懐疑
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
主任が、アカネに声で応じる。
「現在、可視化ができるほど、強力なプロテクトが展開されています」
ハルトが、ウーゼ開発研究主任を補って続けた。
「それに、ビームや物理攻撃も持ち合わせているので、橘さんが近くにいると、かなり危険です」
アカネは、左腕を下に腕を組みながら問い続ける。
「そう。5号機は?」
サクラは首肯してから、正常な心理グラフと各パイロットの呼吸や脈拍を計測できるパルスを見つめる。
「はい。損傷は深くありませんが、このままだと、パイロットの負担がかかり過ぎます。ですが、しかし、いい知らせもあります。2号機パイロット心理グラフは、先ほどより落ち着きました。現在、ゼロコンマ六です」
アカネは、ハルトに艶のある茶色い瞳を流す。
「ところで、山田室長? カエデは何をしているの? まるで、彼女を護っているようだけど」
「はい。頭上から落下した看板から、彼女と一色パイロットを護っています」
「なるほど。林主任、フェイトの判断は?」
サクラが、自身のパーソナルコンピュータに映っている一基だけのビックデータコンピューター、フェイトの統計を一瞥する。
「橘スズさんと、一色パイロットが危険区域に存在していると判断しています」
「そう。まずは、彼女の保護を最優先に行って」
「わかりました。しかし、一色パイロットの対応はどうされますか?」
「それは、カエデ——」
アカネは、ワインレッド色の口紅を塗った唇を噛んで歪めた。彼女自身、カエデを名前で呼び捨てたことに、悔しかったのだ。
そして、彼女は言い直すと、左腕を下にして腕組みをする。
「いえ、2号機パイロットとともに三人とも回収。一色パイロットは回収後、担当ウーゼに搭乗させて」
ウーゼ開発研究主任は、スピーカーを通した声で答える。
「承知しました。1号機(改2)は、準備万端です」
再び、2号機の内部スピーカーから、凛とした声が聞こえる。
『彼の出番はないわ。彼自身がそう言っているのよ』
このときのスピーカーは、ウーゼ外からでも聞こえる外部スピーカーではない、指令室専用回線のスピーカー、つまり、指令室に直接通じる専用の電話機器に似ている。
『では、頼んだわよ。室長さん』
ハルトは少し眉をひそめると、メインディスプレイを凝視する。どうせ、橘スズが目的なんだろうな。汐波司令は何考えてんだか……。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




