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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第二部 [ エディ追跡編、高次元戦闘編 ]
33/82

『日立宇宙工廠』

日本の日立宇宙工廠に着いたロバートソンとランドーは工廠の責任者、赤松三等宙将を訪ねる。そこには赤松の他、新造最新鋭艦〈あまてらす〉の艦長、五十鈴摩利香一等宙佐の姿があった。

ランドーは挨拶を済ませるとTR-3Dのコックピットへ戻り、アメリカの軍総本部のタイムゲートチームの情報を入念に調べる。そこで分かった事は消滅した世界線でUFOと共に行方不明になった宇宙域戦術部隊のパイロットが現在の世界線に於いても月のUFOと遭遇している事実だった。


『日立宇宙工廠』



TR-3Dは低い”ビィイイイーンンン“とタービンの様な唸りを発した後、機体中央の重力可変器にエネルギーを蓄積した。


「ブレイク!」


ランドーが発すると同時に機体はストロボを焚いたように輝き消えた。




機体中央のキャビンに乗っていた私は何の衝撃も感じなかった。私は従来の噴進機関の航空機と時空機の差を改めて感じた。


(この機体〈TR-3D〉は機体周囲の空間を加速させている………外燃機関の様なものだ。)


一分も経たないうちにランドーの声が有った。


『提督、着きましたよ。現在、日立宇宙工廠上空………管制室とコンタクト………降着、開始します!』




     ◆




降着しTR-3Dがハンガーに格納された後、私たちは直ちに工廠の責任者、赤松三等宙将を訪ねた。


部屋に入ると赤松三等宙将の他、タイトな宇宙服をまとった若い女性将官の姿があった。



「お待ちしておりました。ロバートソン提督、そしてランドー艦長。私は防衛省日立宇宙工廠の責任者、赤松です。隣りに居るのは新造艦〈あまてらす〉の艦長、五十鈴摩利香一等宙佐です。」


赤松がそう言うと、隣にいた五十鈴は進み出て敬礼し握手を交わした。

彼女は肩口まで伸ばした黒髪と日本人では珍しく瞳の色はグレー掛かっている。年齢は二十五歳前後、身長は165cmくらいだった。



「とても、お若いですね。うちの艦長と同じくらいですか?」

私は赤松の方を向いて尋ねた。赤松はフフッと笑った。



「提督には五十鈴宙佐に艦の説明をさせます………ランドー艦長は喪失したTR-3Dの捜索を急がなければならないのでしょう。」


それを聞いたランドーはホッとした。此処で上官の長話を聴いている場合ではない。


「お気遣い、感謝します。」

「必要な事があれば申し出てください。」


ランドーは赤松と私に敬礼すると退室した。



   ······················



ハンガーに戻ったランドーはすぐさまTR-3Dに乗り込むと日本の防空システムと自身のニューラリンクシステムとリンクさせ、ここ一ヶ月間の防空記録を調べた。


(地上へ降着した形跡は無い………だがこの線は無いな。パイロットへの補給を考慮すれば一週間が限界だろう。問題は何処に降りたかだ………エディは確かに敵と接触して何かを話している。敵のUFOの地上へのアクセスに鍵があるかも知れない。)



ランドーは統合機動宇宙軍のリンクを経て軍本部の情報システムにアクセスを試みた。


作戦司令部からランドーにアクセス権が与えられたようで彼はタイムゲートチームの情報を呼び出せた。


「まず世界線の整理と月のUFOの地上アクセスとその時の状況………」




ランドーはこの情報を俯瞰するように読むと、先ず世界線の整理に入った。


(世界線は今回の事に照らし合わせると大きく二つ。消滅した世界とそれによって生み出された現在の世界線だ………ここで同時刻のUFOの動きを比較。)



ランドーは十二年前に月のUFOが地上に墜落しかけた時の状況と現在の世界線での同時刻に何が有ったかを調べた。この中に興味深い事象を見つけた。


「消えた世界線で月のUFOが地上に墜落しかけた時、近くを飛んでいた自衛隊の宇宙域戦術部隊の機体が行方不明になっている。現在の世界線の時は………同じだっ!」



ランドーは防空システムの監視映像のアーカイブにアクセスすると当時の月のUFOと自衛隊機の動きを精査した。


(消滅した世界では月のUFOが高エネルギーを放って、その影響圏内にいた自衛隊機は同時に消えている。現在の世界線では………何だ、この動きはっ!?  自衛隊機はUFOと並んで翼端を降っているぞっ!)



(これは何を、何かの合図か?)



ランドーは防衛省にリンクして、この機体とパイロットについて詳しく調べた。



「この機体は日本宇宙開発機構に協力している宇宙域戦術航空自衛隊機、三菱の観測連絡機YR-14。パイロットは風早来門三等空佐と風早静香一等空尉………彼らの住んでいる所は………この工廠のすぐ横の街じゃないかっ!」



ランドーはリンクを解くと暫く腕を組んで考えた。



(月のUFOのアクセスポイントは日本に限られている。エディが会った月の者が日本に関係しているなら彼女のTR-3Dは日本の何処かに降着した可能性が高い。)



ランドーはコックピットを離れ中央のキャビンに行くと軍服を脱ぎ私服に着替えた。彼は機体を出る前に自機とのリンクが出来るようポケットに携帯型のリンクセンサー(自機とのリンク以外、重力磁気反応、他のUFO機の発見や確認が可能な)通称 ”グレムリン“ を忍ばせた。



ランドーはロバートソン提督に連絡を取り、エディとTR-3Dの捜索開始を告げた。


「提督、私は今からエディとTR-3Dの捜索に出ます。」

{了解した。一人か?}


「大丈夫です。必要な情報と装備は持っています!」そう言うとランドーはTR-3Dの底部ハッチから滑るように降りた。


機体を離れる際、彼はハンガーの係員に対し絶対に機体に近づかないよう指示を出した。



ランドーは赤松司令に連絡車の手配をお願いすると、それに乗って隣の市(技術開発特定区)へ走った。





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