第七話 盛り上がりすぎると危険です
隣町での初公演は、なんだかんだ成功した。
……成功したのか?
「本日の反省会を始めます」
宿屋の一室。
リシアが黒板を用意していた。
「なんで会議形式なの?」
「改善点の共有は重要です」
黒板にはすでに文字が並んでいる。
【良かった点】
・氷像崩壊で笑いを取れた
・子供客への反応が良い
・掛け合いが自然
「掛け合い分析されてる!?」
【改善点】
・導入が弱い
・爆発タイミングが長い
・MCに勢い不足
「ライブ運営の会議なんだよ!」
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リシアは真面目な顔だった。
「都会の観客は、辺境村より反応速度が遅い傾向があります」
「客層分析を始めるな」
「そのため、掴みを強化する必要があります」
「その単語好きだな、最近」
リシアはコホンと咳払いした。
「なので次回は、“開幕インパクト”を入れます」
「絶対ろくでもない」
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翌日。
広場。
昨日より観客が増えていた。
「昨日の変な奴らだ!」
「氷壊した人!」
「今日は何爆発するんだ?」
「前提がおかしい!」
だが確かに客はいる。
【観客数 87名】
「増えてる……」
リシアが満足そうに頷いた。
「口コミですね」
「レビューサイトみたいに言うな」
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「では始めます」
リシアが前へ出る。
なぜか今日はマントがいつもより長い。
「なんで衣装変わってる?」
「風でなびきます」
「完全に演出じゃねぇか!」
観客がザワつく。
「おお……」
「なんか今日かっこいいぞ」
パチパチ。
リシアが少し気持ちよさそうな顔をした。
「……反応良好ですね」
「隠さなくなってきたな?」
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すると空中に文字。
【おすすめ演出:派手な開幕】
「嫌な予感しかしない」
リシアが静かに杖を掲げる。
「では、“開幕インパクト”を実行します」
「待て待て待て」
次の瞬間。
ドゴォォォォン!!
広場の上空で巨大爆発。
「開幕が重い!!」
観客が大歓声を上げる。
「うおおおお!!」
「始まったぁぁ!!」
パチパチパチパチ!!
その瞬間。
俺の全身に、とんでもない力が流れ込んできた。
「うわっ!?」
【観客テンション 急上昇】
【出力補正 312%】
「数字がおかしい!!」
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すると。
ボン!!
俺の背後に巨大な炎の翼が出現した。
「なんか生えたぁぁ!?」
観客、大歓声。
「すげぇぇぇ!!」
「かっけぇぇ!!」
パチパチパチ!!
さらに翼が巨大化する。
「増幅早ぇぇ!!」
熱風で屋台の布がバサバサ揺れ始めた。
「危ない危ない危ない!」
リシアが真剣な顔になる。
「まずいですね」
「誰のせいだと思ってんだ!」
「観客の熱量が想定以上です」
「ライブ事故みたいに言うな!」
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しかも。
観客が盛り上がれば盛り上がるほど、
さらに能力が強くなる。
つまり。
今の状態。
完全に暴走寸前である。
【観客満足度 上昇中】
【さらなる盛り上がりが期待されます】
「期待するな!!」
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そのときだった。
最前列の子供が叫ぶ。
「飛べー!!」
「言うな!!」
観客が一斉に乗っかる。
「飛べー!!」
「飛べー!!」
パチパチパチ!!
歓声。
熱狂。
そして。
ボォォォォォッ!!
「うわぁぁぁぁぁ!?」
俺の体が上空へ打ち上がった。
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ドゴォォォォン!!
空の彼方へ消える俺。
観客は大盛り上がりだった。
「すげぇぇぇぇ!!」
「飛んだぁぁぁ!!」
「アンコール! アンコール!」
「帰ってこれるかぁぁぁぁ!!」
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一方その頃。
王都魔術師団本部。
『現場映像です』
水晶に映るのは、空へ打ち上がっていく俺。
そして。
『飛べー!!』
『アンコール! アンコール!』
『リシア様ー!!』
団長は静かに水晶を置いた。
「…………」
部下が恐る恐る聞く。
「団長?」
団長は遠い目をしていた。
「……なぜ災害級案件が、祭りになっている?」
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