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賊と怒狂い

陳宮の屋敷で世話になって二日目のことである。

日差しを強く感じだした頃。昨日と同じく現実逃避気味に日課をこなしていた良の耳に、声が響いた。


「街道に賊が出た!!

新兵共、丁度いい初陣だ。討伐に向かうぞ!!!!」


偉そうな30から40代程のおっさんが、さっき迄良の近くで鎌付き槍みたいなもので訓練をしていた50人ほどを呼び集める。


それに対し、雄叫びを上げる新兵と呼ばれた者たち。


「おい、新兵!

気を引き締めろ!!


ん?おいっお前!!!」


「んぁ、なんだよ?」


そして、休憩がてらその様子を見ていた良が、新兵と話していたオッさんに急に呼ばれる。


「貴様も、新兵か?

・・・まぁいい行くぞ!!」


「いや、俺は新兵じゃねぇーんだけど。」


「ならば、手伝え!!

新兵の実践経験もさせねばならん。

何より、民に害が出てからでは遅いのだ!!」


そう言いながら弓を持ち、ヒラリと馬にまたがる。

よく見れば、城門からオッさんの兵だろう五十程の弓を持った軽装の兵が付いてくる。

そして、良も言っても無駄かと着いていくのだった。


軍の移動とは、面倒だ。

周りの新兵に、疲れが見え始めたら少し休み、また速歩きをする。そんな事を何度も繰り返し移動しなければならない。


良がそれに飽きてきた頃、林の近くの寒村を見つけたのだが運がいいのか悪いのか、すでにそこは百数人の賊に襲われている真っ最中であった。


ないよりマシな程度の堀と柵を押し潰そうと黄色い鉢巻を巻いた者達が詰め寄っている。


「イカン。やはりこのあたりの村を襲うつもりだったか。

だが、気を取られている今が好機!!


皆、突撃ぃ!!!」


オッさんの突撃の掛け声一つで、弓を持った兵達は剣に持ち替え駆け出していく。

柵ももう保たないだろう。

良も追随しようとするが、新兵を率いていた隊長らしきものは、動かない。


「おい!?何やってんだテメェ!!」


「ヒィ!?す、すまない。あ、足が竦んでぇ…ぁ?」


ゴズゥッ


良がぴくりと反応し、鈍い音が新兵の耳に届く。

良が顔をぶん殴ったのだ。

3、4秒対空した後、背を打ち付ける隊長。

もちろん他の新兵は、熱り立つ・・・いや、立てなかった。


「おい。テメェらァ・・・。抜剣。」


それは、憤怒を消し飛ばす理不尽な迄の恐怖。

周りの空気は刺々しく圧し潰すようにさえ感じる。


「はひぃ。」


何故かは解らない、少なくとも自分より年下の者一人にここまで恐怖を覚えるか?

いや普通はありえない。

何故、この若者は自分達に此処まで怒っているのかそれも分からない。


「・・・あっ!」


一人が恐怖によって、剣を落とす。


ゴズゥッ…ドサッァ


兵が、また飛んだ。


「武人が、必要もねぇのに。ビビんな!武器を離すな!!ついてこない奴はシバキ倒す!!!


カチコミじゃぁぁあああああ!!!!!!」


良は、走り出す。ある一点に向かって。


新兵達も、走り出す。いや、着いていく。

シバクと言うのがどう意味かは解らないが、この状況の彼に逆らえばどうなるかわからない恐怖によって。


村の方を見れば、賊が二手に別れ柵を壊し村の中に入っていた。

オッさんの方は1.5倍程の賊と乱戦している。


家から女子供や老人を引きずり出していた賊に助走付きのストレートを食らわせる。


「オォラァ!!ガキに手をあげるとかオラァ!!」


もう何を言っているかは解らないが、取り敢えず子供等に手をあげたのが許せなかったらしい。


「この野郎!!ブッ殺・・・。」


ミッシィ


剣を振りかぶってきた賊を喋っている間にアイアンクロー。

良の左側からは、カランという鉄が落ちる音と骨が悲鳴をあげる音がかすかに聞こえる。

よく見れば、現在アイアンクローを食らっている賊は、宙に浮いている。


そこへ、丁度新兵がやって来て、固まる。賊も固まる。

一瞬の静寂。だがそれも直ぐに終わりを迎える。


「新兵共一人残さずシバキ倒すぞ!!

ゲロ賊共がぁ・・・。ぶっ殺すぞコラァ!!!」


左側で泡を吹き出した賊を投げ捨て、前進する良。

新兵も弾かれるように突撃する。


兵数差があったため、圧倒的蹂躙でケリがついた。


戦後処理と言うべきか村人の安否等を確認した後、帰還の途の事である。

隊列から抜け、オッさんが感心したように良に話しかけて来たのだった。


「小僧!!良くやってくれた。

すまなかったな、こちらの不手際で新兵の統率をしてくれたそうじゃないか?

急ごしらえでは、やはり無理だったようだ。助かった。」


「え?・・・うん。」


「ど、どうした?そんなに落ち込んで。

村人にも、兵にも死人はいないではないか?

こんな戦果はなかなか無いぞ。」


戦果は上々、新兵の初陣と言う難しい戦で守るべき者も戦友も死ななかった。

だが良の出している空気は、重かった。

おそらく網金辺りが、遠くから見れば陳羣と間違える程度には。


「さっき、子供に無事かどうか聞いたらガチ泣きされた。俺。」


「お、おう」


そう、子供が視界に入った為、必死に助けようとしたのだが、村人が無事か確認しようとした時に子供にガン泣きされたのだ。

それもそうだろう。普通の大人や賊が恐れる者に子供が怖がらないわけが無い。


良は、手伝いの報酬を貰い、陳宮の屋敷に速攻で帰って寝るまで白の肉球をプニプニするのだった。


な、なんか急に読んでる人が、増えた。

・・・アレか明日は槍・・・隕石でも降るんでしょうか。

まぁ,暇つぶしにでも見ってってくれたら幸いです。


PS.2,3週に1話は頑張ります。多分…。

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