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世界のために戦った勇者と魔王は転移した世界ではのんびりと暮らしたい!  作者: 月影之命
第六章 ゴブリン、神獣、そして……魔人の子?
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神獣ー3

 神獣を連れてゴブリン村に帰る道中、神獣はウキウキとしながら俺は自分の行動が本当に正しかったのか少し後悔の念を抱きながら歩いていた。

 俺は後ろを振り返る事なく尋ねる。


「神獣はなんて名前なんだ?」

「名前?」

「そういえば聞いてませんでしたね」

「名前……か、ううむ」

「どうした?」


 俺とリスティは不思議がり神獣の顔を見る。


「名前か……そういえば無いな」

「ほぉ、なら名前を決めないといけないな」

「それなら私に任せて!」


 突然割り込んでくるまーちゃんが目を輝かせながら考え込む。

 きっととてつもなく簡素な名前だろう。


「シャーク・スネイクなんてどう?」

「おお、なんだか格好いいな」

「シャークはどこから来たんだよ。ここは陸上だぞ? (さめ)の出る余地はないだろ」

「それならギガンティック・スネイクは?」

「たしかに大きい蛇だが安直すぎないか?」

「わがままね! クレイジー・スネークなんてどう?」

「確かに頭のねじがまーちゃん並みに三本程取れてるからいい名前かもしれんな」

「なんですって!」


 まーちゃんが俺に掴みかかってくるのをほどきながら、


「やめろよ! 事実だろ?」

「それを言うならゆーくんだって頭のねじ五本くらいぶっ飛んでるじゃない!」

「まぁ……否定はしない」

「ところで神獣の名前を……」


 リスティの言葉に我に返り名前を考える。


「……シロなんてどうなん?」

「フェリス……ペットじゃないんだぞ?」

「気に入った! この美しい体の色を名前にするとは中々にやりおるわ、この小童。なにより短いのがいい!」

「いや、今のお前褐色の肌じゃん、全然白くないよ?」

「ああいえばこういう! ダメな人間の典型的な例だな! お前は!」

「指摘されて逆切れするなよ……」


 神獣の名前を決めた所で一つ確認する。


「ちょっと勇者免許見せてくれるか?」

「ん? まぁよいが」


 渡された勇者免許を見て……やはり名前の所には「神獣」としか書かれていない。

 俺はふぅとため息をつき勇者免許を返す。

 俺の時も名前が「勇者」だったのだから当然か。




 ゴブリン達の住む遺跡へと帰ってきた俺達はグーラーに出迎えられる。


「それで……あの神獣はどうだったんで?」

「その事なんだが……連れてきちゃいました」

「なんだって! なに考えてんだあんたは!」

「まぁ落ち着けよ、暴れたりしないから」

「ほ、本当ですかい?」

「ああ、仲間になったと言っていい」

「神獣が……仲間?」


 ゴクリと唾を飲む音がグーラーから聞こえてくる。


「一応紹介しとくよ。この褐色の肌の女が神獣のシロだ」

「ハハッあの時捕食し損ねたゴブリンの生き残りか」

「ひぃ」

「おい、あまり脅すなよ」

「酒が欲しいな、でないとまた暴れちゃうかもしれないな」

「わ、わかりました。村の酒を全部差し上げますのでどうかもうゴブリンを殺さないで下さい!」

「「ひゃっほう!」」


 喜びで飛び跳ねるシロとまーちゃん。


「すまんな」

「いやぁ……本当にもう散々ですよ、なんで連れて来たんですか……」

「一応報告に来ただけだ。仕方ないだろ?」

「それはそうですが……ここでは暴れないで下さいよ?」

「わかってるって」


 グーラーの先導についていき遺跡の奥のゴブリンの村までやってきた。

 そしてグーラーの家に入り椅子に座りながら今後の事について相談する。


