『深宇宙へ向けて』
グアム統合機動宇宙軍工廠のSCV-01リベレーターとコンタクトした〈あまてらす〉はリベレーターのセントラルデッキに入渠するも、専用ガントリーとの接続に高い精度が要求された為、SAIによる誘導接続ができず、人力を介した接続が行われる。
この間、一足先に〈あまてらす〉を降りたロバートソンは
提督室でランドーに新たな敵性異星人について説明を行なう。その内容は統合機動宇宙軍本部で報告されたものとは懸け離れた内容だった。
『深宇宙へ向けて』
一方で接近する〈あまてらす〉CICでは、艦長の五十鈴 摩利香一等宙佐がSCV-01リベレーターから送られて来る誘導シーケンスを受信、チェックを行っていた。
「SCV-01の量子誘導波を確認した、………リベレーターCICへ、本艦は日本防衛省、JUDF(Japan Universal Defense Force )-077、〈あまてらす〉である!」
{こちら、リベレーターCIC………貴艦を統合機動宇宙軍の艦船データーと照合確認! 距離3000で、こちらのビームライダー誘導に従え。SCV-01のSAIへ貴艦のコントロールを渡せっ!}
「〈あまてらす〉了解した!………距離3000でコントロールをそちらに渡す。………貴官の氏名と階級を知らせよ!」
{エッ、何で?…………分かりました、艦長…………航法管制科のL·イングリット、階級は大尉であります!}
「イングリット大尉、貴艦とのドッキングは慎重に行ってくれ。傷一つでもダメだ、腕を見せてくれっ! それと、こちらにはJC·ロバートソン提督(少将:准将より昇進)も乗っておられる、以上だっ!」、五十鈴は少しばかり、イングリット大尉に圧を掛けた。
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デッキステーションに居た中島大尉は、既に〈あまてらす〉のオーダーを確認していた。
(傷一つでもダメか………、これはSAIの自動シーケンスの精度では無理かも知れないな………)
中島大尉はインカムでCICのランドーを呼び出した。
「艦長、〈あまてらす〉の接続作業はSAIの作業精度では無理かも知れません。〈あまてらす〉と接続ガントリー部の接続間隙は3mmも無い…………どちらかが削れたら即終了です。」、と中島大尉は額から冷や汗を垂らした。
中島大尉の報告を聴き、ランドーはデッキステーションへ走った。
彼がステーションへ入る頃には、シャッターが開放された向こうに、接近する〈あまてらす〉が確認できた。
「中島大尉、SAIの誘導シーケンスは〈あまてらす〉が接続ガントリーの真上に来たら解除せよ! 後は人間の手作業になる。」
ランドーはCICに繋ぐとイングリット大尉を呼び出した。
「大尉、〈あまてらす〉がデッキに進入したら、リニアトラクティングで固定しろっ! それと〈あまてらす〉にもデッキ内で滞空するように伝えろ!」
「艦長、これは難しい作業になります。相当、時間が掛かりますよ………」、と横に居た中島大尉はぼやいた。
「リベレーターの新しい心臓になる艦だ、絶対に傷を付けるなっ! 時間は掛かっても構わないっ! レーザー測距儀と水平器を使って、ゆっくり精密に接続させるんだっ。」
ランドーが話している間に〈あまてらす〉はリベレーターのデッキ内に進入して来た。
全高21.3mの〈あまてらす〉とデッキ上下間の隙間は僅か数mも無かった。ランドーは思わず息を呑んだ。
「全長173m………、リベレーターより小さいとは言っても………」
〈あまてらす〉の艦体は左舷のセントラルデッキを完全に占有する形となった。
CICではイングリット大尉が顔に脂汗を滲ませながらリニアトラクティングシステムを操作した。
「〈あまてらす〉ガントリー接続部、直上! トラクティング停止、固定………〈あまてらす〉自艦の推進システムによる滞空を確認した、…………リベレーターCICより〈あまてらす〉、貴艦は動力を落とさず、そのまま待機されたし。接続は人力で行われる!」、とイングリット大尉は〈あまてらす〉に伝えた。
