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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第二部 [ エディ追跡編、高次元戦闘編 ]
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『超次元作戦の合議』

〈あまてらす〉との接続作業を終えた乗組員たちは中央作戦室で統合機動宇宙軍作戦司令部からの通達を聴く。CIC各科士官は、ロバートソンと艦長のランドーと共に作戦の詳細を検討する。その中で、敵性異星人に捕らわれたイギリス防空軍のヴァンガードとアークロイヤルの画像が提示される。

イギリス防空軍に所属していたイングリット大尉は自身の今の状況が、アークロイヤルを指揮するH·スコット提督の上層部に対する意見具申に依る事を思い出す。


『超次元作戦の合議』




〈あまてらす〉がリベレーターに接続された後、システムとTXエネルギーのリンクが正常に行われているかチェックが重ねられた。


艦の機動システムの連携と火器管制システムとのリンク、また、リベレーター艦体の形状に合わせた超次元波動の再設定が〈あまてらす〉側で行われた。


艦長の五十鈴一等宙佐は、殆ど寝ずで作業を行った。全てのシーケンスのチェック作業が完了したのは、自艦がリベレーターに接続されて、更に三日を要した。




五十鈴が〈あまてらす〉から降りた時、彼女の宇宙服は汗まみれになっていた。

彼女はリベレーターの艦内インフォメーションに行き、そこで艦内パスを受け取ると、その足でCICへ上がった。


そこではランドーが彼女を迎え、先ず彼女の部屋へ案内した。


「五十鈴艦長、本当にご苦労様でした。この部屋で寛いでください。シャワーも有ります、食事も用意しています。」、とランドーは五十鈴に気を使った。


「気を使って頂き感謝します、…………私たちはお互い艦長同士ですね、ウフフッ……」、と五十鈴は笑った。



ランドーは何か申し訳なさそうに言った。



「艦長として、私は貴方に敬意を持っています。…………五十鈴さん、いきなりで申し訳ないのですが本艦の艦内時間で20:45、中央作戦室へ来てください。提督と下士官を集めてブリーフィングを行います。」


「承知しました、ランドー艦長。」、と五十鈴。




  ………………………………



定刻、提督艦長を初め、各科士官は中央作戦室に集まった。


全員が提督と艦長に向かい、敬礼し着座した。


最初に、ロバートソン提督が艦の改修に携わった者に対し、謝辞を述べた。


「短期間内に、これだけの大改修を完了させた諸君らに敬意を表したい。我々USSF(アメリカ統合機動宇宙軍)は日本防衛省〈あまてらす〉の協力により、当艦、SCV-01リベレーターの新しい心臓を手に入れる事が出来た。  間もなく我々は土星宙域に向けて出撃する、当艦は火星、月地球間で多種の敵性異星人と交戦を重ねて来たっ、これからも同じだ!」



ロバートソンの言葉の後、ランドーが前に進み出て、統合機動宇宙軍作戦司令部から発せられた作戦内容を説明する。


「作戦内容は次の通りである。   本艦は明後日、艦内時間04:00に当宇宙軍工廠より発進。月地球間静止軌道上で初の、機関〈あまてらす〉による超次元航行を実施する。今回の戦闘は敵に捕らえられたイギリス機動宇宙軍(イギリス防空軍)の戦闘艦ヴァンガードと機動空母アークロイヤルとその乗組員の奪還、並びに敵機動要塞の破壊、壊滅である。詳細はこの後、各科責任者に伝える。CIC下士官以外の乗組員にはSAIよりリアルタイムに行動内容を送るが、実際のワークはまだ無い状態だ。各員、気を引き締めて作業に当たれっ! 散開!!」




室内にはCICの各科責任者の下士官たちが残った。



提督の私は〈あまてらす〉の運用特性を鑑み、具体的な作戦内容を皆に伝えた。


「〈あまてらす〉は連続的な超次元航行の出来る、統合機動宇宙軍で唯一の艦だ。この特性を今回の戦闘に用いる、………我々は敵の手が届かない超次元空間から、高次元と現次元に介在する敵性異星人に対し、BS(ブレイクショット:指向性破壊波動放射)で攻撃を行う。現次元での物理戦闘は、先の月地球間の静止軌道上で行われたカインとプレアデスのUFOとの戦闘を鑑み、行わない。イギリス機動宇宙軍の艦船と乗組員の奪還は敵性異星人を殲滅した後に行われる………」



