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天然の治療師は今日も育成中  作者: 礼依ミズホ


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サーラの魔力検査 1

説明要素多目回です。

魔力検査の説明で一部表現を改め、内容を追記致しました。(2021/9/29)

 オウが兄からの手紙を持って帰って来たと念話で教えてくれた。オウの餌やり用の小皿にお駄賃替わりの小さい肉片を置いてやる。


「さっき研究所で同じの食べたばかりじゃがな。まぁお主がくれると言うなら貰っておくわい。」


オウには余計な一言を念話で言われたが、王都で入手できるフクロウの餌など限られているから、私が兄と同じ物を使っていても仕方がない。


 私は魔法屋に戻ったオウから手紙を受け取ると、書斎の執務机に手紙を置き、お茶を飲む準備をした。兄からの手紙を読みながらお茶を楽しむつもりなのだ。ちなみに今日は気分をすっきりさせるブレンドのお茶である。私はお茶を口に含み、ひとしきり香りと味を楽しんでから、兄からの手紙を読み始めた。


 「ええと、どれどれ・・・。」


私は手紙を読み進めて行き、最後の一行を見て固まった。



 ―――俺としたことが、サーラの魔力検査をするのをすっかり忘れていた。



 魔力検査とは、出身国を問わずエルヴァトラ王国内に住む全ての者を対象として行われる検査である。王都サーティスでは毎月一日、前月末までに十二歳を迎えた者が各地の役場に集められ、魔法の適性の有無を見極めることになっている。王都以外の他の都市でも魔力検査の実施方法は同じだが、魔力検査の日程は都市ごとに異なっている。王都の毎月一日を起点とし、月末までの間にエルヴァトラ王国内を一周するようにその順番に日にちが定められている。


 病気等の都合で本来検査をする日にちに魔力検査が受けられなかった場合は、翌月居住地で魔力検査を受けるのが通常である。しかし、魔力検査を受ける日程を遅らせたくない事情がある者もいるため、居住地以外の都市でも魔力検査を受けても良いことになっている。ただし、居住地以外の魔力検査を受けるための交通費や宿泊費といった費用は自分で負担しなければならない。このため、居住地以外に赴いて魔力検査を受ける者は、何かしら事情のある裕福な貴族や商人達といった一部の者達に限られている。


 先日魔法屋の増築に来てくれたモリスのように、成人してから魔法の適性が分かる場合も稀にあるが、魔法の適性の有無は大体十二歳になる前には判別できるようになっている。このため、魔力検査は魔法の力を持つ者が魔法の適性があることを再確認するためと、両親が魔法の適性を持っていないにも関わらず魔法の適性を持つ者―――ミリルのような『先祖返り』達―――を見い出すために行われているのである。


 エルヴァトラ王国は基本的に魔法の才能の有無で人を差別しないが、一部の部署では魔法の才能を持つ者が優遇される場合もある。騎士団に入れば魔法騎士、王宮勤めのエリートと言われる高位の文官への道も拓けて来る。このため魔力検査で魔法の適性を見出された者は、自身の将来の可能性を更に広げるためにも、王立魔法学校への入学を勧められるのだ。


 サーラを保護したのは三日だったから、王都の今月の魔力検査はもう終わっているしなぁ・・・。サーラは王国生まれの者ではなさそうだから、外国人扱いでいいのか?


 ちなみに外国人の魔力検査はどうしているかというと―――エルヴァトラ王国への入国を希望する外国人で、十二歳以上の者は入国時に必ず魔力検査を受けることになっている。魔力検査の結果はその場で必ず本人に知らせており、魔法の適性のある者に対しては国内での注意事項を聞き、その注意事項を遵守する旨を誓約する書類に署名して初めて入国できることになっている。頻繁に王国へ観光や商用で来る者達でも、モリスのように後天的に魔法の才能が身に着く場合もあるため、面倒ではあるが入国する度に魔力検査を行っているのである。


 魔力検査をここまでしつこく行う理由は、魔法の適性がある者が迂闊に魔道具に触ると本人が自覚することなく魔道具に魔力が流れてしまうことで魔道具が暴走することがあるからである。時折、王国民の誰もが自由に商いができる市場で、魔道具と知らずに魔道具を買った人物がそれと知らずに魔力を放出した状態でその魔道具に触れてしまい、魔道具が誤作動してしまうというトラブルが過去幾度となくあった。これは王国内で魔法の才能を受け継がなかった人物が、魔法の才能を持っていた先祖が使っていた魔道具をただのガラクタと誤解して市場等でただの日用品や雑貨として販売してしまったためであることが多い。


