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USSF機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『USSF機動空母リベレーター戦記』第四部 [ 最後の夢編 ]
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『機構の崩壊と艦隊の残像』

軌道ドック〈しきしま〉とのランデブーを終え、アリゾナエドワーズへ帰還したSCV-01〈リベレーター〉。リベレーターが最初の帰還を果たした時から一年が過ぎた…

地上の変容は進み、世界の各国は世界協議の場で同じテーブルに着き、次の世界の在り方を模索し始めていた。アメリカ国内も政府の機関のオフィスが殆どが空室となり、ホワイトハウスに居る大統領ハワードの仕事は世界協議に集中した。世界の変容の最後の事象である”死者の復活“を話し合うハワードと補佐官のクラウディア。


一方、国際宇宙防空ネットにより、正体不明物体の地球への接近を知らされた軍総本部ペンタゴンのボイス中将は、SCV-01〈リベレーター〉を再び宇宙へ向かわすよう、統合機動宇宙軍本部のアンダーセン司令に通達する。指令を受けたランドーは直ちにSCV-01〈リベレーター〉の発進準備に取り掛かる。


『機構の崩壊と艦隊の残像』




SCV-01〈リベレーター〉が地球へ帰還して一年が過ぎた…



世界は静かだが、確実に変容の波がその水嵩を上げていた。世界の国々は、行く先の新しい世界を見据え、アメリカ同盟国、ロシア連合、それに属さない小さな国々までが同じテーブルに着き、合議を重ねていた。


社会では会社に就かないフリーランスが溢れ、生産物流は停止し、路上には失業者や浮浪者、未就業者で溢れたが、彼等は飢えることは無かった。思考の物質化による食料の自給と機器を介さないテレパシーにより必要な情報を知る事ができた。昔のような大量の情報の中から選ぶという事はなくなっていた。また、住居に於いても、自分の周りの空間や温度を自在に操作できる者も現れ始めていた。世界の変容は大規模かつ、広範囲に及んだが、決して全てが可能になった訳ではなく、先ず、人の生存に必要な食料、居住空間、情報、移動の順で変容しているように見えた。今まで在った社会体制は、僅か一年の間に、その殆どが崩れた。一人の人が食物、居住、情報、移動を全て完結させてしまったからだ。支配の構造は殻を残したまま、今にも崩れようとしていた。過去に縋る支配者層は奥歯をキシらせ、何かの支配を創り出そうとするたびに健康を害し、最悪は死に至った。良くない企ては、身体に異変と異形をもたらし、周りの者は視覚的にその悪意を知る事が出来た。




      ◆




アメリカのアリゾナ、エドワーズ統合機動宇宙軍工廠では依然としてリベレーターはドックに鎮座していた。世界が変容する中で、軍の機構は維持され続けた。敵性異星人の情報は無く、その動きも一切確認できなかったが、それでも防衛の手綱を緩められなかった。各国の世界協議でも、軍の機構の解体は一番最後になる、という認識で一致していた。結局、高次元に居た彼等、敵性異星人たちがどの様になったのか分からなかったからだ…



この件に関してはプレアデスやアンドロメダが所属する銀河連合の知らせを待つ以外になかった。世界の変容は世界のあらゆる問題を解決し、戦争による人類の自滅も避けられた。かつてプレアデスが提唱してきた戦争の放棄と支配の終焉で、彼等異星人が到来する日は近いのではないかっ?とする者も政府関係者の中には多くいた。



 

  ……………………………




国内の殆どの機構や省庁が廃止された中で、ホワイトハウスはまるで小さな街の公民館の様に、ひっそりと存在していた。今では警護に立つ者も無く、また押し入って強盗を働く者もいない…。執務室の中では、仕事が激減し、国内と世界の変容を知らせる報告書に目を通すのが大統領ハワードの仕事になっていた。補佐官のクラウディアは、既に補佐する程の仕事が無く、ハワードからは自由にしてよい、と言われていたが、それでも国が在るまではっ!と言い、彼の側に就いた。



ある時、ハワードは自分で念出した昼食をクラウディアと食べていた時に次の事を話した。



「まもなくアメリカという国は無くなるだろう。我国に限らず何れの国も無くなる、……残るのはアメリカや日本という名前だけだ。既に他国の人間が空港の通関を経ずに、そのまま国内に現れている…、国境は無いも同じだ。」、とハワード。クラウディアは食事に舌鼓を打ちながら返した。


「ハワード、あなたの作った食事、とても美味しいわ!私は貴方ほど上手く食事の食物を想像出来ないの。この食事は貴方のイメージなのね、…ウフフッ。 ところでハワード、いや大統領、社会が変容している中で、まだ”死者の復活“が起きていないのは何故ですか?街中の至る所で光る人が見られているけど、完全に実体化していない……」


クラウディアの問いにハワードはナイフとフォークをカチャッと皿の上に置いた。



「その事はカインのエルメラ議長とも話し合った。彼女が言うには、この世界を作って、その礎となり、再び現れることを放棄した……、風早果南の記念碑を建てて皆で祈って欲しい、と言っていた。」


「それで”死者の復活“が成されるのですか?」、とクラウディア。


「勿論、その事は聞いたけど、……議長も確証は無いと言っていた。………確かに、光る人は増えて”死者の復活“は起きると思う、だけどね、シンシア…」、ハワードは俯いて声を詰まらした。


「どうしたのです?」



「君や私は失った者と再会を果たせるが、犠牲になった風早果南の両親のことを思うと、………彼等は最愛の娘を失って二度と会えないんだ。戦争を終わらせて、本当の意味で『自由と平和』を創ったはずの彼等が、一番悲しみを負うことになるなんて……、だから私はエルメラ議長の願いを聞き入れようと思うのだ。これは人が生き返るからじゃない、世界を変えた功労者に対する最低限の礼儀だ。」



