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赤い瞳の銀の鳥   作者: アマメ ヒカリ
第六章 播種
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27. 揺れる季節

暖かくなってきました。






種は蒔かれた。




発芽には暗闇と圧力と、湿り気が要る。


そして、太陽の光の気配が要る。





環境は自発を促す。


暗闇の中で嗅ぐ、()の匂い。


それはきっと、(われ)を抱く腕だ。





胚乳は、芽吹くまでは凍った乳だ。




環境が種に発芽を許し、種は己に張り付いた計画に気付き、


種で居ることを諦める。




胚乳は、胚を抱く。



種の意識は胚に移り、


凍った乳は溶け始める。




絶望と引き換えにして、


命が形を得る。





ーこんな回りくどいシステムにしなくたって

よかったろうにー






種まきは今年も無事に終わった。


ダルシの丘は金茶色。


今は一面が草の色で覆われて見事だ。




金茶と若い草の色がずっと続いて、続いて、


その先は何があるのか


知っている者はごく僅かだった。




ご覧。




丘を取り巻く山々にも、芽吹きの季節がやって来たよ。


遠くから見れば、金に緑の粉ふりかけて揺れている。


萌出(もえいずる)というのだよ。





人の生きる中でも、こんなときがある。


満ちて溢れているのに、使い方がわからなくて


揺れてしまう時がある。




悩めるのは当人ばかり。


それはいつの世も変わらないようだ。


豊穣の預かり手も、萌出(もえいずる)時を迎えて


己を持て余しているようだね。





時を得た。


それが事実。


揺れてしまえ。


おおいに揺れて、己が姿を頭に刻み付けよ。





ユーマよ。


豊穣の預かり手よ、光の化身ルウ・ラァの友よ。


君は生きている。


その(あかし)が揺れている。


君の豊穣も揺れている。


だから、それは人に委ねられた。




運んでおくれ、豊穣を。




遥か先に輪が閉じる。


円環の閉じる先に必要なのだ。


待っている者がいる。



今は揺れているけれど、それこそが人の証。


揺れながら己を探りなさい。



ユーマ。

人の子。




待っている人が、いるよ。




実は大人も悩みます。

鳥の目で自分を見ると解決すらしなくても良いとわかります。

抽象度を上げるという言い方をします。

解決よりは状況把握を最優先に今日も生きる!

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