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予言の紅星6 疾風の時  作者: 杵築しゅん
ロームズ医学大学開校

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カルート国の商業ギルド(3)

 イツキ達と商業ギルドから依頼されたと言っている男の口喧嘩を聞いていた人々は、「そうだ暴力はよくない!」とか「商業ギルドの横暴だ!」と叫び始めた。

 そして騒ぎを聞き付けた露店商人達の代表者だと名乗る、50代くらいの男性がやって来て間に割って入った。


「我々商人は、今回の手数料について事前に説明を受けていない。こんな一方的な通達を、商業ギルドが出すとは思えない。もしも本当にギルドの所長が出した通達だと言うのなら、所長が市場に来て説明するべきだ。我々はきちんとした説明を受け、納得しなければ手数料を取ることは出来ない」


グレーの髪の半分は白髪になっているが、かくしゃくとしたその男性は、市場の総意だと言ってギルドの職員改め、ギルドに依頼されたごろつきの男に向かって言い放った。

 当然商店主達も客も、「そうだ納得できない!」と声を上げる。

 しかしイツキの前に立つ男は怯むことなく、ニヤリと笑い顎で仲間に合図を送った。


「お前達!商業ギルドに逆らえば、明日から商売が出来なくなるぞ!客もきちんと手数料を払わなければ、商売の邪魔をした犯罪者として警備隊に突き出す!痛い目をみなければ分からないようだな」


商業ギルドに雇われたごろつき達のリーダーらしき男が、市場の代表者の前に立ち、悪人顔をより怖そうに歪めながら大声で脅す。

 そして人混みの中、剣を抜いた。いや、抜いてしまった。


「フン、警備隊を呼べと言ったのはこっちだよ。それに剣を抜いたな!お前の剣は誰に向けられた?俺たちか?それとも……此処に居る全ての商人と客に対してか!」


シルバ皇太子は怒っていた。予定通りの発言だが、本気で怒って怒鳴った。当然従者であるシーペンスや側近達も、絶対に許さないという顔をして男を睨み付ける。

 この国の皇太子に対し剣を抜く……とれは如何なる理由があろうとも反逆罪だ。


 そこに、常識を知らない何処かのバカが、あろうことか禁止されている行為、馬車を市場内に乗り入れてやって来た。

 突然入ってきた馬車は、商業ギルド紋を付けていた。客達は迷惑そうに視線を向け、それが商業ギルドの馬車だと分かると、これで勝ったと思う者と、やっと来たかと思う者に分かれた。

 馬車は人垣の前で止まり、中から先程何処かへ行ってしまった荒事担当の男が、ニヤニヤしながら降りてきた。続いて降りてきたのは自称ギルドの所長である。


「お前達、私の市場で何をしている。勝手な行動は許さんぞ!」


自称ギルドの所長は、面倒ごとが起きている様子を見て部下である者達に合図をした。

 すると、人相の悪い男達10人あまりが、一斉に剣を抜き主であるギルドの所長を守るように陣形をとった。


「俺の市場?なんだそれ・・・頭がおかしいのかコイツ」(サバブ)


「此処は国王様の許可の元、国が運営する商業ギルドが管理している市場だ!俺のだと?冗談もここまでくると、笑っては済まされないな」


剣が得意なドブルクは、教会の離れが用意した荷車から、隠しておいた剣を取り出すと直ぐに抜刀しシルバ皇太子の前に立った。

 双方が剣を抜いたのを見て、客は慌てて後ろに下がっていく。


「この俺様はギルドの所長だ。その俺に剣を向けたな!お前の登録は抹消、そして多額の罰金を払わせた上で警備隊に突き出す。もちろん……生きていたらな」


ドブルクを殺す気満々のギルドの所長は、当然勝てる、いや、今こそ自分の力を、この場に居る全ての者に知らしめるチャンスだと思った。


 シルバ皇太子の従者と側近の3人は、戦っても良いのか問うようにイツキを見る。


「ここまでバカな詐欺師は初めて見た。市の中に馬車で乗り付けるバカ。言い掛かりをつけ剣で善人を殺そうとするバカ。そして、住民の味方である警備隊が、自分の言い分を信じてくれると思い込んでいるバカ。誰にケンカを売ったのかも分からないバカ。お前がここまでバカだと、詐欺団のボスだと思われる、偽の商業ギルドの会長は、とことんバカなんだな」