{デッキステーション、中島だ!イングリット大尉、〈あまてらす〉の誘導、ご苦労だった。悪いが人手が要る、動力管制のバートル中尉とマーク少尉を連れて、降りて来てくれ!}
「ラージャ!」、そう言うとイングリットはパイロットシートから離れた。
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〈あまてらす〉のブリッジではロバートソンが降艦の準備をしていた。
「ロバートソン提督、私はもう暫くの間、操艦しなければなりません。この状態で艦橋エレベーターは、最下部までは使えませんので、艦橋側面の非常退出口を開放します。リベレーターにはボーディングブリッジを展開するよう言っておきます………エレベーターカプセルに入ってください。」、五十鈴の指示で私はエレベーターカプセルに入った。
カプセルのドア(エアロック)が閉鎖されると次にカプセルは右側に回転し、ドアが開かれた。
カプセルから出た私は3m程の通路を出た。開放された開口部から、私が見たのはリベレーターの広大なデッキスペースだった、…………私は下を見て思わず足が竦んだ。
落下しないように、手摺を握る手に力が入った。
暫くして、リベレーターの艦中央の構造物(左舷右舷デッキを挟む形でデッキステーションや航空機格納リフト、また乗組員の居住スペースや、その他のサービスセクションが存在する)からボーディングブリッジが展開されるのを見た。
「ロバートソン提督っ!」、と大きな声で私の名前を叫ぶ者がいた。ボーディングブリッジを操作しながら〈あまてらす〉に着けると、彼は敬礼した。
「久しぶりだな、艦長!」、と私は彼に言った。
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私はリベレーターの提督室に入ると、ランドーと向かい合い、改めて互いに敬礼した。
「ランドー艦長、私が不在の間、ご苦労だった………敵性異星人の高次干渉の事は聞いた。艦に被害が出なかったのは幸いだった。」、と私。
しかし、ランドーは俯き、暗い顔をして次の事を話した。
「乗組員、数名が、まだ影響を引き摺っています…………その中に、操縦航法管制の飛鳥大尉が…………」
「それも聞いている………様態はどうか?」、と私は聞いた。
「芳しくありません………交代要員は既に配置に就いています。」
「確か、リリー·イングリット大尉だったな。統合機動宇宙軍の総合演習時、補給空母ハンプトンの操艦を任されていた………リベレーターでは、行けそうか?」、と私。
「艦の乗組員は〈あまてらす〉に対応出来るようニューラリンクに情報のVerアップを行っていますが………これからです。」、とランドーは答えた。
「先の話だが………」、と私は話を戻した。
「今回、我々が対峙する敵性異星人、ドラコレプテリア系異星人は非常に強力な高次干渉能力を持つ………ベースは高次元生命体だが、同時に強力な戦闘用ボディを備えている。使用する武器も、物理兵器に限れば我々の物を超える。 土星宙域で確認された彼等の要塞の規模は全長数キロに及ぶ。イギリス防空軍のヴァンガードと機動空母アークロイヤルが攻撃を掛けたが…………」、私の口は止まった。
「撤退、したのですか?」、とランドーは聞いた。
「表向きは、そんな感じで言われているが…………実際は向こうに捕まった………」
「そんなバカなっ!!」、ランドーは机を叩いた。そして、私に迫ると状況を問うた。
「TX兵装は役に立たなかった、とでも言うのですかっ!? それとも、…………何が有ったんですっ? 対抗策はあるのですかっ!?」、とランドーは取り乱しながら叫んだ。
「TXジャマーが破られた………リベレーターでもプレアデスのUFOの神風アタックで破られかけたのは君も知っているだろう!…………落ち着けっ、ランドー。その為の今回の〈あまてらす〉だ!」、と私は彼に言った。
ランドーは両手を机に突き、フゥーッ、と肩で大きく息をした。
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〈あまてらす〉の接舷から、実に六十時間、やっと〈あまてらす〉のガントリーへの接続が完了した。
この作業に携わった者は著しく疲弊した。




