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一年後。

今日は美玲が卒業式。彼女の大学も無事に決まり、晴れ晴れとした卒業式の日。最後の制服姿を目に焼き付けておこう。


愛車の運転席で美玲が校門から出てくるのを待っている。愛車とはいっても、そんなにいい車でもないし、中古だ。そう、あれから数日後に国公立の合格通知を手にしたので「自宅から通える国公立に合格した場合は車を買ってくれる」という両親との約束で、運よく愛車を手に入れていた。

あの春、何もかもを手に入れたいという欲張りな願いが叶った。


あれから約一年。遠出こそしなかったが、美玲は予備校帰り、俺はバイト帰りという状況で待ち合わせては週に一回くらいの逢瀬を重ね、気づいたら美玲の卒業式を迎えた感じだ。逢瀬は例のパティスリーに行くことも多く、おかげで常連になってしまった。


受験の話題がメインの一年だったが、それでも十分だった。実は美玲は表情が豊かだということを発見できたし。何より、俺を頼ってくれるようになっている。

浮気?するワケないだろっ。大学や家庭教師のバイトで忙しかったってのもあるけど、付き合いで時々飲み会に行く程度で、誰かに言い寄られることもなかったし。もっとも、万が一言い寄られてもお断りだったぞ。


校門がザワザワとしだしたので目を凝らす。いや、凝らそうと思った瞬間に見つけた。卒業証書を手にした彼女は俺の車を見つけて小走りに駆け寄ってきた。去年までの冷めた感じとはずいぶん違うのがまた嬉しい。

「卒業おめでとう。」

車から出て助手席のドアを開けた瞬間に頬にやわらかい物が触れた。え…?

頬にキス。いやいやいや。人前でこんなことするようになるなんて。恥ずかしいけど嬉しいじゃないか!

我に返ると、美玲がいたずらっぽく笑っている。そして少し離れたところからキャーキャー言っていた友人たちに手を振って助手席に乗り込んだ。

顔が熱くなるのを感じながら運転席に戻ると、左手にちょっと冷えた手が触れる。体育館、寒かったんだろうな。ん…?何か硬いものがあるぞ?

手を開くと、彼女の第二ボタンがちょこんと鎮座している。

「コウキ、今日は私の第二ボタン、受け取ってください。」

「喜んで!」


     -【完】-




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