イツキは大きな声でゆっくりと、蔑むように1つずつ、バカだバカだと連呼しながら煽っていく。


「貴様!たかが子爵の分際で!」


所長は怒りで顔を歪めながらイツキを睨み付けた。



◇ ◇ ◇


 イツキ達が市場に到着した頃、市場から徒歩3分の所に在る警備隊の詰所には、2枚の通達文が届けられた。


**** 緊急通達 ****

 

 昨日、王都ヘサの上空及びカルート城に現れた、空飛ぶ最強魔獣ビッグバラディスは、ブルーノア教会の聖獣様である。

 その聖獣様を操りヘサを訪問されたのは、レガート国ロームズ領の、ロームズ辺境伯様である。

 聖獣様は人を襲わないが、善良なカルート国民やレガート国民に危害を加えたり、勝手に戦争を仕掛けて来た場合、神の許しを得て威嚇することがある。

 以後、教会が所有する聖獣様をお見掛けしても、恐れる必要はない。

 また、神様が使わされた聖獣様を攻撃したり、危害を加えようとする者は、反逆者として厳しく処罰する。

 また、カルート国とともに病院建設をしてくださるロームズ辺境伯様は、レガート王に次ぐ国賓とする。 


カルート国王 ラグバス・カルート・ダヤ  皇太子 シルバ・カルート・ルダ


**** 1099年1月1日 ****


「おお、やっぱり噂は本当だったんだ。去年の戦争で我々を救ってくださったのは、ロームズ辺境伯様なんだ。教会の聖獣……もう1度見てみたい」


警備隊の詰所に居た20代の隊員は、朝から町中で噂されている聖獣のことで頭を悩ませていた。それは、確認にやって来る住民達に、それが真実であるのかどうかを答えられなかったからである。


「俺は遠くからだけど昨日聖獣様を見たんだ。ゆっくりと城の方に降りていくのをさ」


隊長らしき50代の隊員は、それを見た時は心臓が止まるほど驚いたが、召集がかからなかったので災害が出たり、大事にはなっていないのだろうと思っていたと語る。

 隊長は1枚の通達書を、直ぐに掲示板に貼るよう部下に指示を出した。

 早速、掲示板に張られた通達文を読もうと、住民達が集まってきて「やっぱりそうなんだ!」とか「ロームズ辺境伯様は我らの味方なんだ」と声が上がり始める。


 掲示板に人だかりができて騒いでいるところに、大声で叫びながら駆け込んでくる者がいた。


「た、大変だ!商業ギルドの職員をかたるゴロツキ達が、商人や住民に暴力を振るって暴れている。直ぐに来てくれ。人数が多いので本部からも人を呼んだ方がいい!」


血相を変えて詰所に飛び込んできたのは、フィリップの指示を受けた教会の離れを管理している男性だった。

 詰所の隊長は教会の離れの管理人の男性をよく知っていた。だから余程のことだろうと疑うこともなく、直ぐ本部に若い部下を向かわせ、自分も残りの部下を連れて、徒歩3分の市場に向かって急いでいた。