 魔道具自体、魔道具であることを隠すために日用品や装飾品といった雑貨として作られている物が多く、魔法の才能を持った者が注意して見ないと魔道具であることが分からないようにしてある場合が多い。これは優れた魔道具の作り手ほど、魔法の才能を持った他者が見ても魔道具であることを見破られないように作るからである。そして、この手の類の魔道具は大方自分の身を守るための物が多いから迂闊に作動すると性質が悪い。例えば護身用の魔道具にどのような物があるかというと、所持者が非常時に魔力を流すと周囲に麻痺毒を塗った針が飛び出たり、閃光や煙を発したりするものがある。所有者が身の危険から逃れるための時間稼ぎができるようにするためである。事情を知らない者が、うっかりこのような魔道具を作動させてしまった場合、怪我で済めばマシな方である。最悪の場合は、作動条件が自らの命となっている魔道具もあるのだ。


 以上の理由から、外国人が王国内で迂闊に魔力を放出した状態で辺りの物にうっかり触らないよう注意をしておく必要がある。しかし、魔道具について詳しく知らない者達は往々にして「自分は大丈夫だろう」と油断をすることが多い。勿論、入国時の注意を無視してそのような怪我をした場合、治療は王国内で受けることは可能だが、こちらの注意を無視した自己責任による怪我のため、その治療費は個人負担であることを忘れてはいけない。



 王都サーティスは魔獣が棲むファルドの森が近くにあることから、王族が住まう王城があるにも関わらず、行政よりもどちらかと言えば魔法の研究を主とした都市である。王国の中心部でありながら、目ぼしい観光名所は王城の尖塔と学校と学院と研究所くらいという残念な場所である。しかし、魔法の才能のあるなしに関わらず魔法を尊ぶエルヴァトラ国民は王都に尖塔と魔法の教育施設と研究機関があることで非常に満足している。それでは、王国の目ぼしい観光地はどこかと尋ねられれば、海沿いの港町であるオルトランドと国境の町であるエラルーシェと皆が口を揃えて答えるだろうが、話が横道に逸れそうなので今はその町の名前だけを挙げるだけにしておくことにしよう。


 王都で誰もが簡単に触れる場所に魔力を通して困るような魔道具が置いてあるのはせいぜい魔法屋(うちのみせ)位だ。しかしエルヴァトラ王国に何度も訪れたことのある者だと、珍しい土産物が欲しいと言って魔法屋を訪れる者がいるので注意が必要である。王都が国境から離れているとはいえ、大丈夫とは言っていられないのだ。 


 サーラを保護したのは先にも言った通り今月―――前朝まえあさの三日だったため、役場で行っている魔力検査は受けていない。本人の話からサーラ自身は外国人と思われるが確証はないので、まだ魔力検査はしておらず、来月魔力検査を受ける予定。と兄へ返事をしようと思ったが、この際だから簡易的に魔力検査ができるような魔道具を自分で作ってみることにした。魔力検査のできる魔道具が店にあれば、魔法屋の客が店に入る時にその魔道具に触って魔力検査をしてもらえばいい。客が本人が自覚無しに魔力を放出させている者だと分かれば、商品の魔道具をこちらが迂闊に触れさせないようにすればいいだけだ。



 役場や入国時の魔力検査では大理石でできている丸い球状の魔道具を二つ使っている。この二つは見た目が全く同じだが、用途が異なるために測定者から見て左側に青い皿、右側に赤い皿を置いて区別している。左側の青い皿の上に乗せる魔道具は、魔力を持った者が触れると光る魔道具である。右側の赤い皿の上に乗せる魔道具は、魔力を放出している者が触れると魔道具と触れた場所―――一般的には手が多いだろう―――が光る。魔力検査は魔力を持ち、かつその魔力を放出できる者が必ず立ち会うことになっている。もし誰かが皿の上の魔道具を置き間違えても立会人が確認すればいいだけの事で問題ない。


 魔法屋にも魔力検査用の魔道具を常備するのならば、王国で行っている魔力検査の魔道具と似たような外観の魔道具にしておけば、来店時の客に協力してもらいやすいだろう。だが、久々に自分で新しい魔道具を作るのだから、全く同じ性能の物ではつまらない。せっかくだから一工夫くらいはしてみようか。


 私は書斎から自分の寝室へ戻ると、作業着に着替えた。数日振りに作業着に袖を通すと、これから行う作業に心が躍り、気持ちに張りが出る。今日は午後からロイが魔法屋の店番で、ミリルがサーラと一緒に台所で夕食作りの担当だ。サーラはまだ魔法屋へ来たばかりだから、しばらくは店の仕事―――魔法屋の店番や作業場での作業―――はせずに、昼と夜の食事作りとその手伝いが主な仕事になるだろう。


 作業着に着替えた私は台所を抜けて作業場へ向かった。ミリルとサーラが楽しそうに夕食の支度をしている。サーラの手付きも前よりかは慣れてきたように見えた。ミリルとロイがサーラのことを交代で面倒を見てくれているから私としても有難い。


 作業場へ入った私は資材置き場から小ぶりな透明な水晶玉を二つ取り出すと、奥の作業台に向かった。

次回はエルデが魔道具を作ります。


ストックが心もとなくなってきているにもかかわらず、締め切り間際の他所様の企画に応募すべく、急遽短編を執筆中。何としても応募を完了させなければ!

この勢いで本作のストックも書き溜めて行きたいです。


今回も最後までありがとうございました。


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