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USSF機動空母リベレーター戦記  作者: 天野 了
『機動空母リベレーター戦記』第四部 [ 最後の夢編 ]
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『再生』

遺体と負傷者を回収収容し、打撃群艦隊の残骸が漂う宙域から離脱する軌道ドック〈しきしま〉。彼等が宙域を離脱しようとしたその時、打撃群艦隊の残骸は光を放ち始める。地球帰還の途上、通信系に異常を確認した艦長の林は、直ちにステーション指揮官の山口二等宙佐に調査を命じる。

結果は情報の物質化という信じられないものだった。また、艦内に収容した遺体や負傷者にも不思議な事が起きていた…


『再生』




火星公転軌道内円に在る、軌道ドック〈しきしま〉。



深宇宙に漂う、宇宙打撃群艦隊の乗組員捜索救助はその数が多く、また艦隊の各艦の位置も離れていた為、救助作業は難航した。また、生存者は極めて少数に留まった。


〈しきしま〉CICでは艦長の林は捜索救助に出た者から報告を受けるたびに大きな溜め息を吐いた。


「救助艇から報告はまだかっ!…脱出カプセルの電池は長くは持たんっ、急がせろっ!!」、と林は管制員に発した。


ステーション指揮官の山口は打撃群艦隊の艦艇に乗り込んだ捜索救助班の報告を纏めていた…



(SMS-01アトランティス、ST-EPF系高速輸送艦4隻、SCV-02及び03……、それとSR-02バリアント。………生存が多く確認されたのは唯一バリアントだけか…)


山口はキャプテンシートの方へ行き、艦長の林へ報告を行った。



「艦長、打撃群艦隊の艦艇の生存者はもう期待出来ません。TXスキャナーの生体反応も無いし、現場の報告も絶望的です。脱出カプセルも余りに広範囲に点在し過ぎています。我々の救助活動も170時間を超えています……限界です…」、と山口は顔を暗くして言った。


「山口……」、言いかけて林は思う。

(本当の闘いは限界を超えた部分から始まる…)


林は目を瞑った。暫く大きな間が空いた…



「やむを得んっ、救助艇を帰還させよっ!」、と林は決断した。本音を言えば、この冷たい深宇宙に、遺体をさえ置いて行く事に激しい抵抗が有った、……しかし、こちらの活動も既に限界を超えている。〈しきしま〉にはTXソナーやスキャナー等、TXコンデンスによる索敵走査能力は有るが、他の艦艇のようなTX機関や操作員は居ない、………これの意味するところは、通常の基準航法で地球帰還の為には莫大な時間を要する事だった。



山口は管制員に救助艇の帰還を下令し、捜索救助作業の終了を宣言した。それを聞いた管制科員たちは、一様に悔しい表情を浮かべた…



救助に出ていた艇が全て帰還するのに約2時間を要した。回収できた生存者、遺体を降ろした後、林は全艦に黙祷を発した。


CIC内では林以下、全ての管制科員がスクリーンに映し出された母艦アトランティスに向け、敬礼した…



(カートライト提督、ロバートソン……、貴官たちの健闘に感謝する…)



林は敬礼の姿勢を解くと全艦へ下令した。




”「全艦発進っ!目標、地球軌道っ!!」“




  ………………………………




SR-02〈バリアント〉の航法士、L·イングリット大尉はドック内に仮設された応急治療エリアで身体を横たえていた。敵の攻撃で両足を失った彼女だったが、〈しきしま〉の救助が早かった為、なんとか一命を取り留めた。



〈しきしま〉の艦体が揺れた時、彼女はやっと地球へ帰れるんだ………、そう思った。バリアントの生存者は数十名。バイタルエリア、TX機関とその近くに居た乗組員とCICでは自分も含めて数名の者が生還したことになる。自分を激しく責めたストライカー提督の姿は無かった…


彼女はブランケットを逸り、自分の無くなった足を眺めた。足先の感覚は残っているのに実際には足は無い。彼女の頬に涙が伝った。


(これが自分の夢を追い求めた結果なの……、これからどうやって生きて行けばいいの………、もうこんな体じゃ…)



とうとうイングリットは声を上げて泣き出した。それに気が付いた〈しきしま〉の乗組員は駆け寄り、屈んで彼女の背中を擦り励ました。


「しっかりっ、大丈夫、…大丈夫だよっ!」、乗組員は彼女の起き上がった半身を優しく抱いてやった。彼女も泣きながら、しがみつくように乗組員の身体に手を回した。




  ………………………………




艦隊の残骸の残る宙域から離脱する軌道ドック〈しきしま〉。CIC操縦航法管制の航法士は艦をコースターンさせた。浮遊する細かな残骸や破片が艦を叩き、ガンッガンッ!と音を立てた。


