サーラの部屋 2
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エルデが宣言通り台所の扉を押さえている中、ロイが折り畳んだ簡易ベッド、サーラが毛布と枕を持って台所からサーラの部屋へと運ぶ。
「そういえば、さっき・・・ロイさん笑ってましたよね。どうして、ですか?」
「えっ、そ、そそれはっ。」
サーラがベッドを運んでいるロイに話しかけてきた。しかし、エルデに黙っててと言われてしまった手前、ロイがサーラに話せる訳がない。
「ご、ごめん、サーラちゃん。これはエルデ様が良いと言うまで俺の口からは話せないんだ。」
「そう・・・でしたか。なら、いいです。」
意外にもサーラはあっさり引き下がった。エルデに止められているのならロイに聞いても無駄だと分かったのだろうか。
増築したとはいえ、こじんまりとした魔法屋だ。台所から寝室まではあっという間である。
「それはそうとサーラちゃん。ベッドはどの辺に置こうか。」
「ええと・・・見えない所、がいいです。」
「見えない所かぁ。寝てるのが見られない場所ってなるとここか?」
ロイは入り口から向かって右側の壁にベッドを置いた。ロイがベッドを広げ終わったところで、サーラが枕と毛布をベッドの上に置く。
「さすがに衝立が無いと丸見えだよねぇ。ここの扉が来るまで書斎の衝立は我慢しようか。ロイ、台所に置いてある衝立もここの入り口に持って来ておいて。」
ベッドを設置した様子を見たエルデがロイに声をかけた。
「畏まりました。サーラちゃん、ここに衝立を持って来る前に他の物も運んでしまおうか。教えてくれれば俺が運んであげるよ。」
「ああっ!」
何か思い出したようなサーラは慌てて台所へと走って行ってしまった。
「サーラちゃん、そんなに慌てなくても・・・。」
もちろん、そんなロイの声は部屋から姿を消したサーラに聞こえるはずもなかった。
「随分慌てた様子でサーラが台所へ戻って行ったようだけど、サーラに何か変なことでも言ったの?」
いつの間にかサーラの部屋の入口に来ていたエルデが気怠そうにロイに話しかけた。
「いいえ。俺は他の物も良かったら運んであげるよ、としか言っておりませんが。」
「他の物、ねぇ・・・。それなら俺達男性に見られたく無い物でも隠しに行ったかな?」
「所謂下着とか寝衣とかですか?ああ、寝衣は先程見てしまいましたが。」
「あー・・・ロイ、もうその話は蒸し返さないでおこうか。」
「は、はいっ。失礼致しました。」
エルデに良い笑顔でそう言われてしまっては、コクコクと頷くことしかできないロイであった。
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パタパタと足音を立てて慌てて台所へ戻ったサーラは、入り口から一直線に簡易ベッドの置いてあった所の隣に積んだままになっている自分の着替えの入った箱へと駆け寄った。
「ああ~良かったっ・・・もふさま。」
サーラは荷物の一番上に置いてある鞄の中に、もふ様をきちんとしまってあったことを確認してほっとした。
サーラがここで寝起きをするようになってまだ一週間もたっていないが、もふ様を寝る前に鞄から出して枕元に置いて眠り、目が覚めて身支度を終えると身支度の一貫として鞄の中にもふ様をしまうのが、いつの間にかサーラの習慣となっていたようだ。
「っ・・・そうだ、着替えを・・・。」
サーラは箱の中に入ったままの着替えを取り出し、鞄のすぐ下に置いてあった寝衣を中の方へ押し込んだ。これで一番上にあるのは皆の目に触れる普段着となった。サーラは鞄を抱え、自分の部屋へと戻った。
「ロイさん、鞄は持ってきました。あとの荷物は・・・。」
「それ位、俺がこれから運んであげるからすぐに終わるよ。エルデ様、衝立を運ぶ時は手伝って下さいね。」
「ああ。ロイがサーラの荷物を運び終わったら呼んでくれ。」
「畏まりました。」
そう言うとエルデは書斎に戻って行った。
「サーラちゃん、あっという間に運んじゃうから待っててね!」
「は、はあ・・・。」
なぜか上機嫌なロイにそう言われ、部屋で立っている間にサーラの荷物が全て運び込まれた。
