11話
十一話
01 日中。スギモト南店。
店内は広く綺麗。本の売り場とDVD等の売り場。
その他文具やファンシーグッズ。
江戸紫、本の整理中に客から声をかけられる。
客A「(メモを渡しながら)この本を探しているのですが。」
江戸紫「はい。コチラの棚にございます。」
案内する江戸紫の後姿を見る杉本。
02 夕暮れ。杉本書店
裏口、鍵を開ける江戸紫。中へ。
通路に笑い声が漏れている。ドアを開ける。
シャルロ、ブランシェアがレジ前。レジ中に杉本。
店出入り口は閉まっている。照明はレジ上のみ。
シャリは頭にかぼちゃの被り物。
シャリ「(江戸紫に駆け寄り)おかえりー。」
杉本「おかえり。お疲れ様でした。」
江戸紫「あ、はい。おかえりなさい。」
シャリ「ただいまー。」
江戸紫「(シャリの頭を撫でながら)アメリカ土産?」
シャリは被り物のまま何度か頷く。
江戸紫「(杉本に)どうでした?」
杉本「まあとりあえずオラ行きましょう。話はそこでね。」
03 夜 オラ店内
青山、江戸紫、東雲、桜井、杉本、シャルロ、ブランシェア食事中。
青山「こいつが接客?」
杉本「何をそんなに驚いてるのよ。」
青山「だってコイツが!コイツが?」
杉本「本屋の店員が接客しないでどうするの。」
桜井「当たり前の仕事してるだけたろ?」
青山「当たり前?当たり前だって?」
「シノ!奴の接客が当たり前なのか?」
東雲「え?何?知らない。聞いてなかった。」
ブラン「でもコイツ元々人見知りじゃないだろ。」
青山「いやいや。酷いって。」
ブラン「ただの面倒くさがりだよ。」
「近頃自覚して動くようになったけどな。」
江戸紫「お前達が動かないから仕方なくだよ。」
シャリ「おおうっ。聞き捨てなりませんな。我々がグータラだとでも?」
江戸紫「ぐーたらじゃん。」
シャリ「シャリとブランはおっちゃんに自立して欲しから」
「態々ぐーたらしておるのですぞ。」
ブラン「待て待て。一緒にするな。私のグータラに特に意味は無い。」
シャリ「なんですと?」
江戸紫「結局二人共グータラなのは事実じゃないか。」
04 オラ店内 各自食事中
江戸紫「それでこのお面以外何か収穫はありましたか。」
杉本「収穫って言われてもねぇ。」
「慌ただしくて行ったーっ見たーっ帰ったーっで終わった感じ。」
ブラン「でも見たーっがあるのか。」
杉本「それなりにね。見るつもりで行ったから。」
ブラン「おいオッサン。」
江戸紫「おっさん?」
ブラン「お前に足りないのはこーゆーとこだぞ。」
江戸紫「どーゆーとこ?」
シャリ「おっちゃんは、」
「行かねーっ見ねーっ外出たくねぇーっ。」
「(にっこりしながら)だもんね。」
05 夜 電車内。松田。台本を読んでいる。
駅に到着。慌てて台本を閉じる。車内から降りる。
中央通りを歩きオラへ。
裏口から制服を着た松田が出てくる。
皆のいる席へ。
全員「オラ。」
松田「いらっしゃいませ。」
青山「珊瑚ちゃんここのとこずっと遅番だよね。」
松田「ええ。昼間ちょっと忙しくなって。」
「しばらくシフト交代してもらっているの。」
桜井「お?いよいよデビューが決まったとか?」
青山「デビューならうちでしてるっつーの。」
松田はそのやりとりを聞いてニッコリして
松田「それじゃごゆっくり。」
と言って席を離れる。
ブラン「あーあ。」
青山「何だよ。」
ブラン「お前が余計な事言わなければ報告しただろうに。」
青山「何をだよ。」
ブラン「せっかくアカリがフってやったのになぁ。」
桜井「まったくだ。」
06 午前 映画館パラダイス。館内。
まだ明るい館内。江戸紫、ブランが座っている。
上映前の館内は子供達、その親で賑わっている。
江戸紫「さすが日曜日。」
ブラン「お前が日曜日に来ない理由が判ったよ。」
江戸紫「ところでシャリは?」
ブラン「木葉達んとこ行った。」
