彼の悪魔はかく語りき
するりと、幕が落ちる。
「みなさんは私が裏で手を引く親玉だとお思いでしょうか、いいえ、それはまったくの誤解というものです。私は台本にそって進むように、全体を調整しているだけの、国立魔法学校のいち教師にすぎないのです。もちろん、その台本の脚色はたしかに私によるものですが、原作者は彼です。みなさんはもうご存知でしょう、私の唯一無二の、親友です。しかしながら、このものがたりには、はじめから決まっていることがひとつあります。『わからない』とおっしゃる方は、見落としているのかもしれませんね。はじめから提示されてあったはずです、“ハッピーエンド”であると。結末を教えてしまうなどとは無粋だとお思いでしょうか? それもそうかもしれません、ですが多くのひとは、結果がすべてではなく、その過程にこそ意義があると嘯くではありませんか!
コホン。
さて、私の親友の息子の学生生活もあと一年と半年。これまであの子はこの国立魔法学校で多くの経験をしてきました。これからはいままで以上のことを経験するでしょう。それがあの子のなすべきことなのです。
ところで、みなさんはもうお忘れになってしまったかもしれませんが、私はセラフィト・ガヴェイン校長から二つのものを譲り受けました。ひとつは、あの子が入校したとき。もうひとつは二学年がはじまる朝に。前者はこの学校の七階に封じられているもので――ああ、笑いながら話すのは不謹慎でしょうか? つい、楽しくなってしまいまして。失礼いたしました。後者については、そうですね……みなさん以外に知られないための、保険とでもいいましょうか。なにを、とお思いかもしれませんが、いずれおわかりになるかと。それから、じつはもうひとつ。レディ・カラマンシカの手鏡はかつてガヴェイン校長の手元にあったものです。どうぞレディの手鏡の存在をお忘れなく。
おや、そろそろ時間が迫ってきました。では最後に、私の台本に狂いはないのか、という疑問にお答えしましょう。もちろんあるはずがありません。私が脚色した台本なのですから。ただ、そう思う一方で、どこかに小さなひずみがなかっただろうかと考える私がいるのです……。そう、まるで、弱くて脆い人間のような感情だ。それでも、私のやるべきことは決まっている。もう、ずっと前から……。
おっと、長くなってしまいましたね。話しているあいだに私の“仕掛け”も上手くいったようだ。それではみなさん、また舞台の上でお会いしましょう。黒竜王の祝福があらんことを――」
ふたたび、幕が上がる――。




