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紅い瞳の奴隷騎士は、少女のために命を捧ぐ  作者: 神崎右京
第十章

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178、最終決戦⑦

 最後まで名残惜しそうに、心配そうに振り返り続けるハウアーをなだめて部屋から追い出すと、やっと部屋の中には主要な人物だけがそろった。

 革命軍の指揮者、クルサール。旧帝国の皇女、ミレニア。国家最強の武人、ルロシーク。

「……さて。どういうつもりか、お聞かせいただきましょうか、ミレニア姫」

「どういうつもり、とは?」

「貴女は、聖典をご覧になったとおっしゃった。……ならば、気づいたはずでしょう。私が、『神の声』など聴いていないということに」

「まぁ……早速それを認めてしまうのですね」

 驚いた風にわざとらしく目を見開いて口に手を当てたミレニアに、クルサールは苦い顔で「よくもいけしゃあしゃあと」と口の中で呟く。

「私は以前貴女に、”神”の教えは所詮、国を治めやすくするための先人の知恵に過ぎない、という己の考えを述べてしまっています。私自身が、<贄>の儀式を下らないことだと考えていることまで伝えてしまった。そして――どうやってそんな情報を得たのかは知りませんが、私が最大の秘密にしておきたかった、私の出生と生い立ちもご存知のようだ。――私は、貴女が”稀代のペテン師”と断じた、他ならぬ『救世主』です。貴女が暴いた通り、光魔法が未知の属性であることを利用し、ただの魔法の効果を『神の奇跡』と謳って世の中を陥れた、ね。……今更、民衆を納得させるお題目をあなたの前で主張したところで、滑稽なだけでしょう」

「ふふっ……よかった。そこを暴くところから話をしなければならないとなると、少し面倒だと感じていたので」

 クスクス、と貴婦人が談笑のときに漏らす上品な笑い声が響いた。

 クルサールは嘆息した後、一つ息を吸い込み、しっかりとミレニアを見据える。

「今更、滑稽な申し開きをするほど野暮ではありません。しかし、すべてを理解した貴女ならば、よくわかったはずです。――私が、貴女を見つければ、決して生かしておくことはないと」

 すぅっ――と細められた紺碧が、小柄な少女を捕らえる。

 ピリッとした空気が部屋を支配すると同時に、煽られるようにして傍らに控えるロロから殺気が膨れ上がった。

「ロロ。――落ち着きなさい」

「っ、ですが――!」

「大丈夫よ。……大丈夫だから。お前は本当に、過保護な男ね」

 仕方がないわね、といつものように微笑んで従者をなだめた後、ミレニアはゆっくりとクルサールへと向き直る。

「勿論、言われるまでもなく理解しました。ですから、こうしてここに足を運んだのです。――貴殿の執拗な追跡を、何十年も躱し続けることなど不可能だと、よく理解していたので」

「ほう……」

 張りつめた空気を纏ったまま、クルサールはミレニアの真意を探るようなまなざしで少女の顔を見返す。

「ここに来た理由は、単純です。――貴殿に、私の利用価値を説きに来た。それだけですわ」

「利用価値――……」

 口の中で呟くクルサールは、あまり信じていないようだった。

 それもそうだろう。今のミレニアは、何もない。

 貴族社会において、有力な人脈を持っていたわけでもない。民の信頼を一定得ていることは事実だろうが、彼女がクルサールの『真実』を知っている以上、それはむしろ脅威でしかない。

「生かしておくにはリスクが高すぎる女――そう、思っているのでしょう?」

「よくおわかりで」

「では、私はそれを覆して見せましょう。私を生かしておいたときの利点と、殺したときの不利益を、貴殿にわかりやすくお伝えいたします」

 ミレニアはすっと右手を掲げて、指を立てる。

「まず、一つ目。ご覧になってお分かりのように、私は民意を味方に付けるのが得意です。特に、貴殿が掌握するのを苦手とするような民――”神”を本心では信じていない民の心を、掴む役に立ちます」