「サーラちゃん、思ったよりも荷物が無かったから驚いたよ。後でエルデ様にもう少し身の回りの物を揃えて貰おうな。」
「は、はい。」
サーラには取り急ぎ揃えて貰った身の回りの物が多いのか少ないのかがよく分からず、曖昧に返事をしておいた。
「それじゃ、俺はエルデ様を呼んで衝立を運んで来るよ。サーラちゃんはここで待ってて。」
「は、はい・・・。」
ロイは部屋から出ると大きなノック音が聞こえた。ロイは書斎へ入って行った様だ。
しばらくすると、エルデとロイが二人掛かりで衝立を運んできた。ロイが先頭で後ろ向きで廊下を歩く後ろをエルデが支えている。扉のないサーラの部屋の中に衝立を運び込むと、一旦衝立を立てた状態で二人は手を離した。
「ふう・・・これ、意外と重かったんですね。」
ロイが両手を握ったり開いたりして、手の感覚を取り戻していた。
「あーすまん。俺が重量魔法を切るの忘れてた。」
「はぁ~エルデ様、勘弁して下さいよ。それで見た目よりもずっしりと重かったんですね。」
「重力魔法を切れば俺一人でも十分運べるからな。」
「・・・じゃなきゃ、サーラちゃんが来た日に書斎から台所までエルデ様お一人でこれを動かせる訳ないですよね。」
「ああ。転倒防止も兼ねて重力魔法をかけてるからな。」
「そうでしたか・・・エルデ様、それでこの衝立はどの辺に置きましょうか。」
「そうだな―――入り口からサーラのベッドが見えないようにできるといいかな。よっ、と。」
エルデは衝立の重力魔法を解除すると自分一人で衝立を入り口の近くに移動させた。
「エルデ様、入り口に近過ぎても部屋に入る時に不便ですよね。」
「俺達は兎も角、サーラが通れれば十分なんじゃないか。サーラ、ちょっとここを通れるか確かめてみて。」
「は、はいっ。」
サーラは一旦部屋の外に出ると、衝立の右側から部屋の中に入ってきた。
「大丈夫そうだね。一応反対側も通ってもらってもいいかな?」
「分かりました。」
今度は衝立の左側を通ってサーラが入ってきた。
「サーラ、どこかぶつかったりはしなかった?」
「ええ、特には。」
「あとは入り口からの見え方を確認すればいいですね。サーラちゃん、ちょっとベッドに腰掛けててくれる?俺達が入り口から部屋の中を見た時にサーラちゃんが見えないように衝立の位置を調節したら終わりかな。」
「えっと・・・こうですか?」
サーラは首を傾げながらベッドの縁に腰掛けた。
「うん。俺の視線にサーラちゃんが入ってないから大丈夫、っと。エルデ様、エルデ様もここから確認して下さいませ。」
「俺がここに立った時、サーラがここから見えなければいいんだろう?」
「ええ。」
「とりあえずサーラの姿は見えないな。」
「分かりました。サーラちゃん、悪いけど今度はベッドに横になってくれる?頭の向きはどちらでもいいよ。」
「は、はいっ。」
ポンポンっという音が聞こえた後、サーラから応えがあった。
「これで・・・いいですか?」
「えーと、俺からは見えないから問題ないっと・・・エルデ様は如何ですか?」
「ああ。俺の方からもサーラの姿は見えないから大丈夫だろう。」
「なら、衝立はこの場所で決定ということですね。」
「ああ、重力魔法を掛けて倒れないようにしておこう。」
エルデが衝立の下部に触れながら重力魔法を掛けた。これで余程の事が無い限り衝立は倒れないだろう。
「この部屋の扉が完成する迄の一時凌ぎとしては問題ないだろう。」
「サーラちゃん、ありがとう。もう起きていい・・・」
と言いながら、衝立の右側から首だけを出して中を覗き込んだロイが固まった。
「おい、ロイ。大丈夫か?」
ロイの様子に違和感を感じたエルデは、ロイの後ろからサーラの部屋の中をひょいと覗き込んだ。
「えっ?・・・いや、あ、そ、その・・・サ、サーラ・・・すまない。」
「あ、あの・・・どうか・・・しましたか?」
サーラは首を傾げてきょとんとした顔をこちらに向けたままベッドに腰を掛け、靴を脱いだまま足をプラプラとさせていた。
理由は次回説明します…いうことでお楽しみに!
今回も最後までありがとうございました。




