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第238話 魔力収集回路の大型化

一か月後。

フロンティアの中央区画、

かつては何もなかった空き地に、異様な存在感を放つ装置がそびえ立っていた。

人の腰ほどだった試作品は、

今や人二人分ほどの高さを持つ。

円柱状の核。

その周囲を幾重にも取り巻く導魔金属の環。

地面には、蜘蛛の巣のように刻まれた魔力導線。

それは「機械」というより、

人工的に作られた魔法生物の心臓に近かった。

グルマは、その前に立ち、低く笑った。

「……こいつはな」

分厚い指で、装置の外殻を叩く。

「歴史を変えるぞ」

ヨークが腕を組み、にやりとする。

「よーく(ヨーク)見とくぜぇ。

 王がまた、何やらかすのかってな」

この一か月。

腰ほどの試作品でさえ、魔力列車の運行を完全に賄ってきた。

魔法使いの供給は不要。

魔力は、ただ流れ、回り、戻る。

そして今。

大きさは約五倍。

循環効率は比較にならない。

理論上――

殲滅魔法級の出力すら、相殺可能。

ヒトシは装置を見上げ、静かに言った。

「……起動するぞ」

一瞬、場が静まる。

メイが、確認するように魔力の流れを読む。

「……周囲に問題なし。

 都市結界への干渉もありません」

グルマが、制御盤に手を置いた。

「起動、五秒前」

空気が張り詰める。

「四」

遠くで、列車の走行音が止まる。

「三」

魔法使いたちが、無意識に息を止める。

「二」

ヒトシは、魔力の“流れ”を感じ取っていた。

「一」

「――起動!」

低い音。

ゴウン、と地の底から響くような振動。

次の瞬間。

装置内部で、魔力が回転を始めた。

ただ集まるのではない。

渦を巻き、圧縮され、整えられていく。

ヒトシは、はっきりと感じた。

(……広い)

フロンティアだけではない。

森の外縁。

山の向こう。

遥か彼方。

魔力の流れそのものが、こちらに傾いている。

集まった魔力は、核の中心で淡く輝き始めた。

白ではない。

青でもない。

透明に近い光。

メイが、声を震わせる。

「……これ、街が魔力を“呼んで”います」

グルマが、喉を鳴らす。

「呼んでるんじゃねぇ……

 引き寄せてる」

その瞬間――

遠く離れた場所でも、異変は起きていた。

ナラカイム王国

王都。

塔に集められた魔法使いたちが、一斉に顔を上げた。

「……魔力が」

「流れている……?」

「いや、抜けているぞ!」

体内に溜めていた魔力が、

ごくわずかだが、確実に減っていく。

王都全域で、同時多発的に異常が報告された。

魔力感知の乱れ。

魔法陣の不安定化。

召喚式の失敗。

そして、その情報は――

すぐに、王のもとへ届いた。

謁見室。

ナラカイム王は、報告を聞いた瞬間、立ち上がった。

「……原因は?」

役人が、声を絞り出す。

「特定されました。

 フロンティアです」

一瞬、沈黙。

王の顔から、血の気が引く。

(殲滅魔法の……報復か?)

王の脳裏に、ベスコの瓦礫がよぎる。

「……違う」

王は自分に言い聞かせるように呟いた。

「奴らは、そんな感情的なことはしない……はずだ」

だが、恐怖は消えない。

「スラトムを呼べ!」

声が荒くなる。

「今すぐだ!

 状況を説明しろ!」

王の目には、怒りよりも――

はっきりとした怯えが宿っていた。

フロンティアで回り始めた魔力は、

まだ何も破壊していない。

だが。

世界は、確かに気づいてしまった。

――力の重心が、動いたということに。

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