「……心外ですね。革命を起こされても、まだわかりませんか。民は、皇族の支配など望んでいません。それよりも、全てにおいて『正しい』神の教えを望み――」

「あら?では、紅玉宮の従者たちは、どうして牢屋に繋がれていたのかしら?」

 馬鹿馬鹿しい、と切って捨てようとしたクルサールの声を遮る。

 すっとクルサールは思わず口を閉じた。

「貴殿が信じる”神”は、どうやら奴隷制度に反対のようですね?……まぁ、エラムイドの価値観に照らし合わせれば、当然かもしれません。それ自体は、私も異を唱えるつもりはありませんわ。……イラグエナム帝国の皇族でありながら、奴隷解放施策を考えたのは他でもない私。奴隷制度を廃止するという方針自体に理解は示しております」

「…………」

「それなのに、どうして私の大切な従者たちは、ああして牢の中で枷を嵌められて繋がれているのでしょうか?奴隷という境遇を哀れに思ったならば、枷を嵌めて牢に入れるなど、出来るはずがない」

「それは、抵抗されたから――」

「あら、ではさっさと首を斬ればよいではありませんか。――私の家族にそうしたように」

 氷のような冷たい声音が飛ぶ。

 しん……と一瞬、部屋に静寂が降りた。

 ミレニアは一つ息を吐いてから、そっと言葉を紡ぐ。

「貴殿は、奴隷を殺すつもりはない。何故なら、貴殿にとって、彼らは”救うべき民”であるから。……そうでしょう?」

「それは……」

「きっと、あの手この手で、説得を試みたのでしょう。神の教えを説き、奴隷たちに”自由”の尊さを教え、人らしく生きることの素晴らしさを伝えた。そうして――きっと、貴殿は戸惑ったはずです」

「私が……何に、戸惑ったというのですか」

 反論の声は、酷く小さい。

 ミレニアは、困ったように少しだけ苦笑して、口を開く。

「奴隷たちは、きっと、自由の尊さも、人らしく生きる素晴らしさも、従順に受け入れたでしょう。……当然です。彼らは、二度と奴隷商人の元に戻りたくないと思っている。貴殿が奴隷という身分を解放してくれることは、彼らにとって願ってもないこと。きっと、それ自体は諸手を上げて受け入れたはずです」

「……そうですね。彼らは、不自由を酷く憎み、嫌っていた。まして、貴女の元で束の間の”自由”を――人としての尊厳を取り戻してしまった。再び奴隷商人の元に戻されたいのか、と問えば、明確に否と答える者ばかりでした」

「そうでしょう。きっと、そんな彼らを前に、貴殿は気分を良くしてこういったはずです。――自由になりたければ、”神”の教えを受け入れろ、と」

「――――……」

 クルサールが、奴隷を解放しようとするのは、全て神の意志である。神が、奴隷という身分を無くし、彼らに人らしい尊厳を与えよとおっしゃっている。

 だから、素晴らしい神の教えを受け入れ、称えよ――そうすれば、手枷を外してやる、と。

(すべての奴隷に、いちいち闇魔法をかけるわけにもいかないはず。……あくまで、魔法だもの。魔力は有限だわ。とても便利な魔法だけれど、考えなしに乱発は出来ないでしょう)

 何より、これから先、魔法を乱発するなら、拘束している奴隷よりも、自由に動き回る市井の民を優先すべきだ。奴隷たちは、ゆっくりと時間をかけて洗脳すればいい。

 だからこそ、クルサールは、彼らが喉から手が出るほどに望んでいるはずの”自由”をちらつかせ、神の教えを説いたはずだ。

「だけど――彼らは、受け入れなかった。……姿を見たこともない、声を聴くことも出来ない”神”の存在を信じることなど出来ないと言って、突っぱねた。……違いますか?」

 部屋の中の空気が、じっとりと重たく沈むように沈黙に包まれる。

 三度呼吸を重ねた後、無言を貫く青年に向かって、ミレニアは口を開いた。――無言は、肯定とみなす。

「貴殿はとても困惑したはずです。……だって、奴隷たちは、誰よりも不幸な”救いを求める民”のはずなのに――貴殿が救いの手を差し伸べたのに、どうしてそれを取らないのか、と理解のできぬ価値観に戸惑ったことでしょう」

