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機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター』第一部 [火星、月地球間軌道戦闘編 ]
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「暗号解除と月面の真実」

提督室に出頭した艦長ランドーと火器管制のフスター大尉、少尉は先に来ていたTX機関関係者のシュミットとエディ・スイングを見て提督のロバートソンに苦情を申し立てるも却下される。暗号解除に先立ち、ロバートソンはフスター大尉、少尉(兄妹)に対し暗号解除の理由と秘匿の誓約を要求する。それに対し秘匿の重大性を考えた大尉は妹のマーベリット少尉に提督室から出ていくよう命令する…


その後、ロバートソンとランドーによって暗号が解除され、全員がドローンによって得られた映像を見る事になる。そこには驚愕の事実が映し出されていた。


「暗号解除と月面の真実」



私が先に提督室へ戻った後、暫くしてランドーは火器管制員のフスター大尉と少尉(兄妹)を連れて部屋を訪れた。


{提督、ランドーです。私以下、火器管制員マーベリック・フスター大尉とマーベリット・フスター少尉三名出頭しました!}


「よしっ、入れ!」と私。


ランドーを筆頭に三名は部屋へ入ると、そこにTX機関操作関係者が居たのを見て驚いた。


「提督、これはマズいのでは…」とランドーは言葉を選びつつも慌てた。後ろに居たフスター大尉、少尉も、これは如何なものか…と言う感じで互いに顔を見合わせた。



「この二人を呼んだのは私だ。情報の核心に迫るためには彼らの助言が必要になる。」と私は答えた。



ランドーはシュミットの方を見ると直ぐさま次の事を訪ねた。

「TX機関は操作員(エディ)が離れていて大丈夫なのですかっ⁉」


シュミットは掛けた眼鏡を外しセリートをポケットから取り出して拭きながらランドーへ言った。

「09の方は索敵探知系の制御バイパスだけ残してある。この前の様にはならないから安心してくれ。」



ランドーは私に振り返ると次のように言った。


「しかし、提督…これは重機密事項です。軍属ならともかく…」


「艦長、これから我々が知る事は表面上だけの理解では難しいのだ。現場に立つ者として事象の裏側を見なければ今回は…」言い掛けて私はエディの方を見た。


私は言葉を選んで次のように言った。


「今回の事は理解できない。私は月から飛来したUFOの件で初めて軍人として自身の “人間” を試された感がある。今まで、火星の戦闘も含めて人が銃を持つには、それなりの理由と大義名分が必要でそれは有った、今までは――だ。 この前、エディが私と君に忠告した言葉は今回のドローンオペレーションで得られた偵察画像で裏付けられるだろう。艦長、君には覚えて置いてもらいたいが “スピリチュアル” な事が現実以下と捉えるのは危険、と言う事だ。一昔前なら異星人やUFOの存在自体がスピリチュアルだったが今はどうか…我々はそれらと対峙しなければならない!」



ランドーはやや不満そうな面持ちではあるが承知した。



次に私は火器管制員の二人に対し暗号解除の危険性について話した。


「二人ともご苦労。君たちに暗号を解除し偵察画像を確認してもらうのは実戦に於いて重要なポジションだからだ。今回解除する暗号はTSC-Aである事は承知していると思う。この情報を恣意または故意に漏洩、または拡散した場合、どうなるか分かっておるか…その覚悟はあるかね。」


フスター大尉は私の前に進み出た。


「…火器管制がこの艦の重要ポジションである事は自覚しております。それに付随するものであれば私はそれを受け入れる覚悟は出来ておりますっ!  但し…」


フスター大尉は後ろに居るマーベリットを見て言った。


「少尉、お前はこの場から去れっ!」

「エッ、何で…兄さん、大尉?」とマーベリットは狼狽えた。


「直属の上官の命令を無視するのかっ!」と大尉は語気を強めて言った。



(戦況が進むか終われば、何れこの情報も拡散してしまうだろう…その間の危険性は出来るだけ抑えなければ……責任は一人でいい……ゴメンな、マーベル)心の中でマーベリックは呟いた。



マーベリット少尉はくすんだ表情を浮かべながら敬礼し、渋々と退室した。




「よろしい…ではTSC-Aを解除する。」と私。



私は鍵の掛かった壁の小箱の蓋の暗証キーを押して中からチェーンで繋がった二つのキーを取り出し一つをランドーに持たせた。そして離れた所にある壁の二つの隣り合った鍵の掛かったボックスを開錠し中から緑色で①の表記がある封筒を取り出し、ランドーと向き合ってお互いの封筒に間違いがないか確認した。


私とランドーは封を破り、中に入っていた五段階の認証コードを互いに読み合った。


{認証コード確認、場所、提督室。操作員 JC・ロバートソン、R・ランドー}とSAIの声が入った。


次に提督室に有るデータ端末にのみ、暗号を解除した情報がダウンロードされた。



私は壁のモニターを開くとドローンの偵察画像を出力させた。


私を含め全員がモニターを注視した。




モニターにはドローンから撮れた映像で月面の遥か彼方に巨大なドーム状の建造物が現れた。画像の端には位置情報と距離、温度、バッテリー残量が示される、距離は6300m……半球状の透明なクリスタルで覆われたドームの中には先の尖った高層建造物の影が見えた。



