人のふり見て我がふり直せ
静寂に包まれた店内。扉の無い店の出入り口からは、蒼天が垣間見える。
何時もは忙しそうに酒を運ぶ店主とその娘や、酒を酌み交わしながら世の評論を語り。時には怒号さえ発する若者たち。
その誰もが硬直し微動だにしない。
「オォラァァァァアアア!!!」
ゴッスゥゥ
「ガァアアアア!!
良い一撃だぁっ、小っっ僧!!!」
ダァアンッッッ
店の内外でこれ程に空気の差があって良いのだろうか。
静寂をかき消し、怒号と鈍い打撃音が響き渡る。
「フハハハハハハァ!!
その程度か!?小ぉグハァァア!!!!??」
ドゴォォォ
「ざまあみやがれぇオッさん。超ザマァァァアアアンガッホァア!?!?」
ドシャァァァ
「・・・ハッ!!?い、いかん。将軍早く成将軍を止めねば」
「ウム、急がねば。」
もう6度程であろうか、打撃音が交差しようやく硬直状態が解けた二人が止めに入る為に外に出る。
今現在良と殴り合っている男と話していた二人だった。
一方店の外で殴り飛ばされた良は、目の前に居る170 強ある自分背と同じくらいの身長に筋骨隆々の身体を持った獅子のような壮年の男と向かい合う。
良自身も筋肉質だが、それでも成将軍と呼ばれた男に比べれば普通に感じてしまう。いや、言うなれば壮年の男がゴリマッチョ・・・豪リ剛リマッチョ過ぎるからなのだが。
「オラ、オッさん。コノヤロー。ゲッホッ。
こんだけ力あるクセに酒場で壺ぶん投げるとか何考えてんだ?」
流石に最後の一撃が効いたのか、落ち着くために話しかける良。
「おぉう?
又、やらかしてしまったか・・・。スマンな小僧。
どうも、頭に血がのぼると碌な事にならぬなぁ。」
「ん?あ、オウ
ハァ・・・ハァ・・・。無意識とか、なおのことたち悪いけどな。
気を付けろやコラ。」
すんなりと謝罪されて、少し戸惑いながらも、構えを解き頭を掻く良。
「あぁ、まぁ待て。
せっかく面白い殴り合いだ。
黒山賊の雑草共より余程、血が茹だる。
八健将が一人、成廉!!
此の闘い。倒れるまで楽しまんと欲す!!!」
言うがいなや、良に向かって走り出す。
良も内心クソ脳筋ボケが!!と焦りはしたが体制を整え、腰を下ろし敵をよく見ながら時を待つ。
助走をつけたまま、渾身の一撃を入れようと振りかぶる成廉。それと同時に、成廉の胸倉を掴み回転しながら腰を落とす。
成廉も何かされると気付いた時にはもう遅い。腕を掴まれ自分の走った勢い合わせて投げ飛ばされ背に衝撃を受けていた。
「ぬぐぅ・・・。
小僧今の妙技なかなか効いた。参ったぞ。
しかし、してやられた。まさか、このような倒し方をするとはな。」
「オウ、バーちゃん仕込みの背負い投げ舐めんなよ。ゲホッ。
うまくいってよかったぜ。オッさん強すぎ。」
互いに痛むのだろう。成廉は呻き声を上げ、良は咳き込む。
しかし、脳筋だからだろうか。二人とも晴れやかな顔をしていた。
「おお、なんという事だ。
あの、成将軍を投げ飛ばすとは・・・。」
「・・・。」
そして、店の前で最後の背負い投げを見た二人は、良い者を見つけたと目を輝かしていた。
勿論、あれだけの騒ぎで人が集まらないわけも無く、数人の民に引かれたのは言うまでもない。
これを見た陳羣は、全てを察し後に語る。
「往来で凹むのはやめようと思いますハイ。あんな、目で見られてたんですか私・・・。」と
「小僧、俺は呂布軍の将。姓を成、名を廉、字を孟健。
貴様は?」
*成廉 ??・・・(せいれん ??)
呂布側近の武将。
字は見つけられなかった為、長男に使うらしい【孟】と後漢書の呂布伝にある健将から【健】を取って字にしています。
演技じゃない方で、魏越と共に呂布の傍らで常山の賊と戦った。
精兵一万に騎馬数千の敵に対して数十騎で1日に3〜4回突撃をかまし、10日ほど繰り返し撃退したらしい。
演技の方では、呂布の八健将の序列5位。
曹操を追い詰めるも典韋に撃退され、楽進に弓で射殺される。
どれほど信じていいか解らないけど、史実の方が演技より演技っぽい無双野郎。
「あ?あー・・・武井、字を良羽。
よろしくな。」
数分前まで殴り合っていいた彼らだが、成廉は良を見何かを考えるように自己紹介をした。それに対する良は、適当に作ったためだろうか少し、自分の字を忘れていたりする。
「では、良羽よ。
その武、気に入った。呂布軍に来んか?」
「・・・はい?」
唐突な事に固まる良。成廉は、何がおかしかったのか笑っている。
「ここいらに居たのであれば知っておろうがワシらは今、曹操に負け劉備のもとに身を寄せておる。」
「待つのだ、成将軍。」
そこに話しかけて来たのは、成廉と酒の席を共にしていた者達、更には網金と陳羣、諸葛亮も来ていた。
「さて、こう人が多くては話も締まりませぬ。
一度皆、我が屋敷へいらっしゃってください。」
そう言ったのは、細めの体に芯の強そうな顔、そして胸ほどまでにヒゲの一番端だけを伸ばした男だった。