江戸紫「お前は行かないんだ。」
ブラン「行って欲しいか?」
江戸紫がブランを見るが一瞬寂しそうな目が見えただけで
館内の照明が落ちてブザーが鳴る。
ちょっと遠くに向かって
ブラン「シャリー戻れー。」
ちょっと遠くから
シャリ「はーい。」
館内のざわめきが徐々に収まる。
07 映画館パラダイス。
ロビーは映画終りの客が外へと。
シャリとブランは館内。
江戸紫は受付奥の事務所へ。
支配人と向かい合って座る。
支配人「渡米はまだ先なんだけど。」
「片付けやら事務処理でしばらくかかりそうなんだ。」
「それに更地にしないと土地が売れなくてね。」
江戸紫「取り壊し、ですか。」
支配人「耐震工事はしたけどさすがにもう古くてね。」
「今までよく頑張ってくれたよ。」
江戸紫「お手伝いできる事があれば言ってください。」
支配人「うん。実はそれで一つ頼みがある。」
江戸紫「なんでしょう。」
支配人「最期の上映作品を決めてほしい。」
江戸紫「最期?」
支配人「12月24日。クリスマスイブを最期の上映にしようと思っている。」
江戸紫「でも、よろしいのですか?そんな大事な日。」
支配人「上映する作品が決まったらフィルムの手配はする。」
08 正午近く オラ店内
松田と桜井が客として対面で座る。
松田「転勤先決まったの?」
桜井「本店。」
松田「凄いっ。栄転じゃない。なんて部署?」
桜井「企画営業なんとか?よく判らない。」
「部活とイベントと仕事を全部するとなるとそこしかないって。」
松田「全部やるんだ。」
桜井「ダメなら切ってくよ。サンゴこそどうなんだよ。」
松田「どうって?」
桜井「引越し先決まったのか?」
松田「まだ。」
桜井「躊躇してる原因は何。」
松田「別に躊躇してるわけじゃないよ。」
桜井「本格的に活動するのにもうちょっと動きやすいとこ行くんだろ?」
「バイトの口なんて他にだってあるんだから。」
厳しい口調に気付いて静かに続ける。
桜井「まぁ馴染んだトコ離れるのは怖いんだけどねー。」
桜井、グラスを持って水を飲もうとしてハッと
桜井「それとも、他に理由がある?」
09 オラ。江戸紫、シャリ、ブラン入店。
店員に案内され歩いていると桜井松田の席の前を通り、
桜井「あら御揃いで。」
ブラン「オラアミカ」
桜井が松田の隣に移り
桜井「ここ座りなさいよ。」
シャリ「お説教するの?」
桜井「されるような事したの?」
シャリ「逃げてっシャリに構わずおっちゃんは逃げてっ。」
江戸紫「なんでだ。」
シャリ「おっちゃんがアカリの秘密を知っているなんて言えないっ。」
桜井「秘密って何。」
シャリ「言えない。アカリが未だにパンダーZのぬいぐるみと一緒に寝ているとか言えないっ。」
桜井「なっなんでっ」
10 オラ店内
桜井、松田、江戸紫、シャルロ、ブラン食事中。
江戸紫「いつ頃の予定なの?」
松田「特にいつとは決めてないよ。」
江戸紫「桜井さんは?」
桜井「ワタシは4月から。」
シャリ「皆離れちゃうねー。」
ブラン「だな。」
桜井「さっきも話してたんだけどさ、
「一度落ち着いちゃうと環境替えるの怖いな。」
江戸紫「そうだねぇ。」
「生活のリズムを作り直したり」
「新しい人間関係築いたり。」
ブラン「え?」
江戸紫「えって?」
ブラン「お前らそーゆーの不安なの?」
江戸紫「不安と言うか面倒くさい。」
ブラン「お前はそうだろうな。」
「珊瑚の予定決まって無いってのも」
「不安だから決めかねているのか?」
松田「うん。そうだと思う。」
ブラン「なあ珊瑚、キツイ事言うから覚悟しろよ。」
「珊瑚の今の状況って、安定じゃなくて停滞なんだと思うぞ。」
松田「停滞?」
ブラン「前に進むチャンスが来たのに何を躊躇う。」
松田「そう、なんだけどね。」
ブラン「確かに距離が離れると次第に疎遠になる事もある。」
