのに未だ兵が離散しない恐ろしい統率力…」
何度も矢筒が空になる程に攻め立てハリネズミの様相を呈しながらも淡々とこちらの攻撃を防いだ敵を評価し、同胞の為に兵糧満載の荷車を損害無く強奪できないかとコチュウセンが頭を悩ませていると騎馬に乗った40歳前後の同胞がスッとあらわれる。
「コチュウセン単于」
振り返る事もしないコチュウセン。
彼の意識が芽生える前からコチュウセンの横にいた老け顔の壮士は何時ものことだと構わずに小さな偉人に背後から進言をする。
「今日は晴れ渡っています。この分だと明日も又そうでしょう。そこで疲れ切っているであろう夕方辺りに敵を攻撃し荷車を燃やしてやってはどうですか?
・・・同胞達は悲しみますが」
「・・・ハァ。
じじ様、皆やはり不満が募っているか?」
「えぇ、とても」
「良し。ならば無理をしてでも荷を奪うか・・・今までの様に死人が出ぬという様にはいかんだろうが」
さて、年相応にヘンニョリと気を落としたり年不相応にキリリと気を引き締めたりしているコチュウセンは置いといて、此処で兵という者達が戦をした時のメリットと言うものを一つ挙げよう。
大抵の場合絶対に飯が食える。
ハァ?と思うかも知れないが此れが結構マジである。特にこの時代というのは寒冷期と乱世に悪政のせいで大極貧時代だ。そして其れは匈奴もまた同じ事。ついでに言って仕舞えば其れが最近の弱体化の理由の一つであって草原さえガンガンに減っており家畜を屠殺せざるおえず碌に飯が食えていない。曹操に帰順した理由も安住の地を提供して貰い曹操の爺ちゃんと父ちゃんから継いだ膨大な資金力で養ってもらう為である。
・・・まぁ、もう曹操に資金とか粗方無いけど。
んで逸れ倒した話を戻して何が言いたいかというと兵士達、今お腹ペッコペコなのである。
敵の奥深くに入り込み足りなくなれば奪う前提の作戦を立てた為に余り食べ物を持ってこず、近隣の町や集落を襲おうにもそう言う税逃れ等の理由で逃げ出した者は曹操が兗州を治めてすぐに城のある都市中に連れ戻されているため結果として敵への襲撃を失敗すれば食は寂しくなる。
そんな彼らの目の前に少ないとは言え再度やってきた兵糧満載部隊。
荀彧からは危険そうなら荷車は最悪無視してしまった方が良いとも言われてはいるがこの状況では奪わねば部下達は不満タラタラであろう。そんなこんなでコチュウセンは荷車の少なさと妙に強い護衛部隊に違和感は有れど恐らくは数度に渡って敵の兵糧を奪った為可及的速やかに前線に兵糧を送ろうとしているのだろうと納得し同胞達の気持ちもまた強く理解でき叶うなら腹一杯飯を食わせてやりたいと言う感情と荷車の強奪と違和感有れば引くべしと言う荀文若の言を鑑みて今回の襲撃を最後とし更に物資全てを強奪する事を自身の中で決定、同胞全員に追跡の命を下し出発した敵の後をつけるのだった。
その日も又、宵闇がせまり煌々と火が焚かれその明かりの下で兵達は交互に休んでいる事がみすぼらしい天幕の隙間から何とか見て取れる。
敵も疲れていたのか雨中の行軍時に比べ随分とゆっくりと行軍していたがその分長距離を移動していた。どうやら飯の様で相変わらず円状に固まっている所から少し離れた荷車付近で取ってきた枯れかけの木を燃やし調理用の火の用意をしていて少し眺めていれば風に乗って薄らと煙が空へ昇りだす。
荒野に群生している背の高い雑草の中で匈奴の物見の彼は思うのだ。
『彼奴らブッ殺すっ!!!』
彼は・・・否、彼等はもういい加減にしてほしいのだ。もう腹ペコペコなのだ。