ここで〈あまてらす〉の艦長、五十鈴が捕捉した。


「超次元空間は高次の波動干渉(物理エネルギー)の影響を受けない、………これは私たちの最後の盾です。現在までの研究で、この次元には階層が存在する事が解っています。そして、人間以外、高次元のエネルギーや意識体は干渉出来ないことも解っています。  我々のリベレーターがこの次元を航行できる階層は、かなり浅い………仮にこれを潜水艦の”深度“という言葉で表すなら、海上と海中の境界面より少し下に居る、と言うことになります。」


ここで、航法管制科のイングリット大尉が質問した。


「その深度は………もっと深く潜れないのですか?」



その問いに対し、五十鈴は次のように答えた。



「〈あまてらす〉が建造される前、超次元実験艦〈ことしろ〉から得られたデーターでは境界面を越える事は出来なかった………、これは機械の性能の問題ではなく、外的要因に拠る事が分かったの。」


イングリット大尉は腕を組んで考えた。横に居た中島大尉は外的要因について尋ねた。


「何なんですか、それ?」


「何かの意思的なもの………、貴方がたは此処までだっ、これ以上、入る事は許さない、って神様が言ってるのかもね、ウフフッ………」、と五十鈴はそう言うと笑った。


「神様………か」、中島大尉はため息を吐いた。




次に火器管制のフスター少佐が質問した。


「超次元戦闘のメリットは何です?」


「今までの戦闘は常に場所を移動しなければならなかった。現在までのTX機関は場所を移動する為に、一瞬だけ超次元を使ってジャンプし、目標点に出現する………これは現次元とそれを含む高次元の戦闘の仕方です。だけど、連続的に超次元に滞在した場合、場所を変える事なくアクセス点に干渉出来る…………、〈あまてらす〉が超次元の固定砲台と言われている所以ですね。勿論、艦を動かす事も出来るけど………」、と五十鈴。



艦長のランドーは話を変えた。



「ありがとう、五十鈴艦長。実際の戦闘になれば、その辺の優位性は各担当士官が実感できると思う………」、そう言うとランドーはモニターに画像を映し出した。


画像は土星リングを映し出し、ある部分にマーカーが付けられた。ランドーはその部分をズームした。画像の下には大きさを表す表示スケールバーが出ていた。


全長数キロに渡る巨大な金属質に輝く物体と、それに比較して小さな物が二つ重なるように写っていた。ランドーは、その部分を更に拡大した。



「ヴァンガードとアークロイヤルッ!!」、とイングリット大尉は叫んだ。


三年前、欧州の統合機動宇宙軍の総合演習ESTAC(European Space Airlift Capability)で彼女の艦の編成グループの中核となった艦だ。


旗艦アークロイヤルを指揮するH·スコット提督はアメリカ連合の統合機動宇宙軍の中でも、特に秀でた人物と聞いていた。そんな彼女には密かな思いがあった………


(いつか主力空母の航法士として活躍したい…)



しかし、そんな思いを打ち砕く事が起きた。イギリス防空軍は旧式の補給空母ハンプトン級を退役させ、アークロイヤルに続く、最新鋭艦〈イラストリアス〉の建造に取り掛かった。


一時は人員の移動でイラストリアス乗組の為の再教育を受けれる、と喜んでいたが、上層部の考えは違っていた。古いシステムで育った者より、新しいシステムで最初から教育した方が良い、という考えが多かった。


結果、彼女は地上勤務に回された。………そんな時、降って湧いたのが今の状況だった。この状況を作ったのは、退役させた艦の乗組員の待遇を見かねたスコット提督の上層部への意見具申によるもの、というのが後で聞いた話だった。



(スコット提督が居なければ、私はずっと地上勤務のままだった………)





イングリット大尉はランドーに聞いた。


「ランドー艦長、これはどういう事ですか!?」


「恐らく、艦が何らかの原因で動けなくされているのだろう………、この画像は脱出したイギリス防空軍の艦が送ってきた物だ。ここで、乗組員の重要な証言がある………敵性異星人の通信を受けた直後に艦内で異変が起きた、と。最初に乗組員、次に艦統合AIシステムが狂い始めたらしい、………これは通常の高次ジャマーとTXジャマーを突き破った、と言う事が出来る。」



動力管制科のバートル中尉が言った。


「TXジャマーは、TXエネルギー密度で言えばBS(ブレイクショット:指向性破壊波動放射)に次いで強力な波動です。もしそれがダメなら………」



ランドーは全員を見渡すように断言した。



「そのために〈あまてらす〉がいるっ、大丈夫だっ!」






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