私は注意しながら画像を早送りし、ドローンとターゲットの最接近点を映し出した。合計10機のドローンの映像を注意深く観察した。


ドームのクリスタル部分は月面凡そ1mくらいの所から立ち上がり弧を描くように天に伸びている。ドローン各機のAIは侵入口を探そうとするが、それらしいものは一切無いようだった。AIはここで侵入を諦め、センサーカメラ、ペリスコープによる内部の走査を開始……。


少し離れた所に居たドローンは暫くしてドーム上空に一機のUFOが飛来滞空し、次にゆっくりドーム内へ降下して行くのを捉えていた。UFOはまるで透過するように分厚いドームを抜けると、中に在る建造物の影へ消えていった。


「TXソナーで捉えていた奴だ、間違いないっ ‼ 」とフスター大尉は叫んだ。

「あの分厚いクリスタルの様なものを抜けた…」とランドー。



シュミットとエディも大きく目を開いてそれを見ていたが、エディの顔には何故か安心した、と言うような柔らかな表情を浮かべていた。私は二人に問いかけた…


「博士、どう見ますか?」と私。


「フム……技術者として言わせてもらうと、これは、もう…というレベルだ。我々は比較の対象にすら成らない。」とシュミットは額に汗を滲ませながら言った。



「どうだね、何か解るか?」私はエディにも声を掛けた。


「画像として見るのは初めてですが、ここに映し出される物には脅威を感じません…むしろ何か温かいものを感じます。 おや、何だろう?……二人、いや三、四人? 少し周囲に居る者と波動が違う、これは地上に居る人の波動に近いものを感じる…」エディは腕を組み首を傾げた。



(何でこんな所に…! 確か提督が見せてくれたデーターでは4年前に此処のUFOが日本に飛来したと言っていた…その後も地上と接触が有ったのかも知れない…)




ドローンは自機が見えないようにペリスコープを伸ばし内部を走査したのか、画像のアイポイントが上昇するのが分かった。各機とも内部の建造物の影に阻まれコレと言ったものが出て来ない……私はその事に少し焦りを感じていた。


(中に居る者の画像が欲しいのだっ、それはこの情報の核心になる部分だ!)



そう思っていた時、ドローンの一機が建造物の影を回避しながら更に奥深い場所をズームで映し出した。




「オオッ ‼ 」と、それを見た全員から声が漏れた。



ドーム中央と思われる所に大勢の人間?が集まり腕や拳を突き出している、それは地上で言うストライキの様な雰囲気だった。それとは判るがズームの為、画像の質は著しく落ちていた。


次に大勢の人間が集まっている、かなり手前に二人の人間?が現れると、彼等は空間に光るモニターの様なものを展開し、次に何かよく分からないが黒い幕の様なものが現れて二人を覆った。


暫くして二人を覆っていた幕の様なものは消えた。二人の内、一方は地面に伏して両手で顔を覆っている、また、もう一方はそれを見て手を頭に持って来て困ったような仕草を見せた。




私は映像を元に戻して彼等の顔が見える部分で画像を拡大し補正を掛けた。


そこで見たものは私の望みどうりのものだった。二人は人間のようで女性の姿形をしており地上や宇宙軍では見た事もないような宇宙服? 身体にフィットしたボディースーツの様なものを身に着けていた。


彼等の雰囲気は知的で人間離れしている、と思わせるような洗練された美しさ?だった。



私はランドーの方を向いて言った。


「エディの言った事は概ね正しかったのではないかね。」


それに対しランドーは敵意を露わにして返した。

「提督、見た目だけの判断は危険ではないですかっ⁉」


「確かにそうだ。だが…」私は言い掛けると机の上に散らばった電子煙草を拾い、一本吹かした。

「彼等が我々に対し何をしたか、が最大の焦点だ。それは現場で戦う理由でもある。」と私は続けて彼に言った。



「それを今から彼女(エディ)に話してもらう。先ず、それを聞き給え。」


私はエディの方を見て浅く頷き説明を促すと彼女も頷き、ランドーと顔を合わせた。





〈SCV-01リベレーター乗組員の参照資料〉


● R・ランドー大佐(艦長)AH-01*TR-3Dパイロット。

● エディ・スイング(GEバイオエレクトリック社)AH-02*TX機関操作員、TR-3Dパイロット。


日本の考古学研究機構により発掘されたヒヒ色金(カインの剣の同位体)と同時に発見された古代のミイラをアメリカ政府が本国へ移管したのち、軍のバイオロジカル研究所で遺伝子を修復したのちにクローンとして再生した人造人(AH-01)。

これらの生体とヒヒイロ金の物体との相互関係研究はAH-01が作られた後、GEバイオエレクトリック社へ移管され、後に研究が本格化し特殊推進システム操作に適合する事が分かる。AH-01の予備個体であるAH-02(E・スウィング)で行う事となった。


操作能力の強化のため人工生体量子脳(AQB-09)とのコネクトでヒヒ色金のエネルギー

を操作する。


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