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後悔する絶望

「元気そうでよかったよー。俺、これでも心配してたんだぜ?」


「お前が心配する姿を想像できないな」


「ねぇ、フィクターがドラゴンになれば安全になると思うんだけど」


「ムア様、他人の事を言う前に、もう少し頭の密度を高める必要があるのではありませんか?」


 屋敷の中にはいつもの三人、フィクター、シャルサー、ムアともう一人、ウォーラ・ライトが遊びに来ていた。相変わらずマイペースであり、唐突に訪ねて来たのであった。


「フィクターも、シャルサーも、お前らってさ、結構毒舌だよな」


「そうそう! シャルサーは絶対に悪意ある!」


「私は事実を言っているだけですよ? 口ばかり大きな居候トカゲ様と、勝手に入り込む強引なお客様?」


 シャルサーのトゲトゲしい物言いに、ムアが噛みついていくという構図、今日はウォーラも混ざっているが、そんな日常的な風景に、フィクターは自然に笑みが浮かぶ。少々騒がしいと言えるけれど、今の所は平和であるという事でもある。


「ちょっと酷くない!? それじゃ私、なんかよく解らない化け物みたいじゃん!」


「やれやれ、主張ばかり大きな、と言う意味ですよ。それだから頭スカスカと言われてしまうのです」


「俺ってさ、こう見えても心は繊細なんだぜ?」


「では、図々しい繊細な方には、この場所は合わないかもしれませんね。早急にお帰り頂いてもよろしいのですよ?」


 このままでは言われっぱなしだと考えたムアは、フィクターに視線を向ける。どうにかやり返したいという事であるが、それに協力してくれるとは限らない。


「フィクター、シャルサーが頭スカスカって言うの! 私は天才なのにね!」


「そう思うのなら、面倒な事はしてくれるなよ」


「あいつってお前の弟なんだろ? 言葉遣いどうにか出来なかったのか?」


「言葉は丁寧じゃないか?」


 いつもの事ではあるが、フィクターは打倒シャルサーに協力してはくれないらしい。このままぐちぐち言われ続けるのが嫌だったムアは考える、そして、話題を変えてしまうという方法を思いついたらしい。


「そういえば! ウォーラは何しに来たの?」


「そうそう! 俺が何しに来たかだったよな!」


 ウォーラもこれ以上色々言われるのは嫌らしく、この作戦に乗ってくるが、流石にちょっと強引だったかも知れないと、ムアは少し思い始める。だからと言って、間違ったとは思わない。


「なんと言いますか、もう少し話術と言うものを会得するべきだと思いますね。私も話術に優れている訳ではありませんけれど」


 強引な話題変更に、シャルサーは苦笑いしている。話術がどうとか言っているが、ムアは聞いていないふりをした。どうせなら、このまま無理やり話題を変えてしまえば良い。


「そうなんだよねー、いったい何しに来たのかな?」


「前に能力についてさ、俺の知ってる情報を教えるって言っただろ? だから来たんだよ」


 その言葉に、シャルサーだけじゃなく、うとうとしていたフィクターも、視線をウォーラに向ける。そんな事あったっけ? と少しの間だけ思案に暮れるムアであったが、まあいいかとばかりに思考を放り投げる。


「約束を果たすのを、遅すぎると思わないのでしょうか?」


「お前が俺に、やたら当たり強かったのは、それが理由だったりするのか!?」


「私の秘密を話したのです。相応の情報はあるのでしょうね?」


「あっ! 思い出した!」


 シャルサーのその言葉で思い出す。能力についての情報を、ウォーラが教えてくれるはずであったのだ。それから色々ありすぎて忘れてたなーと考えていると、視線が集まり、ムアは笑ってごまかす事にした。


「ムア……忘れてたのか……」


「えーと、そう言う訳だからさ。フィクターとムアちゃん、南区にある俺の屋敷に来てくんない? あまり資料を持ち出したくないんだよね」


 という事で、南区のウォーラの屋敷にいく事になった。だが、シャルサーだけが何やら疑問に思ったらしく、三人を呼び止める。


「待ってください。フィクター様は兎も角、ムア様が一緒についていく必要はあるのですか? 寧ろ、能力というものに対しては、私が行くべきと思うのですが」


 もっともである。何しろ、現状こちら側に居る能力を持っている人はシャルサーだけなのだから、一緒に来た方が良いはずである。ただ、ウォーラは苦虫を嚙み潰したような表情をしている、それほどまでに嫌なのか。


「あー、うん。俺はドラゴンの権限にも興味があるから、ムアちゃんにも来てほしいんだよ。というか、お前に来て欲しくないの! どうせ色々文句言われるにきまってるからな!」


 とんでもない暴露であった。そこまで言われたシャルサーであったが、ただ苦笑いを浮かべている。その来て欲しくないという気持ちが解ってしまうムアは、ウォーラの味方をすることに決めた。


「ちゃんと私が記録しておくから、シャルサーは安心して待ってて」


「頭スポンジのムア様は、記憶力が良いのか悪いのか、どうにも判断がつかないので心配です。フィクター様、お願いします」


「解った」


 シャルサーの評価には納得がいかないものの、反論すればまた言い合いになると判断したムアは、口を閉じる事にした。そして、ウォーラの提案通りに、三人は南区に向かったのであった。



……



「あっ! 今日さ、俺って用事あったんだったわ。後で埋め合わせはするからさ、折角南区に来たんだ、観光していけよ。おっと、そろそろ行かないと!」

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