「TR-3D回送と艦内で起きた怪異」
TR-3Dと風早空佐の息子の志門とその妻である月の女性、ミカを確保する事に成功したランドーは直ちに日立宇宙工廠へ飛ぶ。そこでランドーはロバートソンと工廠の責任者、赤松三等宙将と今回、拘束した志門とミカ、統合機動宇宙軍について知ってしまった風早空佐への対応について話す。
その後、回収したエディ·スイングのTR-3Dをグアム統合機動宇宙軍工廠にいるSCV-01(リベレーター)へ回送するランドー。 艦に入り、艦長室に居るとき、航法管制の飛鳥大尉が彼のもとを訪ねる。彼女はいきなり豹変しランドーを襲う………
「TR-3D回送と艦内で起きた怪異」
メイン動力を切ったTR-3Dは量子ステルスが解かれた状態で丸裸となり、監視衛星からの警戒に晒された。
アメリカ軍横田基地から直ちにCV-22オスプレイ、AC-130ガンシップと直掩のF-35Aが駆けつけ、TR-3Dの降着した山頂上空を旋回し続けたため、麓の街は騒然となった。
「クソッ、面倒な事になったっ!」
ランドーはTR-3Dを起動させ、機体とリンクすると上昇を開始、山頂から180ftの高度で高次ドライブに移行した。
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日立宇宙工廠に戻ったTR-3Dは直ちにハンガーに格納され、機体の周囲を警護の隊員が取り囲んだ。
ランドーは二人、志門とミカを閉じ込めたキャビネットのドアを開くと次のように警告した。
「こちらの言う通りに動け。それと喋るな……私は君たちの安全を君の両親に約束している。此処で私と他の者に銃口を向けさせるような行動はするなよっ!」
志門はそれを聞いて驚いて叫んだ。
「お前、両親に何をしたっ!?」
ランドーはそれには答えず二人を機体から降ろした。
ランドーは二人が収容する為の特別な部屋へ入ったのを見て、すぐにロバートソンと赤松三等宙将を交え対面した。
「ご苦労だった、ランドー。よく一人で見つけ出せたものだな。」と私はランドーを労った。
「先に報告します。TR-3Dは逃亡者から奪還に成功しましたがパイロットのエディ·スイングは取り逃がしてしまいました。」
私は短いため息を吐くとポケットから電子煙草を取り出し吹かし、赤松宙将の方を向いた。
「赤松司令、この部屋は禁煙だが許してくれ。止められないんだ。」
「承知していますよ、ロバートソン提督。」と赤松は返した。
私はランドーの方へ向き直った。
「エディ·スイング………彼女はヒヒイロカネが失われた今、TR-3Dパイロットだけの立ち位置だ。彼女の評価は今後のSCV-01、リベレーターの運用と合致しなくなる。」
私のかなり遠回しな言葉使いに対し、彼は次のように返した。
「ヒヒイロカネの無くなったTX機関は只のガラクタです。今更、彼女がいても仕方ありません、提督。」
腕を組んで、うなだれるロバートソンに赤松は尋ねた。
「確保した人間とエイリアンの女はどうするのです?それと我々、統合機動宇宙軍の存在を知った空自の風早三等空佐夫妻の扱いは?」
赤松宙将の“エイリアン”という言葉に違和感と抵抗を感じながら、私は次のように述べた。
「既に府中基地の山元作戦司令には伝わっている………詳細を報告した後に統合機動宇宙軍本部のカーネル·リードマン大将に伝わるだろう。その先は多分、軍総本部と政府が直接介入してくる………私の予想だがね。」
◆
その後、ランドーはエディのTR-3Dの操縦をリモートにするとSCV-01、リベレーターのいるグアム統合機動宇宙軍工廠へ自機と共に回送を行っていた。
三次元基準飛行でグアムを目指し、上空に差し掛かると地上にはリベレーターの白い巨大な艦体が確認できた。
「暫く振りだ………SAI、応答せよ。こちらはTR-3D、ランドーだ。エディ機と一緒に上部左舷デッキに降着する。デッキ作業アンドロイドを配置に着かせ!」
SAIからすぐ返信が入る。
{ お帰りなさい、ランドー艦長。左舷2番スライドデッキへ降着して下さい。エディ機は3番へ。 }
「了解した!」
TR-3Dはスライドデッキに降着、固定されるとデッキは艦中央の構造物の中にスライドし、メインエレベーターで艦体内部に格納された。
機体を降りたランドーは艦内移動のリニアチューブでCICへ向かった。
CICに入ったランドーは各管制エリアを見ると管制官の代わりにアンドロイドが配置に着いていた。
「SAI、艦の修理と改修の状況はどうか?」、とランドーは聞いた。
{ 機動宇宙軍本部から改修の方針が示されていない為、修理も絶対必要箇所を除いて出来ない状況です。 }
ランドーは大きなため息を吐くと奥の艦長室へ向かった。
(ロバートソン提督から日本防衛省の最新鋭艦〈あまてらす〉の性能報告を聞く限り、リベレーターは第一線から退くかも知れないな………SCV-02(フリーダム)も間もなく竣工だというのに。)
ランドーは艦長室に入り、椅子に腰を落とした。SAIによって提督用にプリントアウトされた報告書に目を通していた時、インターフォンに声があった。
{ 艦長、航法管制の飛鳥です… }
声の主は飛鳥大尉だった。ランドーは一瞬、考えたが取り敢えず中に通した。
「どうした、何だ?」、とランドーが尋ねた。
「艦長が帰って来ると聞いたもので………」、と飛鳥。
彼女の言葉を聞いたランドーは苦笑した。
「日本には一時帰国しなかったのか? 艦がこのような状態だ。下士官にはSAIから十分な時間が割り当てられている………あぁ、そうだ! 提督から聞いたけど防衛省の最新鋭艦〈あまてらす〉の艦長、五十鈴一等宙佐が君のことを話していたそうだ。知り合いなのか………」
ランドーは会話を少しでも軽くするために、五十鈴宙佐の話を敢えて持ち出したが飛鳥の表情は固まったままだった。
「?」、ランドーはその表情を見て訝しがった。
二人の間に大きな間が空いた。
「大尉、何が言いたい。お互いに時間が………」
ランドーが言い終わる間もなく飛鳥は近づき更にテーブルを回り込んで彼に迫って言った。
「艦長は、 私が嫌い、 ですかっ!」、と飛鳥は途切れ途切れに言う。
「………君に特別な感情は持っていない。いきなり、こんな事を言うなど………大尉は疲れているんだ、艦を降りて少し自由にしろ!」
飛鳥はランドーの言葉を無視する様に椅子に座っている彼に自分の身体を擦り寄せ、暗い目で見下ろすと唇の端を噛んだ。次に、突然奇声を上げてランドーの首に腕を回すと絞め上げた。
「ギィイイイイイーッ!!」
「ゔぁっ………や、や、めろっ! 大尉!」
余りの絞め上げる力にランドーの意識は遠退いて行く。




