ケース⑥:山寺沙耶の場合
圧倒的な強さを誇る。それは勝者に必須な事である。
イカレていると分からせる冷静な精神力。勝つ上で必須な事である。
ここまで、各々。雌であり、戦士であり、イカレ者が揃った連中。
侵略をしに来た者達は皆、ここの雌の強さを知り、恐怖を抱いて散っていく。
ブチャアァッ
「ひぃっ」
ガリガリッ
「なーに、ビビッてやがる。女、喰いに来たとか言っておいてさぁ。食われるのは嫌いなのかい?」
明らかに言葉の用法を間違えている。
だが、それを体現できる事の方が間違えと言えるであろう。
強さという点ならば、山本灯と並び。精神力の異常性は村木を凌ぐ。虐待という言葉とはなんと生温い、生物同士の戯れであるかと分からせるほど、
「ぺっ、マズイ。あんたの味は……」
”死屍姫”と評される超人、山寺沙耶の戦闘は惨い。
小柄な彼女の頬には、大きな火傷の痕がある。それらを含めた傷の数々が、修羅場を潜ってきた証拠。
生物の一部を握力で引き千切り、その部位を食い尽くす。
ゾンビと形容されるその戦闘能力は、人間の惨さなんて可愛げあるものとさせる。
「ふ、ふふっ」
な、なんだこの星の雌達は。雄にひれ伏さない。それどころか、こーも単純に噛み付くような雌ばかりなのか。優秀な種であるが、粗暴。
釣り合わない。割に合わない。そんな言葉を並べる。
「うあああぁぁぁっ!」
雄は原始的な本能を呼び起こした。背を向けて、この雌の怪物から逃走を図る。
これまで積み上げてきた雄としての地位、力、全てを投げ出して、素っ裸になってでも逃げる事を優先した。沙耶に恐怖を抱いていた。
「僕から逃げるのか。速いけど。鯉川ほどじゃないし、」
沙耶はすぅ~~っと、
「音速ほどでもない……」
息を吸い込んだ。
体は膨れ上がって、喉に力が込められる。
「わああああぁぁぁぁっっ!!!」
口から吐き出した音波の衝撃は、地面を揺らし、周囲にある建物の窓ガラスの大半を打ち破る。標的だけでなく、その周囲にいる者達をも巻き込んで、動きを封じる。
5秒ほどあれば、すぐに沙耶は相手をひっ捕らえる。
「あんただけは相手が悪かったね」
「ひっ」
ここにいたという事実を消し去ろうとするほどの、悪夢が現実とさせられる。侵略者として来た者達にとっては、想定すらした事のない死。
グチャアァッ
優れた技術を持っていようと、誰しも恐れられる。
フォークで刺し、運ばれて、歯で千切られ、胃酸で溶かされるという悪夢。豚が死んでいることで、舌に乗せる肉になんの罪悪感を抱かないとされている優しさを、思い知る。
生きている意識があるまま、口で切断されて弾ける肉体。蕩けていく肉体。
「ぶはっ。ま、マズイ……。珍しいものでも食っちゃ良くないね」
山寺沙耶、完勝&完食。




