たとえ何度目の死であろうと
ユニが語ったのは、マリアの意識が暗転した後の出来事。
マリアを始めとした【白の羽衣】の救助依頼を受注。
ユニとサレスを含めた10人と1匹での迷宮攻略中に裏人格のレイズと遭遇、成り行きで行動をともにし最奥へ到達。
天使像の正体は蠕蚯蚓竜の亡骸に受肉した主天使、目的はマリアを吸収する事による位階の上昇と支配者への叛逆。
戦闘に参加していた者たちが次々と命を散らす中、エルギエルに喰われた筈のライトが意識を乗っ取り、肉体を支配。
ユニ、レイズ、サレス以外を全滅させた後、覚醒を遂げたサレスに半ば追い詰められるもライトに聖騎士の力が発現。
逆転は不可能と思われたが、ユニの介入によって〝覚醒の上書き〟が行われ、サレスの新たな覚醒型技能により逆転。
そして、30分ほど前にサレスが7手でライトを殺害。
マリアの救助に成功し、今に至る──。
「──まぁ、こんな感じかな。 どう? 呑み込めた?」
「……えぇ、おおよそは」
そんな壮絶な一部始終を簡潔に説明し終えた後も全く表情を崩さぬまま珈琲を差し出してきたユニに、どうにかこうにか全てを咀嚼し理解したマリアは、その珈琲を飲み干して。
「とにかく、まずは蘇生から行います。 ライト──……以外の4人の細胞が一片でも残っていれば問題ないのですけど」
「この中から見つけられる? 良ければ手伝おうか」
「いえ、それには及びません。 私にはこれがありますから」
いずれにせよ神官として、そして【輪廻する聖女】としてライトは無理でも他の仲間たちは蘇らせなければと立ち上がり、『これだけは手放さない』と決意していたSランクの弓型迷宮宝具を手に、矢を番えぬまま射出態勢に移行する。
その弓の名は、〝アルテミス〟。
矢がなければ何もできない通常の弓と違い、使用者の技能や魔術、或いはMPそのものを矢の形にして放つ迷宮宝具。
それに加えて必中効果をも併せ持つその弓を構えたマリアは、【神秘術:回復】と【神秘術:蘇生】の効果を秘めた矢を4本生成し、キリキリと音を立てつつ振り絞ってから。
「──主よ、かの者たちに新たな生を与えたもう」
そう呟いた後、4方向に光輝く矢を放つ。
流石にライトを蘇らせるほどお人好しではないらしい。
……まぁ、それはともかく。
それらはマリアが知る由もない4人の仲間の肉片を目掛けて飛んでいき、肉体の再生と魂の蘇生を同時に施し始める。
4人はすでに幾度かの死を経験しているが、関係ない。
たとえ何度目の死であろう細胞の一片でもあれば蘇生させられる、それこそ【輪廻する聖女】が最後の希望たる所以。
「──流石に目覚めるまでは、ある程度の時を要する事になるでしょうね。 あまりに時間が経ち過ぎていますから……」
そんなマリアの【神秘術:蘇生】であっても流石に死亡してから時間が経過すればするほど蘇生するまでの期間は長くなるらしく、ひとまずやるべき事は終えたとばかりに肩の力を抜くのかと思ったのも束の間、彼女は視線をユニへ向け。
「……ところで、【最強の最弱職】。 話は変わりますが」
「ん?」
「先ほどから気になっていた事が2つありまして──」
「──貴女の背後の天使と、足元の死神は何者ですか?」
「……へぇ」
ユニの背後と足元の天使と少年を指し、そう問うた。




