剣を探そうー4 少女と対面
「勇者よ――貴様はマリアをどう思う?」
「わからない」
「勇者のくせに何とも思わんのか?」
「聞いた話じゃ実験体になってお前を体の内に閉じ込めたとか……」
「そうです、そのことについてどう思う?」
「わからない」
「ふむ……マリアの心の中に描いている勇者とはかけ離れている」
「それが現実というものだ」
俺は今神と会話している――なぜこんな事になったかって? それはこの部屋に入る所から思い出さないといけない。
セバスが一つの扉の前で立ち止まりこちらに振り返る。
「勇者様、ここでございます」
「ん……入るか」
俺はセバスの後ろにあるドアのドアノブを握り部屋へと入る。
そこには少女がベッドで寝ていた。
髪はショートで白い。本当に少女だ。
「この子が?」
「ええ、実験体――マリアと言われていた少女です。どうやら慈悲の神「エイル」を内に宿しています」
俺は少し近づきマリアなる少女の顔を覗き込む。その瞬間パチリと目が開き俺の方へと瞳孔が向けられる。そして――
「汝が勇者か? あの失態は笑えたな」
「暴走の事か? それなら俺もびっくりだよ。つうかお前慈悲の神「エイル」か?」
「その通りです。私はエイル。マリアの内に宿った神です」
「ふむ――お前は俺の敵か?」
「それはマリアが望まない。ただ――」
エイルは俺をじっと見つめる。
「マリアに危害が加えるなら汝も我の敵です」
「ふむ。肝に銘じておくよ」
ふー、あっぶねー。殺そうとセバスが言った時に乗っておかなくてよかったわ。
「ところで……勇者よ」
「なんだ?」
「勇者よ――貴様はマリアをどう思う?」
「わからない」
「勇者のくせに何とも思わんのか?」
「聞いた話じゃ実験体になってお前を体の内に閉じ込めたとか……」
「そうです、そのことについてどう思う?」
「わからない」
「ふむ……マリアの心の中に描いている勇者とはかけ離れている」
「それが現実というものだ」
マリアという少女は俺の事をどう言い聞かされたのか。どうせ冒険譚とか聞かされているのだろう。その時代の俺であったならこの神も俺がちゃんとした勇者だと認めたかもしれないが今の堕落した俺じゃなぁ……。
俺はふぅとため息をつきながらベッドのそばにある椅子に腰かける。
少女――マリアがベッドから起き上がり俺の対面にある椅子に腰かける。
「それでなのだが――勇者よ。この「マリア」と婚姻せぬか?」
「は? 何言ってんだ?」
「そのままの意味だが?」
「なんでマリアと俺が結婚せねばならんのだ」
「私はこの子「マリア」の幸せを願っている」
「うむ……それで?」
「この子は勇者と冒険しお姫様のように勇者と結婚することを望んでおる」
「それは子供の空想だろう?」
「だが、それを叶えるのが我が望み」
「だからっていきなり冒険すっ飛ばして幼女と結婚しろとかどんだけ横暴な神なんだよ」
「ふむ……少し焦りすぎたか……」
俺はふぅと呆れた溜息を吐く。
「それよりここで生活するのか? 俺にマリアの世話をさせる気か?」
「そうなるな」
「……ただでやれってのか?」
「暴走状態の勇者を封印するのは骨が折れた。その代償じゃ」
ビッと指を俺に向けて言い放つ。
そう言われると返す言葉もない。
「あまり贅沢はさせれないぞ?」
「よい。この子のことは任せる」
「必要な時はエイルの力を借りてもいいか?」
「せめて様くらいはつけなさい人間」
「わかったよエイル様。それで? 力は貸してくれるのか?」
「マリアが関わることなら少しくらいは……だがあまり期待されても困る」
「少しは力を貸してくれるのか。ありがたい」
「それではマリアに意識を変えるぞ」
「ん……」
少女が目を閉じ再び開ける。
「ここは……勇者様!!」
少女がかけよってきて抱き着く。
「ええと……マリアだっけ? 体は大丈夫か?」
「ん~特に何ともないです」
俺の腹へと顔をうずめてグリグリしてくる小動物がフェリス以外に増えたなと実感する。それにしても神を宿して体が平気なのはなんでなのか……この子の素質だろうか? 実験体とか言ってたし。
「これからは俺がお前を養うわけだが……何かできることはあるか?」
「私は魔人とのハーフだから勇者様の役に立てます!!」
「ふむふむ……まぁ冒険行くときには誘うよ。今日はもう休め。それに俺のことは「ゆーくん」でいいぞ」
「ゆーくん? わかった! そう呼ぶね!」
「うむ、まだ体が癒えてないと思うから今日はこのまま休むように!」
「はいです!」
トタトタとベッドへ戻る少女。
それを見送り俺は部屋を後にする。
自分の部屋にセバスと戻り椅子へと腰掛ける。
フェリスはベッドでまだ本を読んでいる。
「どうでござったか?」
「ああ、マリアのことか? まぁ養うことになった」
「そうでござるか」
セバスが紅茶を淹れてくれる。おれはそれを啜りながら――
「まぁ悪い子ではなかった」
「ふむ」
そんなことを言っているとドアをコンと一回ノックされる。
はて? もう会うような人物はいないはず。まーちゃんならノックなしに入るだろうし誰だろうか。
「開いてますよ」
「失礼する」
扉を開けたのはローブで見えにくいが青白く光っているスケルトンのジェンキンスだった。




