〝エンジェル〟
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
人型の敵である〝エンジェル〟。
制服姿の彼女は、目を細めて片手を額に当てると、遠くを見る仕草をする。
「あれが、私たちを殺すための兵器……まったく、人間は面白いことを考えるのね。ウーゼ、ということはそこにいるのよね?」
5号機の巨躯が、車や兵装ビルを蹴りあげ、粉々に破壊をするのもいとわずに、両手で握ったナイフを大きく上に振り上げる。
だが、金属音をたて、ナイフが透明な防壁に阻まれると、エンジェルが付けている、緑色のストライプが入ったネクタイが突風でなびいた。
ネクタイをほどいたエンジェルは、鬱陶しそうに舌打ちをする。ネクタイはその突風に巻き上げられ、すぐに目に見えなくなった。
「効かないのに……君はわかってるよね?」
呆れているようなのか、まるで侮蔑をするような声を込め、不敵な笑みを浮かべた。
「ところで……あの力を使わないの?」
5号機コックピットに着座するカエデは、意識のほぼ全てを、エンジェルの急所とされるコアの破壊に集中させていた。
エンジェルが、5号機に照準を定めるまねをすると、矢を放つ弓の音に似たような、ヒュウッという音が鳴った。そして、遅れて、ビームの攻撃が来る。
5号機は右に避けたあと、足元の黒い影のようなものを伸ばすが、細長い柄の黒い槍を地面に突き立てられた。突き立てられた槍の先にあった影は、海からアスファルトに投げ出された魚のようにびちびちと激しく動いている。
その隙を突かれ、5号機は後方に転がった。それは轟音をたててビルを破壊し、コックピットの彼女を、より負傷させるだけだった。
操縦桿をつかんでいる彼女の負傷した両腕から、ごぼこぼと、薄赤く泡が立つ。
苦痛に顔を歪めた彼女は、一瞬、まぶたを閉じた。
「くっ……! 影だけではダメだったのね」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