「私は――……」

「貴殿が困惑するのも、無理もありません。エラムイドにいたときは、不幸であればあるほど――神を信じることなど出来ぬほどに哀れな境遇であればあるほど、心の奥底では神に縋りたいという気持ちが強い民しかいなかった。――貴殿がその教えで心を救った、ネロという少年兵のように」

「――!」

 まさか、ネロの名前まで把握されているとは思わなかったのだろう。そして――その過去まで知られているとは、思いもしなかったはずだ。

 途端にクルサールの視線が厳しくなり、警戒のためにさっと右手が剣の柄に伸びる。

 同時にロロも腰の剣へと手を伸ばし――ミレニアが静かに、手でそれを制す。

「いいですか、クルサール殿。貴殿の革命――ひいては、新しい国家建設の計画の甘い点がここにあるのです。今まで、魔物の脅威に晒された民や、食うに困るような民を中心に、時に『神の奇跡』と謳って光魔法を見せながら、救いの手を差し伸べて教えを説いた結果、市井の民は神を信じたのでしょう。それで、貴殿は気を良くしてしまった。成功体験ばかりを重ねて行き、直近一年の布教活動は、全てネロという少年兵を含む革命軍の手下に進めさせたはずです。――貴殿はこの皇城から容易に出ることが叶わない身となったのですから」

「それが、一体、なんだというのですか。……ネロたちは、十分に役目を果たしてくれました。困っている人々を助けて回り、真摯に神の教えを説いて――どうしても信じない者には、私の魔法をかけた”聖印”を使って『奇跡』を証明して見せた。私が説いた”エルム様”の教えは、このイラグエナム帝国の民にも、広く受け入れられて――」

「……そう。貴殿の元には、そのように報告が上がっているのですね」

 ミレニアはそっと瞼を伏せる。漆黒の長い睫毛が、白い頬に影を作った。

(落ち着いて、ミレニア。決して焦ってはいけない。……これは、絶対にミスの許されぬカードゲーム。切り札の切りどころを間違えれば、即座に私の首が飛ぶ)

 ぎゅっと拳を握り締め、ドクドクと緊張に脈打つ心臓に気付かれぬように小さく嘆息する。

 今、ミレニアの肩には、様々なものがかかっている。

 自分の命。牢に繋がれた奴隷たちの将来。クルサールが救ったつもりになって、その実何も救われていない哀れな民。

 そして何より――傍に控える、唯一無二の、大事な青年。

(……よし)

 頭の中で論を組み立て、そっと隣の青年を見上げる。

 思わせぶりな視線を遣れば、すぐに従者は意図を汲んだようだ。クルサールに気付かれぬ程度に顎を引いて、命令を受諾した意思を示す。ぴくり、と枷を付けられ握られたままの拳が小さく震えた。

 心地よい以心伝心が叶う最高の腹心を持つ安堵に救われながら、脳裏でそっと手持ちのカードを切る。

 ――まずは、最初の切り札を、一枚。

「残念ながら、貴殿に入ってくる報告は正しくありません」

「何を根拠に――!」

「あら。だって、そうでしょう?――魔法で心を操れる側近がいるのに、どうして彼がそれを使わずに布教をしたのだと信じられるのですか?」

「――――!?」

 光魔法の可能性を示唆する調査報告書を提出したときと同じくらい、クルサールの顔からザッと一瞬で血の気が引く。

 真っ青になった唇が一瞬震え――

 ――そのあとの行動は、早かった。

「っ――!」

 ザッと足を開いて腰を落とし、即座に抜剣の体勢に入る。

 それを見ながら、ミレニアは叫んだ。

 ――二つ目のカードを、場に出す。

「ロロ!」

 ゴトンッ……

 返事の代わりに床が破滅的な鈍い音を立てる。

 ぶわっ……とミレニアの視界が一瞬漆黒に覆われた。

 ガキィン――!

