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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第二部 [ エディ追跡編、高次元戦闘編 ]
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『エディ逃亡の加担者たち』

TR-3Dを隠したと思われる長野県北部の情報解析を終え、夜中に山中へ急ぐランドー。無事にTR-3Dに辿り着き、機内のキャビネットに潜むが、気が緩んだのか寝入ってしまう。

気が付いた時、既に風早空佐の息子夫婦とエディ、他の者はコックピット内で何かと通信を行っていた。最中、ランドーは姿を現し、銃口を息子夫婦に向ける。


『エディ逃亡の加担者たち』



ランドーはベッドの上で暫く考えた。


(恐らくロシアのSVR〈対外情報庁〉が息子夫婦の周りを監視している。夜が明けてから彼らを追うのはマズイ………彼らの車が何処に移動しているか監視衛星の画像アーカイブを調べてみるか。)


ランドーはそう思うと衛星画像アーカイブとリンクし、息子夫婦の車の移動履歴を調べた。


(ここニ週間の動きは………つい最近、自宅へ帰っているな。ここへ戻ってきた………これは! あの月の女も一緒だっ、確か名前はミカ。    風早空佐の証言を考えると只の旅行ではないな。)画像は今日の日にちを表示したため、ランドーは記録を少し遡った。そこに映し出された監視映像には街の北側の山間へ向かう様子が映し出された。



山間部に入った車は川沿いの広場に止まったが、奇妙なことにドアは開いたが誰も降りず、ドアは勝手に閉まった。


(これは?…………)



ランドーは不審に思い、映像をズームすると、そこには地面に揺らぎのようなものが確認できた。


「光学迷彩かっ!! クソッ、間違いなく加担している奴がいる!」



その揺らぎを見逃さないよう慎重にランドーは追った。


揺らぎの影は近くの山頂を目指していた。ランドーはその方向の指す所をマークすると、画像を更に拡大して見た。山頂付近には何も確認できなかったが、その部分の樹木は倒れたり大きくしなっていた。


ランドーが見ている所に進んできた数体の揺らぎの影は樹木が倒れた辺りで消えた。


「たぶん、機体の影に入ったんだ。間違いない、TR-3Dは量子ステルスを展開している!  場所は押さえた、こうしては居られない!」


ランドーは深夜にホテルを出ると車を例の場所へ走らせながら日立宇宙工廠に居るロバートソンと繋いだ。


「ロバートソン提督。TR-3Dを発見しました!」


{ 何っ、本当か!? 回収班をそちらへ送ったほうが良いか?}とロバートソンは画面の奥で叫んだ。


「いえ、大人数では返って目立ちます!それとエディの逃亡には加担者と、恐らくですがSVRがバックアップしている様です………私はTR-3Dに潜入してエディと加担者たちを確保します!念の為、TR-3Dの位置情報をそちらに送ります。」


{ 分かった。慎重にやってくれっ! 山元司令には伝えておく。}


「ラージャ!」ランドーはそう言うと通信を閉じた。





      ◆




例の場所へ着いたランドーは車を降り、山を登り始めた。真っ暗な中、ブッシュをかき分けながら彼は思った。


(エディの奴めっ………)


ランドーは怒りとも悲しさとも言えない複雑な気持ちで満たされていた。エディがリベレーターから遁走した時の情景が彼の脳裏に浮かび上がる………



(エディの表情………だけど自分には艦と乗組員を守る責任がある………)




斜面を登り切ったところでランドーはポケットからグレムリンを取り出し、周囲の量子密度を調べた。


「前方にクオンタムが急激に増大している場所が在る………間違いない、量子ステルスだ!」



慎重に歩みを進め、反応が最大になった所でランドーは腕を伸ばした。彼の手のひらが冷たい金属に触れた……


ランドーはフッと口元を緩ませるとニューラリンクで機体とリンクして底部ハッチを開放しようと試みたが昇降ハッチは動かない………


(ロックを掛けてるな、用心深い奴だ………)



ランドーはTR-3Dの制御キャンセルコードを入力し、強制的に昇降ハッチを開放させた。素早くキャビンに入ると昇降ハッチを閉じ、ロック制御を元の状態へ戻した。



(日が上がったらエディと風早空佐の息子夫婦は此処へ来るだろう。エディには意識感応能力があるが、同じ場所で複数人が同時に居る自分の足元は判りにくいはずだ………)


ランドーはパイロットスーツを格納している大型のキャビネットを開くと、その奥へ身を潜め、スーツに装備されているハンドガンを取った。




     ◆




意識がボウーッとした中、ランドーは目を覚ました。周囲には複数人の足音がしていた。


(しまったっ!寝入っていた。もう、乗り込んで来ているようだな…… )


ランドーは息を殺し、機体に乗り込んで来た者の会話に耳を傾けた。その中には情報に無い人物も混じっていた。



………[ ミカ、どうだっ? 出津速雄と同期出来たか……… ]


………{ 死ぬかと思った………この船は意識を持っている!私は認証を通ったみたい、この船は霊子次元と物質次元を往復出来る能力を持っている。だけど、霊子次元の深部へ行くには 出津速雄の認証が必要なの。}



(船、霊子次元? いずはやお………名前なのか?)とランドー。



………[ ミカ、皆が乗れるように出津速雄に懇願してくれないかっ! ]


………{ 分かった、お願いしてみる。 }



(ミカという女、一体どこから連絡しているんだ。船は何処に居る?)

ランドーがそう思っている時、別の声が聞こえた。



………[ 私の高次アクセスでもあの船とコンタクト出来なかった………私は認証されなかったのかしら? ]


………[ そんな事はないよ、エディ。ミカの霊子感応は高次の意識感応とは別のもの………上手く言えないけど、現代の通信に火を燃やして煙で知らせようとするようなものだ、と思う。出津速雄が最初、高温度を発したのは高次の刺激で目を覚ましたんだ。 ]



(エディッ!! やっと………!)ランドーは思わず心の中で叫んだ。やっと、の先は言葉に表せないほどの思いだった。



………{志門、 出津速雄は願いを聞き入れてくれた。 順次、こちらに転送するから。}

………[ 分かった! 先ず望美さんとエディをそっちに送る。 ]




(まずいっ!)とランドーは思った。



ランドーはダッとキャビネットから出ると狭いキャビンを掻い潜りコックピットへ入った。そこで目に入ったのはエディと望美という女性の後ろ姿の影が薄れて消えて行くところだった。


「エディーッ!」ランドーが叫んだ時には既に二人は消えた後だった。


ランドーは直ぐさま志門をパイロットシートから押しのけ、感応スティックに手を置くとTR-3Dのメイン動力を落とした。



脇に転がった志門に銃口を向けるランドー。



「喋るなっ!こちらの言う通りに動けば手荒な事はしない。」

志門はそのまま硬まった。



そんなやり取りの最中、光の輪郭が現れ、輝度を増しミカになった。



「志門、何で返事が無い………あっ!!」

「動くなっ、月の女!こっちの言う通りに動けっ!」



ランドーは二人を拘束するとコックピット後方キャビンへ引き摺り、自分の潜んでいたパイロットスーツ格納キャビネットの扉を開け、スーツを取り出すと代わりに二人を内に閉じ込めロックを掛けた。




この章辺りから地上人アベルと月のカインの因縁の対応が始まります。その先に在るのは対立か和解か………続きをご期待下さい。

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