「時期はいつ頃ですか?…場所はっ?」

「今度の世界協議で各国の首脳と話し合う予定だ……、話は変わるが…」、ハワードは次の話を持ち出した。


「”死者の復活“でアメリカのやってきた罪は、………やっと罪から解放されるんだ。ヒロシマ、ナガサキ、それに加えて日立宇宙工廠に2発も核を……それもMGTメガトン級の戦略核だっ!!、……その被害を聞いた時、私は血反吐を吐いて死ぬんじゃないかと思った、今でもだっ!! 日本政府の情報では爆心地に光る人影や建物の形が元有った形に光っていると言う…、死者が復活すれば、これ以上の現状復旧はない……、だからこそ”死者の復活“は絶対に起きなければならないのだっ!!」



ハワードの言葉を聞いたクラウディアは、もう返す言葉はなかった。




  ……………………………




アリゾナエドワーズ統合機動宇宙軍本部…




司令官室でアンダーセンは軍総本部ペンタゴンのボイス中将とリモートで話し合っていた。既に機器を介さなくともイメージの中である程度のやり取りが出来るようになっていたが、今までの古い形式は軍内部において変わらなかった。


“「アンダーセン司令、国際宇宙防空ネットから情報が入った。火星公転軌道内円に、地球へ接近する物体を確認した。」”、とモニターに映し出されたボイスは言った。



「あぁっ、何となくそんな感じはしていましたよ。私の感じでは恐らく機動宇宙打撃群艦隊の残像です。そこいらに居る光る人と同じです。」、アンダーセンはそう言ったがボイスは厳しい表情を浮かべて返した。


“「アンダーセンッ!君も軍人ならデーターを基にしゃべり給えっ!君の”感じ“は関係ない、直ちにSCV-01を飛ばしてくれっ!」”


「待って下さいっ!ボイス中将。SCV-01のような大型艦でなくともフリゲートクラスで良いのではっ!? それにSCV-01は兵装の稼働率が低下しています!」、とアンダーセンは返した。


“「小型艦では何かあった時の対応が追いつかないっ!!」”


「しかし、艦載機が……」、言い終わらない内にボイスは発した。


「今飛べる稼働機を掻き集めろっ!! これは軍事ミッションだっ!!」、そう怒鳴るとボイスはモニターから消えた。アンダーセンは苦い顔をした…


(クソッ、稼働率が低下してるってのにっ…)


ボイスは回線を切り替え、リベレーターに居るランドーと継ないだ。ランドーがモニターに出る…


“「アンダーセン司令、何か?」 ”、とランドー。



「正体不明の物体が地球に迫っている、SCV-01は装備を整え次第発進、哨戒活動へ入れっ!物体の位置情報はSAIへ送るっ、それと艦載機は本部で何とかするっ!」、ボイスがそう言うとランドーは無表情に、承知しましたっ!と言って消えた。




  ……………………………




本部すぐ横の工廠ドックに在る、SCV-01〈リベレーター〉の艦長室に居たランドーは直ちにCICへ入り、SAIに全艦発進準備を発令した。艦内当直員の他、艦を降りて工廠施設内に居た乗組員は直ちに艦へ走った。




ランドーはCICの全球スクリーンに映し出されたアリゾナの平原を見た。以前は赤茶け、荒涼とした砂漠のような風景が、今はまるでグリーンの絨毯を敷き詰めたようになっている。



(僅か一年足らずで環境も変化し始めている…、アンダーセン司令が言ったように自分も受け容れなければならない……これはもう、不可逆なんだ。)、そう感じたランドーは顔を上げ各管制エリアへ向いた。



「もう何ヶ月もリベレーターは飛んでいないっ、……バートル大尉、主機の熱核炉を起こしてくれっ!」、とランドーは動力管制のバートルへ発した。


「了解っ、少し時間が掛かります。ER(Emergency Reactor)、APS(Auxiliary Power System)出力上げっ!……マーク、伝達系チェックッ!!」


「回路ステーターコイルに異常なしっ!主機、マグネター臨界耐圧まで10sec………主機、点火準備整ったっ!!」、と横に居たマーク中尉は発した。


「主機、点火器起動、……臨界まで5sec、……炉内融合開始っ!!」



”ヴヴヴヴヴゥゥゥー…“



低い初期起動音がCIC内へ伝わった。それを聞いた者は管制科員の他、二人の光る人影…



ランドーはリベレーターが軌道ドック〈しきしま〉とランデブーし、エドワーズへ帰還した後、現在に至るまで、この光る人影が艦内のあちこちに出現したのを知っていたが、特に艦に被害を及ぼさない事が分かると、彼はそれらに対して何もしなかった。乗組員たちにも特に害は無いので放って置くよう命じた。


「TXコンデンサーの状態はっ!?」、とランドー。

「また上がり始めて居ますがどうしますか?」、とバートルは返した。


「現状維持っ!火器管制で指向性が与えられていない状態なら問題は無いっ…」、そう言うとランドーは火器管制へ目を移した。



火器管制のフスター少佐は、リベレーターへ向かっている機影を確認した。


「TXソナー、接近する機体群を確認したっ!IFF(Identification Friend or Foe:敵味方識別装置)に応答、機体はSF-51G、所属は、……リベレーターから降ろされていた機体のようです!…数、18機!」



「よしっ、デッキステーションへ通達っ!直ちに着艦作業へ移れっ!!」、とランドーはフスターへ命じた。







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