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その心の内は

 アンディと一緒に眠った翌朝、葵は見張りのために四時頃起きたが、前日早めに眠ったおかげか頭はスッキリしていた。寝袋から体を起こし、うーんと伸びをしたところで聞き覚えのある声が葵の耳元に落ちる。


「やっほ、葵。元気にしてる?」


 笑い声を含んだその声に葵は勢いよく振り向く。そこにはスオウが立っていた。


「なんでここに…!?」


 葵がそれだけを口にするのと同時に、葵の前の見張り担当だった芹也の声が飛んだ。


「大沢さん!離れて!」


 慌ててまだ眠っているアンディを抱き上げてスオウから距離を取る。アンディはねぼけまなこで、「なんだあ?」とむにゃむにゃ言っている。


「みんな起きて!スオウがいる!」


 葵が大声で叫んだ。その声にラークもアルスもフリージアも飛び起きる。さっと臨戦体制を整えることのできる三人は、さすがに戦い慣れている。


「スオウ様…?どうして…!」


 フリージアが困惑しながら、弓を構えながら疑問を口にする。

 全員芹也を中心にスオウとは距離を保っている。


 そんな五人を見て、スオウはケラケラと笑い出した。


「やだなあ、別に取って食おうっていうんじゃないよ。君たちが頑張ってるみたいだから激励に来たんじゃない。」


 臨戦態勢の五人に対し、手をひらひらと振って見せながらスオウは笑顔さえみせる。葵は思った。余裕なのだ、と。前回のときのように圧倒することができると思っている。だからスオウはこんなに余裕なのだと。そう思った葵の喉の奥がひりつくように痛んだ。なんのためにー、そう言おうとした瞬間、隣にいた芹也が鋭い声を上げた。


「ふざけるな!」


 それは葵が見てきた、いつも冷静で感情を強く表に出さない芹也の全く知らない一面だった。芹也はスオウだけを見つめ、眉を顰めて肩で息をしている。大きな爆発しそうな怒りをどうにか押さえ込もうとするように。


「お前のせいで、俺は…!」


 芹也を制したのはラークだった。スッと芹也の前に腕を出し、その様子にハッと気がついた様子の芹也に目配せする。芹也はまだ何か言いたそうだったが、ラークのその様子を見て耐えたようだった。


「芹也。耐えてくれてありがとう。」


 ラークがそう言うと、芹也は気まずそうに目を伏せた。そしてその様子を見て、ラークはスオウに向き直る。


「スオウ様。激励とはどういう意味ですか?俺にはよくわからないが、あなたはこの世界の神様なのに、消えたがっているように見える。」


 え、と葵の口から小さな声が漏れる。アルスもフリージアも同じように驚いた表情でラークを見、その次にスオウを見つめる。芹也も驚きの表情でスオウを見つめている。

 当のスオウは、笑みを崩さずに答える。


「やだなあ、あんまり敏い子は僕は嫌いなんだよ。」


 そう言うと更に笑みを深くする。


「お前、一体何を考えてるんだ…?」


 葵の隣で芹也の困惑した声が落ちてくる。


「消えたいだけなら、勝手に消えればいいだろう!どうして俺達を巻き込んだ!」

「芹也!落ち着け!」


 いきりたつ芹也を、アルスが芹也の両肩を掴んでおさえこむ。


「どうしてって。君だったら自分の世界の神様を倒したいと思うかい?」


 スオウは芹也に向かって微笑んで見せる。葵は困惑して言葉も出ない。


「私達がスオウ様を倒そうなんて、思いもよらないでしょうね。」


 ぽつりとフリージアが呟いた。その言葉に、スオウは更に笑みを深くする。


「そういうことだよ。君も賢いねえ!」


 そういうとスオウはくるりと背を向け、ひらひらと手を振る。


「元気そうな君達を見れてよかったよ!このままここにいたら刺し違えてでも殺されそうだからね!僕は一旦身を隠すことにするよ!」


 その言葉だけ残し、次の瞬間にはスオウは目の前から影も形もなくなっていた。

 葵は呆然としながら、先程までスオウがいたはずの場所を見つめ続けたのだった。

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