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序
強い風が、ぶ厚い雲を浚ってゆく。
倒壊したビルの亀裂から、瓦礫がガラガラと音を立てて水に落ちる。
そのビルの屋上には二人の影。
月連ゆかりとカグラ・アシュリィ・ワズワースだ。
二人は俯き黙ったまま、背中を向かい合わせている。
そしてまた風が吹き――遠くの空で、鳥が鳴いた。
「もう行くのね、カグラ?」
ゆかりがぽつりと言った。
「ああ……」
カグラは静かに答えた。
「ちゃんと戻って来なさいよ?」
「わかってるよ」
「まったく、こういう時にかける言葉って、案外思い浮かばないものね……」
「言葉はいらない、だろ?」
「最後になるかもしれないのに……」
「約束は守るよ」
「必ずよ?」
「ああ、必ず……。それじゃ、行ってくる!」
「行ってらっしゃい」
顔を上げたカグラは、ゆっくりと歩き出す。
諸々の咎、罪と罰を背負って――。
次回、『第零話 邂逅』! お楽しみに!
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