数日配給のお預けをくらい連れて来た家畜も少ない上、更に乳の出が悪くて酪なんてもう一月は食べて無い。
そんな状況でこれ見よがしに荷車から少し外れた位置で食事の用意だ。
最初に川で汲んできた水を入れた鍋に陶器を入れてから上に幅広い陶器を重ねる工程の意味は良く分からなかったが、中から取り出した陶器に入れていた熱湯を別の鍋に入れるのを繰り返してからが問題だった。
荷車から降ろした穀物でパンパンに膨れた大袋大量に担ぎ出しその袋の中身を複数の鍋それぞれの中へ突っ込んだのだ。その量は目視出来うる人数にしては余りに量が多い。
あんな濃い飯を食う機会などそうは無い。戦の無い時、又は補給の無い戦での一兵卒が貰える食べ物とは水とそう変わらない塩を叩き込んだだけの濃度のうっすい水の様なオートミールなのだ。それさえここ三日は食べていない。
空腹に耐えかねている彼は唾液を抑えるのに必死だった。
・・・まぁ、現代人からすれば塩味オートミール自体があまり美味いものでは無く理解しがたいが。
何はともあれ以上の理由から物見は足早にその場を離れ雰囲気は荒々しくもコソコソと味方の物見と合流してから自陣に帰投しコチュウセンに事細かに調理風景を伝えた。彼が本題から逸脱し過ぎだと十は年下の単于にメッチャ怒られて厳しい顔をショボーンとしたのは言うまでも無い。
その顔を見て幼く偉大な単于はため息を一つ。
「・・・まぁ、良い。
同胞よ、気持ちはわかる。痛い程にな。
だが残りの食物は私達が奪うのだ。急ぎ皆を騎乗させておけ」
「ははっ!!」
嬉しそうに、穹盧(異民族のテント)から出て行き別の穹盧に伝達に行く。
その背を見送り矢筒を背負い弓を掛け己が愛馬にまたがり馬に合図を出す。
「じじ様、敵は鬱蒼と雑草茂る荒野と草木の点在する平野に挟まれた街道で休んでいるそうだ。
荒野側に荷車を置いている。恐らく荷車を囮にし荒野に伏兵が置かれている可能性があるな。」
「では?」
「ウム、危険を減らす為に迂回し荒野を確認、敵あれば刈り取る。背後からであれば敵は何もできまい。と言っても全軍で向かう必要は無いか。
じじ様、二百騎で蹴散らしてくれ。
私はじじ様の突撃の後、街道側から残りの百で突撃する故、じじ様は敵伏兵が居なければその勢いのまま挟撃してくれ」
「ハハッ!!」
その歳を感じさせない返事を聞くと、じじ様と話している間に奇襲の準備を終わらせ集まった同胞達の方へ馬を反転させる。
「皆、空腹だろう。
私の力及ばず、ひもじい思いをさせた。
だが今回の襲撃を最後とし、荷車を丸々奪い取る」
上がるのは歓声。
其れはそうである。パトロンの曹操の金(食物)払いも最近ではなかなかに酷く自分だけではなく子供達までひもじかったのだから。
此れから奇襲をする気あんのか?と言いたくなる程に声を張り上げるのも仕方ない。
勢いは有れど狩猟を糧とする彼らは獲物に気付かれぬ様に気配を殺し馬を進ませる。
コチュウセンは物見を放ちじじ様と共に街道南北を分断する街道を北の丘から眺める。暗闇とは言え大体の地形を自分の目で再度確認する為である。雨の後だからだろう所々に水溜りが有るが一番強い豪雨からは1日経っており北の背に高い雑草の生える荒野側に荷車を置き、街道を挟んで背の低い草木が点在する平野に陣とも呼べぬ様な野営地。
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荒野荒野荒野荒野荒野丘丘丘丘丘丘丘丘丘
野荒野荒野荒野荒野荒野荒丘丘丘丘コ丘丘
ー荷車ー荒野荒野荒野荒野荒野荒野丘丘丘
荒野荒野荒野荒野荒野荒野荒野荒野荒野丘