「でも人ってのはそうやって新しい出会いの機会を得ているんだ。」
俯いている松田を見て、ブランにっこりしながら
ブラン「とは言ってもコイツらはお前が何処にいようとトモダチのままだよ。」
11 夕方。杉本書店
杉本「みんな日曜日のパラダイス始めてだったの?」
ブラン「もう二度と行かない。」
江戸紫「行きたくても行けなくなるよ。」
杉本「ホントになくなっちゃうのねぇ。」
江戸紫「今まであった事が不思議でした。」
杉本「そりぁね。」
「まぁウチとしてはレンタルコーナーに流れてくる客が増える事を願うわ。」
ブラン「さすが大佐。いや逞しい。」
杉本「エドもそうするでしょう?」
江戸紫「僕は配信で。」
杉本「なんだと。」
ブラン「ココにはレンタル無いんだよな。」
杉本「その節は南店までおいでくださいませ。」
シャリ「どうして大佐んとこには置かないの?」
杉本「置くったって場所が無いよ。」
「本屋止めてレンタル店にしろって?」
シャリ「そうして。」
ブラン「近所に本屋さん無くなってもイイのか?」
シャリ「いやーっ」
杉本、そのシャリを見て微笑み、寂しそうな顔をする。
それを見ていた江戸紫。
12 オラ店内
松田以外が揃っている。松田は仕事中。
青山「朱莉も転勤なの?」
桜井「もって?」
青山「シノも転勤。」
桜井「それ知らない。何処へ?」
東雲「営業本部。」
桜井「栄転じゃない。」
東雲「柔道部の強化って言ってた。」
青山「朱莉は何処なんだよ。」
桜井「本店の企画なんたら」
青山「お前も栄転じゃねぇか。」
桜井「代理店絡みよ。」
ブラン「二人揃って栄転かー。」
シャリ「エイテンてなにさ。」
江戸紫「今よりイイとこに行くって事だよ。」
シャリ「今はヤなとこなの?」
江戸紫「そんな事はないよ。」
「今もイイけど、もっとイイとこ。」
シャリ「シャリもエイテンしたーい。」
ブラン「よっしゃ。私達もエイテンするか。」
シャリ「エイテン!エイテン!」
桜井「珊瑚も引っ越すって言ってたし急に慌しくなってきたな。」
青山「珊瑚ちゃん何処行くって?」
桜井「さあなぁ。」
江戸紫「事務所とかスタジオに近いとこだろ。」
青山「だからソレは何処なんだよ。」
桜井「まだ決まってないってよ。」
青山「朱莉とシノは4月に異動だよな?」
桜井「多分な。」
青山「珊瑚ちゃんが引っ越す前に、皆で何処か行くか。」
シャリ「うーみーっ」
ブラン「今は泳げないぞ。」
13 午前 図書館。江戸紫。
上の空。窓から外を眺める。
ノートにはタイムスケジュールらしきメモ。
映画のタイトルを並べたメモ。
14 駅前喫茶店
青山と江戸紫がカウンター席に並び座る。
江戸紫「告知頼むよ。」
青山「上映作品決まったの?」
江戸紫「それを相談しようかと。」
青山「お前に映画のアドバイスなんてできない。」
江戸紫「作品はピックアップしてあってさ。」
「相談したいってのはこれなんだよ。」
江戸紫、青山にノートの切れ端を渡す。
15 喫茶店裏口、青山郵便配達のバイクにまたがりメットを被る。
江戸紫はバイクを見送り、中央通りを歩く。
杉本書店。正面のシャッターは閉まっている。
江戸紫、裏口へ。
16 杉本書店
店内はブランとシャリが本を詠んでいる。
店内の照明は2つ。薄暗く、本棚には布がかけられている。
ラジオから曲が流れている。
江戸紫「お待たせ。」
ブラン「ん。もうちょっとで読み終わるから待て。」
江戸紫「いいよ。ゆっくりで。今日はコッチだから。」
ブラン「お。とうとう再開するのか。」
江戸紫「どうかな。店長まだなの?」
ブラン「まだ。」
シャリ「店長って誰?」
ブラン「大佐殿だ。」
シャリ納得して本に戻る。
17 杉本書店
江戸紫、帳簿をつけている。
過去の帳簿と現在の帳簿を比較。
数字を見ている。
ラジオからカーペンターズのプリーズミスターポストマンが流れる。