◇ ◇ ◇


 市場では、剣を抜いたゴロツキ10人と、丸腰のシルバ皇太子とイツキ、剣を抜いたフィリップと従者達が睨み合っていた。


「商人の分際で剣を所持しているとは……お前達は護衛だったのか?」


剣を扱えるとは思っていなかった自称ギルドの所長は、剣を構えた5人を見てチッと舌打ちし、抜かりなく殺せと手下に目配せをする。


「そうだよ、お前達のような悪人が居るから護衛は必要だろう。だが、此処でお前達を斬り捨てたら迷惑になる。剣で戦うなら広場の方がいいだろう」


剣が得意なドブルクは、余裕の表情でゴロツキ達に言う。


「商業ギルドの所長に向け剣を抜いたお前達は、どの道極刑に処される。権力とはそういうものだ。子爵とは言え商人登録をする程度の貧乏貴族の護衛、大したことなどない。痛い目に遭えば無礼な態度を反省するだろう」


どうやら貴族の出身でもなく、剣が得意とも言えない様子の所長は、側近達の腕を見くびっていた。そして、突然権力を握った者にありがちな、自分が凄く偉くなったという思い込みから、自分以上の地位や権力を持つ者が此処には居ないと驕っていた。

 確かに此処は庶民の市場であるが、貴族が来ない訳ではない。商人にしても大商人が来る所ではないが、絶対に来ない訳ではない。


「おいお前!今なんと言った。子爵である貴族に対する無礼、見過ごすわけにはいかない。直ぐに警備隊に突き出し、無礼な態度を反省させてやる!」


見るからに貴族様ですという服装の30代くらいの男が、ギルドの所長に向かって大声で叫びながら、突然参戦してきた。

 この男、名をセルトといい男爵家の次男で、ユリス商会という商会の主でもあった。

 ギルドの所長を名乗る男は再び舌打ちし、面倒臭い邪魔者が来た……という顔をした。


「そもそもおかしいだろう。突然手数料を取るなんて。そんなギルドの勝手が許されたら、我ら商人はやっていけない。商人の為に便宜を図り、商人の為に働くのが商業ギルドの職員だ。それから、お前は知らないようだから教えてやるが、子爵様に剣を向けたら完全に不敬罪だ。警備隊が来たら皆でコイツを引き渡そう!」


セルトは回りに居た商人達や買い物客に向かって叫ぶ。すると、抜かれた剣を見てビビっていた者達も、「そうだ不敬罪だ!」とか「お前は商業ギルドの職員じゃない!」と、あちらこちらから声が飛んだ。

 しかしギルドの所長は、不敬罪という言葉を聞いても怯まなかった。

 この男の上司である商業ギルドの会長は伯爵家の人間だった。子爵よりも伯爵の方が偉いことは知っていたので、たとえ揉めても会長が出てくれば問題ないと思っていた。

 事実、これまでも貴族と揉めたことがあったが、会長の力で全て揉み消してきた。


「また面倒なことだ……セルトさん、確かに貴方は貴族かもしれない。だが、私に逆らえばギルドの登録を取り消すことだって出来るんだぞ!今私は、今日登録したばかりの新人に、商業ギルドについて指導をしているところだ。文句があるならギルド本部に来て言えばいい」


所長は邪魔者であるセルトを排除しようと、この場で話を続行しないよう誘導する。 

 イツキはというと、突然割り込んできたセルトと所長のやり取りを、興味深そうに見学していた。

 自分達以外にも堂々と物申すセルトの登場に、予定が狂った感じになったシルバ皇太子達は一旦剣を納める。




「市場で暴れているのは誰だ!お前達は何故剣を抜いている!誰だ市場の中に馬車を入れたバカは!」


バタバタと走りながら、報せを受けた警備隊がやって来た。その数は5人と少ないが、新年早々騒ぎを起こした者達を見て同じように剣を抜き、回りの見学人達に下がるよう命令する。


「なんだと!私は商業ギルドの所長だ。その私に向かってバカとはなんだ!お前ごときが選ばれし私に向かって無礼だろ!」


自称ギルドの所長は貴族ではないようだが、間違いなくギラ新教の教えを受けているようだと、イツキとシルバ皇太子は顔を見合わせて頷いた。 


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

花粉症で集中力が・・・話が進みませんでした。次で商業ギルドの話は終わると思います。

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