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第128話 封鎖する理由

十三環騎士団ラスト・サークルへ直接問い合わせたい?」


書庫へ戻ってきたリゼットの父は、机の上の古い報告書を見た。


「はい」


リゼットが答える。


「この記録にある封鎖区域について、今も立ち入りが制限されているのか知りたいの」


公爵は報告書を手に取る。


「目的は?」


レオンが口を開いた。


「当時使われた測定設備が残っているか確認したいです」


第0研究室。

世界秩序院オルド・ムンディ

十三環騎士団ラスト・サークル


それぞれに似た管理形式が残っている。


だが、その説明まですべて話す必要はない。


今確認したいのは、現物が残っているかどうかだった。


公爵はしばらく考えたあと、報告書を机へ戻した。


「問い合わせること自体はできる。ただし、返答が得られるとは限らない」


「十分よ」


リゼットが答えた。


その日のうちに、正式な照会が出された。


返事が届いたのは数日後だった。


レオンとリゼットは再び書庫へ呼ばれた。


机の上には、短い文書が置かれている。


「来たの?」


「ああ」


公爵が文書を2人へ向ける。


内容は簡潔だった。


記録にある区域は、現在も管理対象。


一般の立ち入りは認められていない。


理由は、過去の災害そのものではなかった。


現地では現在も魔力状態の定期確認が続けられており、安全が完全に保証できない。


「まだ異常があるってこと?」


リゼットが眉を寄せる。


「そこまでは書かれていない」


レオンは文章を読み直す。


異常が続いているとは書いていない。


危険だとも断定していない。


ただ、安全を保証できないため管理を続けている。


そこを混同してはいけない。


さらに読み進める。


当時設置された設備についても回答があった。


一部は撤去済み。


一部は更新されている。


そして、現地に残る設備が存在するかどうかについては、個別の位置や状態を公開していない。


リゼットが文書から顔を上げた。


「やっぱり教えてくれないのね」


「でも、全部断ってるわけじゃない」


レオンが指を置く。


照会の最後。


学生による現地立ち入りは認められない。


その代わり、過去に外部へ提出された災害対応記録については、正式な手続きを通せば確認可能。


「記録なら見せる?」


「そうみたいだ」


少なくとも、何も答えない組織ではなかった。


危険区域への立ち入りを止める理由も書かれている。


現地の安全確認を続けているというなら、人を入れない判断にも筋は通る。


リゼットが椅子へ座る。


「思ってたより普通の返事ね」


「何を期待してたんだよ」


「もっと怪しい感じで全部拒否されるとか?」


「それなら逆に分かりやすい」


レオンはもう一度文書を見る。


十三環騎士団ラスト・サークルは、これまで記録で見た通りだった。


危険な場所へ入り。

人を避難させ。

その後も封鎖区域を管理する。


少なくとも、今回の返答だけを見れば。


人を遠ざけることにも理由がある。


だが。


「気になる?」


リゼットが聞く。


「ああ」


現物の位置や状態は公開しない。


それ自体も、危険区域なら不自然ではない。


問題は、確認できる情報と確認できない情報の境界だった。


世界秩序院オルド・ムンディも、全部を公開してるわけじゃない」


十三環騎士団ラスト・サークルも同じ?」


「同じとは限らない」


役割が違う。


理由も違うかもしれない。


それでも、どちらも世界規模の情報を持ち、その一部だけが外へ出ている。


レオンは、閲覧可能だと書かれた災害対応記録へ視線を戻した。


現物が見られないなら、まず見られるものを見る。


ただし今度は、記録の内容だけではない。


「何を見るの?」


リゼットが尋ねる。


「出された記録と、こっちに残ってる記録」


「比べるの?」


「ああ」


アルヴァ家に残された古い報告書。


そして、十三環騎士団ラスト・サークルが外部へ正式に提出した記録。


同じ災害について、両方が残っているなら。


消えたもの。

残ったもの。

変わっていないもの。


それを確認できる。


リゼットは少しだけ表情を引き締めた。


「また記録の比較に戻るのね」


「今度は違う」


レオンは答えた。


これまでは、別々の場所に残った歴史を比べていた。


今度比べるのは。


同じ出来事について、異なる場所に残された2つの記録だった。

最近中だるみ。

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