街道街道街道街道街道街道街道街道街道
ーー草木ーーー草木ーーーーーーーーー丘
草木ーー敵将ーーーーーーーーーー丘丘騎
ーーーーーーーー草木ーーーー丘丘丘騎兵
ー草木ーーーーーーーーー丘丘丘丘騎兵騎
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一陣の突風が吹き風は北から南へ吹き抜け矢を撃つならば其れも考慮すべきだろうと考える。
遠くからでも正確な敵の位置を教えてくれる程に過剰な篝火を見て敵将への評価を下げる。
と言うのも円状に設置されている其れの所為で離れた位置の荷車が煌々と照らされ、写り眠りこけている見張りの影はよく見え、一際大きな天幕がくっきり見え敵将の位置が丸わかりだ。
更に言えば物資を背の高い雑草の中へ入れる事で少しでも隠そうとしているのだろうが燃料運搬を簡易化する為か草木付近に野営地を作っている事も離れ過ぎていて守るべき物を放置しているに等しく論外である。
じじ様に伏兵がドウコウなどとほざいて此れである。更に物見が帰って来た為話を聞けば伏兵など居ない上篝火の元にいる見張りらしき者は微動だにしないと言う。
此れに敵を過大評価していた様だとコチュウセンは心底呆れる。寧ろあんなドヤ顔で伏兵が〜などとほざいてしまったでは無いかと理不尽に敵将に怒りを覚えた。考えれば其れはそうである。護衛しながら数日もの間自分達に追撃された相手が伏兵を仕込む元気なぞあるわけが無い。寧ろ良く持ったと敵兵を賞賛すべきだろう。
「ハァ…。行くぞ」
同胞が騎乗して待つ反対側の南の丘に向かう。夜の静寂に紛れ並び立つ騎兵達、静かにしかし皆の耳に入る声でコチュウセンは語る。
「皆、予定を変える。此れより部隊を分けずに突撃を行う。敵兵は少なく、伏兵が無い事は確認した為だ。更に敵将の位置は正に明白。唯、篝火の円を囲み敵の命を穿ち我らの真価を発揮せよ」
「「「「オォーーーーーー」」」」
静寂を突き破り唐突に咆哮を上げる。
敵が驚き混乱すれば最高である。
丘を下り、平野を駆ける。懐かしき地を思い出し、獲物を射殺さんと言う懐かしさに包まれ矢を放つ。呻き声さえ上げずにハリネズミになる敵の見張り。
平野で馬を駆ける時、その時だけはコチュウセン・・・否、匈奴達は故郷を懐かしみ何倍もの力を得れる。
篝火の隙間を掻い潜り突撃する。
馬達が火傷しては操れなくなるし、何より己が半身に等しい。
棒と布で三角形の貧相な天幕に馬脚が入り込んだ際違和感に気づく。登っていた血が下がり思考が体が回りだす。
敵が一人も起きていない。
あまりに静か。
異様な布陣。
鼻にくる臭い。
そう嗅ぐ臭いでは無い。が生臭いア・ブ・ラの臭い。
「引けェェェェエエエエエエエ!!!!」
あらん限りの声で叫ぶ。
脳が焼き切れ喉が裂そうになる程に。
ダスゥ…。鈍く、空を潰し切らんが如き音がコチュウセンの鋭敏に過ぎる耳に入る。
北西の篝火が何かに弾き飛ばされ弾けとぶ。
同胞が馬ごと弾けとび、その後ろで飛来物によって舞いヒラリと水溜りに落ちる火花。
瞬間、全てが紅くなる。血も空も熱く紅くなる。
阿鼻叫喚、馬は暴れ人は飛ぶ。
「敵は荷車だ!荷車に居るぞ!!」
コチュウセンは地獄を見ながらも命を下す。起死回生の一発逆転を狙い盾ごと敵将を貫かんと欲して。
怒り、焦りを伴い自分付近の同胞二十余騎が何とか反応し火の中を潜り抜けコチュウセンを先頭に荒野の中へと馬を駆る。荷車に向かって矢を射ようとするも雑草に入ると同時にガクンとバランスが崩れコチュウセンは馬上から放り出され気を失った。