ブラン「もうそんな時間か。」
シャリ「大佐来ないねー。」
江戸紫「二人ともお腹空いたら駅前のコンビニ行って何か買ってきな。」
ブラン「こんな小さな子供にあんな遠くまで買い物行かせるつもりか?」
ラジオから青山の声。
青山「ここで残念なお知らせです。」
「この街唯一の映画館、パラダイスが11月末日にて閉館いたします。」
「しかし何と、このラジオをお聞きの皆さん。」
「12月24日の最終上映会に無料ご招待。」
「詳細は番組ホームページにて。」
ブラン「そうなんだ。」
江戸紫「うん。」
ブラン「で、何上映するか聞いてる?」
江戸紫「聞いてるっていうか」
シャリ「クリスマスイヤーーーーっ!」
江戸紫「何だ突然。」
18 頼代駅前 中央通り
クリスマスの雰囲気は少ない。
通りはハロウィンのように魔女を模した装飾。
19 ラジオスタジオ ブース内
青山「11月が終わります。」
「街は既にクリスマスの雰囲気に溢れている。」
「この街ってクリスマスになると魔女の色に染まる。」
「どうしてなのだろうって聞いて回ったら」
「この街に住む魔女が子供の頃に」
「ハロウィンになると「魔女とハロウィン関係ないから」と言いながら」
「街を破壊し暴れまわったらしい。」
「以来この街ではハロウィンイベントが基本禁止になりました。」
「そしてクリスマス。それまでは普通のクリスマス。」
「ある年、ある少年が披露したクリスマス劇。」
「イタリアの風習では魔女がプレゼントを配るのだと広め、」
「それからこの街ではクリスマスになると魔女で溢れるようになったとか。」
20 杉本書店
合流している杉本
江戸紫「(杉本に)青山の話って本当ですか?」
杉本「この街の魔女伝説は多いわよ。」
「私も母から聞いたときは信じられなかったけど。」
「私の通っていた高校に焦げた黒板があってね。」
「何年か前のバレンタインに魔女が燃やしたって。」
江戸紫「なんですそれ。」
ブラン「多分あのねーちゃんだな。」
シャリ「だねー。」
江戸紫「知り合い?」
ブラン「お前も会ったじゃんハロインで筋通しに行っただろ。」
江戸紫「筋って。」
21 ラジオスタジオ。青山がブース内
青山「パラダイスの最終上映会のスケジュールが決まりました。」
「第1部、午前10時から。家族揃って楽しめる映画です。」
「映画が終わったらお昼を食べて予約してあるケーキを買って帰るのかな。」
「第2部、午後2時から。恋人たちに贈る映画。」
「映画の後は二人のクリスマスをお過ごしください。」
「第3部、午後4時30分から。クリスマスなのに1人な人と昔の映画が好きな人。」
「寒い冬の夜、少しでも暖かくなりますように。」
「タイトルは当日確認してください。」
「ただ残念ながら応募多数により抽選となってしまいました。」
「当選者の発表は招待券の発送にかえさせていただきますのでご了承ください。」
22 杉本書店
杉本、シャリ、ブランが本を読んでいる。
杉本「さて、ラジオ終わったしオラ行ってご飯食べるか。」
シャリ、ブラン立ち上がり本を片付ける。
シャリは大きく溜息をついて本を片付け凹みながら奥の部屋へ。
杉本「シャリちゃんどうしたのよ。」
ブラン「クリスマス嫌いなんだよ。」
杉本「そうなの?」
ブラン「そんなことより大佐。」
「この店、いつになったら再開させるんだ?」
杉本、黙ってブランを見つめて一呼吸。
杉本「再開は、しないわ。」
ブラン「だと思った。」
杉本、ブランに
杉本「はっきりしたらちゃんと話すわ。」
プラン店内をぐるりと見渡す。
プラン「時代の一言で片付けるのは惜しい店だな。」
23 夜 通りを歩く江戸紫、シャルロ、ブランシェア。
ブラン「街から映画館と本屋が消えるな。」
江戸紫「そうだな。僕も引っ越そうかな。」
三人の後ろ姿でフェードアウト