「っ……く……!馬、鹿な――!」

「それ以上わずかでも剣を抜いてみろ。骨も残らんくらいに焼き尽くしてやる――!」

 黒衣のマントを翻し、風のように二人の間に現れた護衛は、クルサールが剣を抜き斬る前に己の刃でそれを抑え込む。

 ギラギラと地獄の業火が燃え盛るように、鋭い紅玉が至近距離でクルサールを睨み据えている。低く響く脅しの声は、音量だけは押さえているが、その身から噴き出す殺気までは押し殺せなかったようだった。

 ミレニアは、今度はロロを制止しなかった。感情の赴くままにクルサールを殺さんと迫るロロをそのままに、言葉を続ける。

「私を生かしておく最大の利点は、奴隷をはじめとする、”神”を容易く信じられない民の心を、別の角度から掌握することが出来る点です。市井の民の中には、”神”を信じたわけではなくとも皇帝を廃してくれるならと革命に加担した者がいたはずでしょう。革命が成った今、宗教という一本槍でこの広大な国家の、多種多様な民を全て治めるのは難しい。ただし、それも無理のないこと。貴殿の生まれ育った環境と、この国は全く違う――<神に見放されし大地>たるこの国で、万人に”神”を信じさせる難しさに、貴殿はこれから直面するはずです。ですが――貴殿の唱える神の思想に限りなく近い思想で、私は民を掌握できる。貴殿が魔法無しでは掌握できなかった、紅玉宮の奴隷たちの心を掴んで見せたように」

「くっ……」

 ギリギリ、と鋼が擦れる耳障りな音が響き、クルサールの顔が苦悶に歪む。

 誰にも見透かされたことのない不安を言い当てられたようで、二の句を継ぐことが出来なかった。

 牢に捕らえた奴隷たちは、誰もエルムの教えを受け入れなかった。

 勿論、主であるミレニアを裏切った、クルサールの言うことを聞いて堪るか、という意識もあっただろう。だが、彼らの説得に当たる度に、そればかりではないということにクルサールは気づいていた。

 彼らは、皆一様に口を揃えて言う。

『お前が枷を外すというなら、俺を自由にするのはお前であって、神ではない。目に見えぬ、声も聞こえぬ、実体のないそれが、現実世界に生きる自分たちにいったいどんな”救い”をもたらすというのか』

 精神的な救いだの支えだのを、彼らは必要としていなかった。

 彼らが欲しているのはただ一つ――誰の目にも明らかな、現実的な”救いの手”。

 それもそのはずである。税金が跳ね上がり、魔物の脅威に晒されたときに、ただ震えて政権が悪いのだと他責にする市井の民とは、奴隷たちは舐めてきた辛酸の量も、それを乗り越える精神と肉体の強さも、到底比べ物にならない。

 奴隷に身を窶してある程度の期間を過ごしている者たちは皆、人としての尊厳をかなぐり捨てでも、命を繋ぐために必死になってきた者ばかりだ。

 泥水を啜ってでも生き延びる、という気概を持った者たちが欲するのは、『ありがたい教え』などではない。現実的に枷を外してくれる鍵であり、鉄格子を解き放つ手だ。飢えをしのぐ食物であり、渇きを癒す水であり、冬に凍えぬ温かな家とベッドだ。

 根底に、神の思想が根付いていて、それを見限ったネロとは違う。ネロは、本来救いを与えてくれるのは神だと認識していたが、それを得られない絶望の淵で、魔物に付け入られるほどに心が弱り果てていた。そんな折に、人間の弱さを肯定し、”神”に縋ればいいと説いたクルサールの言葉に、再び神を信じるようになった。