「コースターン、回頭角ゼロ設定、……地球帰還コースSAI自動っ!主機起動っ、推力1/10、ヨーソローッ!」、航法士の声で〈しきしま〉は残骸の浮遊する空間を滑り出した。


その空間から出て航法士が艦の推力を上げようとした、まさにその時、管制科員から声が上がった。


「艦長っ、見てくださいっ!! アトランティスがっ…いやっ、周りの浮遊物も光を発していますっ!」、管制科員の驚きの声で、全員が後方に過ぎ去る機動打撃群艦隊の方を向いた。


「なんだっ、あの光はっ?!……」、林は思わず呟いた。



破壊され漂流するアトランティスや高速遠征輸送艦、遠く離れた位置に在るフリーダムや、さらに離れたインデペンデントが目視で確認できるほどの光を放っていた。



「火器管制っ、何の反応だっ!?」、と林。火器管制員は全ての索敵センサーを調べたが全く反応が無かった。


「赤外線他、物理系センサーに反応無しっ!! TXソナーのみ存在強度が上がっていますっ!」、と管制員は答えた。


林の横にいたステーション指揮官の山口は、艦を停めるか聞いた。林はんんーっ…、と難しい顔をした。



「コースそのままっ、航法士、推力上げっ!………山口、我々は急いで地球へ帰還しなければならん。地上の状況を把握するのだっ、宇宙では一先ず勝ったが…」、林がそう言うと山口は頷いた。林は航法管制に地球到達予定時間を聞いた。



「最大速力でも2カ月以上を要します!」、と航法管制。


林は苦い顔をした。現時空間の基準航法では障害物との衝突は致命的だったからだ。





火星公転軌道内円に在った〈しきしま〉は長い航海となった。




      ◆




帰還の途中、〈しきしま〉では地球との交信を試みた。



「通信管制っ、QCI(Quantum Communication Interface:量子通信)は使えるかっ!?」、と艦長の林は通信管制員へ問うた。


「反応弱いっ!…艦長っ、量子、物理系通信は出力が落ちていますっ、原因は不明っ!」、管制員の顔には言いようのない焦りが表れていた。それを見た林はTXCIへ切り替えを命じた。しかし、管制員は通信を可能にするには地上側のTXCI稼働器を見つけ出さなければならず、時間が掛かると答えた。



「フゥ〜ッ…、構わんっ、探せっ!」、大きな溜め息を吐き、林は管制員に指示した。そんな時、ステーション指揮官の山口がCICへ駆け込んで来た。


「かっ、かっ、…艦長っ、たっ、大変な事が起きていますっ!!」、山口は肩で息をし、声を詰まらせながら発した。


「何事かっ!!」、と林は山口の様子を見て緊張した。


「艦体保守作業を行っていた者から報告っ…、レーダーと通信システムが…、確認をお願いしますっ!」、林は立ち上がり、山口の後を追ってCIC上部の展望操作室へ走った。そこで見た異様な光景に林は凍りついた…


「なっ!、なんだっ、これは………!?」、と林は叫んだ。


通信レーダーアンテナから結晶状の線が幾つも伸び、それは生き物のように更に伸びようとしている…


「こんな現象は初めてだっ!! 直ちに原因を調査せよっ!」、林は叫ぶように山口に命じた。山口はハッ!と言うと部屋を飛び出した。



山口は作業チームを編成し、直ちに艦外の調査活動を行った。その異様な物質は艦橋部の通信アンテナに集中しており、作業チームはその破片を採取し、艦内へ持ち帰った。その物質に関して慎重かつ精密に分析が行われた。物理系走査ではデーターを得られなかったが、TXスキャナーでその正体が判明した。化学分析室の報告を得た山口はCICへ走った。



「ハアッ、ハアッ……、艦長っ、アンテナから伸びた物質の正体が判明しましたっ!!」、山口は息を切らせながら報告した。


「何なんだっ!?」、と林はキャプテンシートから腰を浮かせた。


「驚かないで下さい、……アレは通信情報が析出した物ですっ!!」


「情報が析出っ!? 山口、もっと分かりやすく言えっ、意味が分からんっ!」、林はもう怒鳴っていた。


「情報が物質化したんですよっ!!」、山口はそう言い、林は空いた口の顎が外れて落ちそうになった。




  ………………………………




この頃、艦内でも異変が起きていた。



打撃群艦隊から収容された遺体や負傷者の傷が光りだした…


軽傷の者は怪我が治り、身体の部位を失った者は、その失われた部位が薄っすらと光を帯びた。


イングリットは自分の足を確かめると、失った足の形に薄い光が見えた。それは白く光る靄のようにも見えた。



「これは……、何が起こっているの?」 



彼女は理解出来ず、そう呟くのが精一杯だった。






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