国際軍会議室2
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
「まあ、幸い、ほかのパイロットの資料もここにそろっていますし。ちょうどいいでしょう」
しかし、彼は、女性に顔を向け、拳を机上に乗せた。
「は? 情報も過去の経歴も抹消されてる、信用ならないパイロットばかりですよね?」
彼に淡々と返事を返したのは、電話越しのアカネだった。
『情報漏洩防止の為です。ほかに何か?』
「ふん。本当はこんなことで、時間を潰してる暇はないんですがね」
『では、役に立たない攻撃武器の改良に精を注いではいかがでしょう?』
だが、彼は言い返せずに、椅子にさらに深く座る。
軍人の女性は、ティーカップを、ソーサーから音もたてずに持ち上げて上品に口をつけた。そのあと、彼女は話を続ける。
「ですが、彼女は、極秘中の極秘の事件に関わった、まだ十三歳の中学生です。それに……」
軍人の青年は、ところどころ黒塗りで引かれた重要資料を、長机の上に、乱雑にバサッと投げ出した。
しかし、軍服の女性は、柳眉を鼻の付け根に寄せた。
「少尉。態度がよろしくありませんよ。せっかくの会議なんですから、ご自身の行動は重々留意してください」
彼女は、それを目で追う。
青年は、大げさに肩をすくめて反応した。どうやら彼は、面倒事に巻き込まれたくないようだ。
「申し訳ありません。日代大尉。でも、俺は、山田室長より賢くないんですから」
「いえ。そのようなことは」
女性は緩やかに首を横に振ると、青年が先ほど、机上に投げ出した資料に右手の人差し指を置く。
彼女は、紅玉色の口紅が塗られた唇を、三日月にする。
「では、彼女たちも〝例外〟と言えるのでしょうか?」
彼女が指を動かして、資料を前にずらす。その仕草は、整えられたきれいな爪から少し優雅に見える。
軍人の青年は嘆息する。
「厄介者の寄せ集めが……。あんなのが国を護るだと?」
彼は腕を組み、また不快そうにした。
「ばかだろ」
カチャリ、と静かに、ティーカップがソーサーから離される。
女性は、ティーカップに入れてある紅茶をたしなんでいた。
机上に、三名のパイロットの氏名が書かれた資料とともに、ある資料も続けて置かれる。
軍服の女性は、固定電話越しのアカネに真剣に尋ねた。
「〝真白ユキ〟それに〝一色アオ〟そして、〝久遠カエデ〟。あなたには必要なんですよね?」
電話越しのアカネの声は、すぐに聞こえる。
『ええ。そうです』
女性はまた続けて、一葉の報告書を机上に置く。
『コアへのダイレクトダイブの報告書』
——なお、当事者橘スズ・十は、精神が大変不安定な為、正式な調書は行わなかった——
アカネのほうから、固定電話は切られることになった。
『では、計画の概要は、また追って連絡します』
ぶつり、と固定電話の音声は切れる。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