 だが、奴隷たちの中には、神に縋らねば生きていけぬほど心が弱い者など、存在しない。自分で自分の心を保つ術を心得ている者しか、長く奴隷の立場で生きることは出来ないからだ。

 それが出来ない者は、発狂するか、心を病んで衰弱死するか、逃亡を図って処罰される。それが、奴隷という世界に堕ちて生きる者たち――『口を利く道具』と呼ばれる者たちだ。

(自分はあくまで”神”の教えの代弁者である、という主張を崩さないクルサールとの相性は、最低でしょうね)

 だから奴隷は、ミレニアに心酔する。

 ミレニアは、他でもない彼女の手で、奴隷に自由を与え、人としての尊厳を思い出させるよう努力する。彼らはミレニアに感謝し、心酔し、彼女のためなら命すら擲つ信徒となる。

 目に見えぬ”神”は信じられずとも、目の前にいて、直接的に救いを与えてくれるミレニアは信じることが出来るからだ。

(勿論、私が一つでも間違えば、従者からの反発は免れない。あるいは、彼らと共に世界に綽名すような悪事を成せてしまうかもしれない。万人に共通する『正しさ』を求めるクルサールは、その責任を負えずにいる……)

「クルサール殿。貴殿に、かつて私が父から受け継いだ教えをお伝えしましょう」

 ミレニアは顔に苦い笑みを浮かべる。

 ロロと変わらないくらいの年齢であろう青年に――かつて、十歳の少女だった自分にかけられた言葉を、そのまま継げる。

「『正しいことを主張することが、必ずしも正義とは限らない。――綺麗事だけでは、国を治めることは出来ない』……覚えておくと、良いですよ」

「っ……」

 ギリッとクルサールは奥歯を噛みしめる。刃は一進一退を繰り返し、その白い額にはうっすらと汗がにじんでいた。

 万人を導く『正しさ』を求め、『神の教え』として正論を振りかざし続けるクルサールは、まるで、幼い日のミレニアのようだった。

 十五になったミレニアは、ふ、と少し哀愁の漂う瞳で、必死に”正義”を武器に孤独に戦う青年を見る。

(きっと、私も――ロロと出逢わなければ、知ることはなかった)

 あの日、剣闘場に赴く前の自分は、この言葉が意味するところを全く理解することが出来なかった。清廉潔白であることは正しいことだと信じていたし、正論を騙れば万人が従うと思っていた。

 今のクルサールは、まさに当時のミレニアを見ているようだ。

 きっと、彼も、ミレニアがロロに出逢った様に、何かの運命的な出来事に遭遇しない限り、この言葉の真意を知ることは出来ないだろう。

「ふざけたことをっ……正しいことを求めて、何がいけないというのですか……!他でもない私が、”稀代のペテン師”となって『正しくない』ことを引き受ける代わりに――世界にはせめて、『正しく』回ってほしいと願うことの、何が――!」

「その理想を否定するわけではないですが――手法が一辺倒すぎると言っているのです。それで治められるのは、せいぜいエラムイド程度の集落くらいでしょう。大陸一の栄華を誇ったイラグエナム帝国の全てを掠め取り、手中に収めたいなら、それだけでは敵いません。……だから、私を生かしておいた方がいいと言っているのですよ。どうせ、貴殿が成したい理想の世界と私が成したい世界は、似通っている。特に、私の手を拒む理由はないと思いますが――」

「今更後には引けない!」

 気合と共に叫び、ガッとロロをはじき返して距離を取る。

 そのまま、こぉっと魔力が発動し、金髪の美丈夫の額に光る紋様が浮かんだ。

「私は、ここに来るまでに、色々なものを捨ててきた……!今更――神の存在を否定するような考えを、認めるわけにはいかないのです――!」


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