「こっちとしては村の復興の間はオークの巣を利用してほしいかな、そうすればクエスト内容「ゴブリン討伐」なんてものはしなくて済むし」

「それが一番手っ取り早いですかね。俺が街に行ったとしても門前払いされそうですし……」

「そうだな、人間ならとにかくゴブリンだとな……」


 グーラーの顔が暗くなる。


「なぁグーラー、お前戦争に興味はないか?」

「なに?」

「今度ファルス王国で戦争があるらしいんだ。それに参加しないか?」

「冗談じゃない、人間のゴタゴタに巻き込まれるなんて嫌に決まっている。それに村の復興や仲間の捜索をしないといけないからな」

「ふむ……戦力は多いほどいいんだが、理由が理由だから仕方ないか」

「すまねぇな、力を貸せなくて」

「いや、無理を言っているのはこっちだ。でももし来れるようなら来てほしい」

「ああ、もし行けるなら援軍として行くよ、今回の礼もしないといけないからな」


 俺は腰にぶら下げてある袋から金貨を片手で握りそれをグーラーへと渡す。


「これで必要な物資も少しは買えるだろう」

「な……あんた……いいやつだな、なにからなにまですまねぇ」

「酒代として受け取ってくれ」

「ああ、ありがてぇ」

「そういえばここの酒は上物だから街でも売れると思うぞ?」

「本当か?」

「ああ、酒飲みのまーちゃんのお墨付きだからな」

「わかった。酒を製造して街で売る事にするよ」

「それじゃ、そろそろ帰るか……」

「見送りくらいさせてくれよ」

「ああ、もちろんだ」


 そう言って外に出ると酒瓶を両脇に五本づつ抱えて満面の笑みを浮かべるまーちゃんとシロの姿があった。

 こいつらはどこまで意地汚いのか……。


「おーい、そろそろ帰るぞ」

「ゆーくんも持って! まだこの酒屋にはいっぱい酒があるわ! 私とシロだけじゃ持てないの!」

「姿を変えれば口の中に含むこともできようがその場合ここを破壊せんともかぎらんのじゃ」

「ここの酒はいずれ冒険者組合に並ぶことになるからそれくらいで我慢しとけ」

「どういう事! いつ並ぶの!」

「グーラーにここの酒を街に売ってもらえるように言っといた」

「さすがゆーくん! 今日の所はこれ位で勘弁してあげるわ!」


 酒屋のゴブリンが涙目になっており少し不憫にも感じながら早々にこの場を去る。

 遺跡の入り口まで来たところでグーラーと別れの挨拶をする。


「達者でな、グーラー」

「ああ、そのうち村にも来てくれよ! きっと前よりいい村にしてみせるからな!」

「おう、いつか行くよ。それと戦争の件も考えといてくれよな」

「ああ、わかってるって。ところであんたの名前を聞いちゃいなかったな」

「ん……そうだったか。俺の名前は……「ゆーくん」でいいよ」

「ゆーくんさんか、また会おうな!」

「「さん」はいらないぞ」

「ゆーくんか、覚えたぞ」

「それじゃ俺達は街に帰るわ」


 俺達は街への帰路へとつく。

 数十歩程歩き、ふと後ろを振り返るとゴブリン達が勢ぞろいしこちらにむけてお辞儀をしていた。

 俺の後ろにいる酒瓶を両脇に抱えて笑顔を絶やさないまーちゃんとシロなんかよりも、よっぽど礼儀正しく人情深いゴブリン達の見送りを受けながら俺達は冒険者組合へと歩を進める。




 冒険者組合に着くや否やまーちゃんはシロをつれて先に屋敷へ帰り酒を置いてくると言いだし、止める間もなく颯爽と姿を消した。


「やれやれだな」

「やれやれですね」

「疲れたのん」


 ふぅとため息交じりに受付嬢の所へと歩いて行く。

 受付嬢がこちらを見つけ満面の笑顔になり身を乗り出してくる。


「どうでした? 討伐できましたか?」

「いや……それがな……」


 俺は一から説明した。

 ゴブリンには知性があり勇者免許も持っていた事、五人組の冒険者が神獣に腕試しを行いその結果ゴブリンの村に被害が出た事、仕方なく神獣を仲間にしゴブリン達には遺跡を立ち退いてもらった事、その他色々補足しながら説明をした。


