後悔は変貌し希望へと成る
「フィクター、ドラゴンになった気分はどう?」
私の目の前には、鉄っぽいような色のドラゴンが居る。まぁ、フィクターなんだけどね。黒竜ムアである私の血によってドラゴンになったのに、同じ黒竜になる訳じゃないみたい。人と竜の奇妙な関係性とか言うらしいけど、本当に不思議だね。
「思ったほど、違和感は無いな」
「えぇー、順応性高すぎだよ」
私だって初めて人の姿になった時は困惑したんだよ? そういえば、フィクターがドラゴンになってから結構時間経ってたのかな、その辺の判断基準って、脳が竜化の影響を受け始めてるかどうかって事みたい。詳しい事はギアとか、メアの方が知ってると思う。
「ムアと同じ黒竜になる訳じゃないのか」
あ、フィクターも私と同じこと考えてた。どの竜になっても気にしないんだけどね、白竜になったらちょっとだけ気にするかもしれないけど。なったことは今考えても仕方ないよね、そんな事よりも、私は言いたいことがあるんだ。
「ねぇ、フィクター。私の事はムアじゃなくて、ライアって呼んで」
「急にどうしたんだ?」
「黒竜ムアは、きっと次の世界でも誕生するけど。ムア・ライアは、私だけなんだ」
この世界が滅びた後、私の魂は中立の管理者、フォルフルゴートの所に行って、次の世界が誕生するまで保護される。それから、新しい世界が完成したら、私の魂だったものは、新しい黒竜ムアになる。もちろん、新しい黒竜ムアは私じゃ無いし、私の記憶も無いけれど。
「それなら、ライアは、次の世界でも黒竜になるのか」
「そうだよ。私達、ドラゴンの魂はそうやって巡ってきたんだ」
ギアも、ロアも、メアやキア、あのムカつくリアだって、世界が滅ぶと同時に魂が回収されて、世界の誕生と共に、その魂を使って新しいドラゴンが生まれる。人の魂とは別に、ドラゴンの魂はそういう流れで巡ってるんだ。どんな流れって言っても、私はこの世界と一緒に居なくなるんだから、何でも良いんだけどね。
「それなら、俺の魂はどうなるんだ?」
「フィクターはドラゴンになったけど、元は人間だったから、要素として分解された後〈零の映写機希構〉に魂は保存されるはず」
生命力はエンシェントが、行動力はイニシエンが、精神力はメビウスがそれぞれ司っていて、それらの要素を引きはがされて、残った純粋な魂を〈零の映写機希構〉が回収してるらしい。その後の事は聞いたことも無いけど、多分、新しい世界が出来たら、三要素を付加して、新しい人間として誕生させるんじゃないかな。私もそうなんだけど、分解された後は、居ない存在になってしまう。なんか、寂しいね。
「世界は、永遠に続くのか」
「そうだよ。希望の世界は、終わらない事を希望だとしたみたい」
どれだけ終わらないんだとしても、私も、フィクターも、終わってしまうのに、何が希望なんだろう。何も知らなければ、何も考えずに終われたのかななんて、今も微かに思ってるけど、だけど、なんて言ったら良いのかな。解ってたとしても私は、同じ道を辿ると思うんだ。
「そうか……。ライア、一つ頼んでも良いか?」
「時間はあまりないと思うけど?」
なんとなく解る。世界が崩れ始めてる事。フィクターもドラゴンになったんだから、感じ取ってると思うんだけど、私に何を頼みたいんだろう。このまま、出来る限りフィクターと一緒に居たいんだけど。
「時間なら、いくらでもあるだろ?」
「んー? 私にはよく解らないよ」
フィクターはどうしちゃったんだろ。時間はもう、何時間も無いと思うのに、時間がいくらでもあるのは〈零の映写機希構〉だけで、私達にある訳じゃないよ。
「もし、世界が転生し続けて、お前が黒竜ムアでは無く、ムア・ライアとして目覚めた時。俺を見つけて欲しい」
「そんなの……」
そんなの、バラバラになったパズルを、空中から落として同じ形になるのを待つようなものだよ。いくら無限に世界が転生して、無限にムアが誕生して、その内私みたいなのが生まれたとしても、私の記憶は無いから探す事は出来ないし、フィクターを探すことが出来ても、居ないんだよ?
「そういう事に、してくれないか」
うん。解ったよ。フィクターの気持ちが。それなら、私は答えないとね。だから、永遠の中に、私達は希望を見出すことにしたんだ。
「ふふん。何言ってるの? 私は天才だから、次の世界でも簡単に見つけてあげる!」
「ありがとな、ライア」
世界は崩れ落ちていったけど、私の後悔は、変貌して、希望に成った。




