『機動空母リベレーター』第二部「エディの追跡へ」
地上のグアム統合機動宇宙軍工廠に降り立ったSCV-01リベレーターは損傷箇所の修理と機関の改修が予定される。
その間、ロバートソンは日本の日立宇宙軍工廠で建造されている最新鋭艦〈あまてらす〉の運用オブザーバーとして、また艦長のランドーは遁走したエディ・スイングとTR-3Dの捜索回収作業の指揮を取る事となった。
『エディの追跡へ』
統合機動宇宙軍作戦司令部の命を受け地上のグアム統合機動宇宙軍工廠に降り立ったリベレーター。
艦の修理改修が行われる間の各乗組員の行動プログラムはSAI(艦統合AI)によって各科員の情報端末に伝えられた。
リベレーターが降着したあと最初に戦死者の遺体と負傷者が降ろされた。
私とランドーはすぐさま軍工廠の責任者であるM・アンダーセン提督(中将)を訪ねた。
彼は部屋のドアを私たちのために開け放っていた。ドアの前に来ると彼の顔が見えた。アンダーセンは入れ、という感じで手招きをし、私たちが前に来たところで椅子から立ち上がり敬礼。私たちも呼応する様に敬礼した。
「久しぶりだな、ロバートソン。」と彼は言った。
彼とはSSFP(Space Strike Force Program:宇宙打撃軍計画)が始まった頃からの旧知の仲だった。彼は階級が私より上だったが、普通に友達と会ったときのようにフランクな感じで話した。
「今回は世話になる、艦の外郭の損傷は自損事故だ。機関の改修に付いて何か話は有ったかな?」と私は彼に言った。
「いや、まだだ。今までの経過を考慮したうえで機関だけではなく兵装も改修が必要になるかも知れない。」
「確かに………重粒子砲以外、ミサイル等の物理兵装は役に立たないかも知れないからな」と私。
アンダーセンは私の横にいるランドーを見た。
「君はとても若いな。」そう言うと私の方を向き直り彼について尋ねた。
「彼とは初めて会う。確かR・ランドー艦長だったな………彼の働きはどうだ?」とアンダーセン。
「彼はリベレーターの専任艦長だ。良く働いてくれる、私は補佐の様なものだ。」
「宇宙艦の乗組員は皆若い。艦長の年齢も若い方が良いかもしれないな」アンダーセンは私の方を向いて笑った。
「全くだな。」私は真顔で答えるとランドーは何か申し訳なさそうな顔をした。
「まあ暫くは休んでくれ。改修の方向性が確定したら機動宇宙軍本部から通達がある筈だ。その時、君に知らせるよ。」
そう言うと私たちは立ち上がり、向き合って互いに敬礼し私とランドーは退室した。
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私とランドーは軍工廠内の官舎へ向かうと施設内に在る通信会議室へ行き、統合機動宇宙軍作戦司令部と繋いだ。そこで作戦司令の山元 葵一等宙将に向かい、私とランドーの地上活動プログラムを確認した。他の科員たちと違い私たちには隙間なくAIによってスケジュールが組み込まれていた。
「ロバートソン准将、貴方は日本の日立宇宙工廠へ行き、新造艦〈あまてらす〉にオブザーバーとしてしばらくの間着任して下さい。この艦は日本の対高次元技術を投入した最新鋭艦です。今後のSCV-01(リベレーター)の運用にも参考になる筈です。」と山元は言った。
「承知しました!」と私は答えた。山元はランドーの方を向き次の指示を出した。
「ランドー艦長はTR-3Dで提督を日本へ送ったあと、遁走したエディ・スイングとTR-3Dの捜索回収作業の指揮を執るように。彼女と機体は機動宇宙軍の財産です………何としても捜し出す事!」
(そのためにわざわざTR-3Dで提督を日本にお連れしろ、と言う事か。)とランドーは察した。
「承知しました、」とランドーは返した。
「リベレーターの改修が完了するまでの期間です。絶対に見つけ出しなさい!」と山元は語気を強めて言った。
「直ちに! 司令、そのため私に軍総本部の時空戦部隊の情報アクセス権を与えて下さい。広範囲な情報が必要です。」とランドーは山元に情報アクセスの許可を具申した。
山元は?な感じを覚えたが許可を得られるように上申する事を約束した。
◆
二日後、ランドーのTR-3Dはリベレーターから降ろされ地上のハンガーへ移動した。
アンドロイドの作業員が機体の整備を行ない発進準備が整う中、重装の黒いパイロットスーツを着込んだランドーとは対照的に私は軽装の艦内服を着用して彼に続いた。
時季は夏、照りつける太陽は広大なコンクリートの滑走路面をフライパンの様にしていた。バイザーを開放して進む彼の額には幾筋もの汗が流れていた。
「済まないな、艦長。」と私は彼の背中越しに声を掛けた。彼は顔を横に向けてそれに応えた。
「気にしないで下さい、私はパイロットですから。」と彼はとても良い笑顔で言った。
(見かけより遥かに若い………実際、彼が生まれて〈作られて〉から二十年に満たない。他の下士官たちは皆、二十七才前後だ………)
私は、この若い青年が巨大な宇宙艦の艦長を務めている事に改めて思いを巡らした。
私たちがハンガーへ入いるとランドーは先に進んでTR-3Dの機体に触れた。すると機体はランドーのニューラリンクにより底部の昇降ハッチを開いた。
私が先に乗り込みランドーがハッチの閉鎖を確認した。
「提督、狭い所ですみません。その代わり直ぐに目的地に着きます。ハンガーを出て高度150ftで高次元ドライブに入ります。」
ランドーはそう言うと私の居るキャビンからコックピットに通じるエアロックを開けパイロットシートに着いた。
パイロットシートは自動で前方にスライドされランドーは前方から突き出している球形の感応スティックに手を置いた。
機体は僅かに "ブゥウウウウウ〜ンンン” と低い振動音を発すると地上から20cmほど浮き上がりハンガーから出た。
少し離れた所で上昇し始めた。
「高度150ft。提督、出ます!」とランドーは発した。
「了解した!」と私。