「た、大変でしたね……」

「全くだ。勇者免許を持っている者は殺せないしな」

「ですがさすがは勇者様、丸く収めるなんて普通の人にはできませんよ!」

「丸く収めた結果、神獣……シロって名前なんだけど、そいつの食費や雑費、小遣いまで俺がやらないといけなくなった訳だ……冒険者組合で持ってくれるとか……ない?」

「ないですね、申し訳ありませんけど……」

「ですよねー」


 俺は渋々勇者免許を受付嬢に手渡す。


「お預かりします」

「頼む」


 勇者免許を水晶に入れ今日の成果を確認する。


「はい、終わりました」

「それで? 報酬はいくらだったんだ?」

「今回の報酬は三十金貨ですね」


 言いながら受付嬢が勇者免許と革袋をドスリと受付に置く。


「あれだけがんばって三十か……」

「ですが人の役に立っているんですよ。今回は話のわかるゴブリンでしたのでよかったですが……それでも退去させてくれたのはこちらとしてはありがたいです」

「それにしても五人組の冒険者が気になるな、なにか知らないか?」

「うーん……こちらではわかりかねますね……」

「ふむ……知らないか、どこかで情報を集めるか……」

「そういえば、神獣の住んでいた所の遺跡には入ってないんですか?」

「遺跡?」

「はい、遺跡はあるのはわかってたんですが神獣が守っているとされてて誰も入れなかったんですよ」

「そんな遺跡があったのか……」

「はい、中にはまだお宝とかあるかもですよ?」

「なに! それは聞き捨てならないな! 明日にでも行ってみるか!」

「気をつけてくださいね、罠とかあるかもしれませんし……」

「おうよ」


 俺は受付嬢と会話を終えてまーちゃん達が待つテーブルへと駆けていく。

 すでに食事を始めている中に入りウェイトレスを呼ぶ。

 注文しつつ遺跡の事を話すと、


「お宝! 行きましょう!」


 真っ先に話に食いついたのはまーちゃんではなくリスティだった。


「お前は金に困る立場じゃないだろ?」

「そ、それでも遺跡探索なんて冒険者らしくていいじゃありませんか!」

「お、おう……まーちゃんはどう思う?」


 リンゴ酒を煽りながら一生懸命コカ肉にがっついているまーちゃんは腕をと口を止め、


「ほんはのひょうひなひは」

「飲み込んでから喋れ」


 すぐさま口の中のコカ肉をリンゴ酒でゴクリと胃に落とし仕込む。


「そんなの興味ないわ」


 あれ? こういう話に一番興味ありそうなのはまーちゃんなのになんで?


「まーちゃんの事だから「すぐ行こう」とか言うと思ったんだが……」

「そんな遺跡もうとっくに散策されてるわよ、きっと」

「いや、シロがいて冒険者が近づけなかったらしいから散策はされては無いと思うが……」

「人間は狡猾よ、きっとシロの目を盗んでもうすでに散策されてるに違いないわ」

「それも一理あるな……どうなんだ? シロ」

「わしにはわからん! そんな遺跡の事なんぞ! それよりもこの肉美味いな! 酒も美味い! これはなんていうんだ?」

「コカ肉だ、ついでに酒はリンゴ酒だ」

「ほっほー、街に来てよかったわい!」


 シロはそのままコカ肉にかぶりつく。


「まぁ明日遺跡に行ってみるぞ」

「嫌よ! 面倒くさい」

「遺跡で俺が死んだら誰かさんも死ぬんだけどな」

「ぐ……卑怯よ!」

「仕方ないだろ? 心臓入れ替えてるんだから。俺を死ぬ気で守れよ」

「それをいうなら私を死ぬ気で守りなさいよ」

「守ってるだろ? サラマンダーの時だってお前が食われてた所を助けただろ」

「ぐ……食べられる前に倒しなさいよ!」

「無茶言うなよ……とにかく明日は遺跡探索な」

「……仕方ないわね」


 まーちゃんが渋々了解した所で俺もリンゴ酒を飲み始める。

 明日は遺跡探索だ。

 どうか宝がまだ残っていますように――

 そう願いながらコカ肉を口に含み今日の疲れをリンゴ酒で洗い流すように飲み干す。


「リンゴ酒追加で―」

「私も!」

「わしもじゃ!」


 この時はまだ遺跡で待ち受ける存在に俺達は気にも留めなかった。

 まさかあんな物が遺跡に眠っているなんて思ってもみなかったからだ。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

よろしければブクマや最新話の一番下にある評価をしてもらえると原動力になります!

感想も受付中です!(これも最新話の一番下から書けます)

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