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天然の治療師は今日も育成中  作者: 礼依ミズホ


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二日続きの食事会 1

登録ありがとうございます!

 俺はモリスに図面が完成したら店まで届けてもらうよう伝え、魔法屋の前で帰るモリスを見送った。モリスが御する荷馬車が遠ざかって行く。俺とロイが複製魔法で材料を複製したお蔭でモリスが持って来てくれた資材が思いの外、残ったなぁと去りつつある荷馬車の荷台を眺めながら思った。これだけ材料が残れば、資材にかかる費用も随分抑えられたな、と心が少し満たされた気分になった。


 俺もロイも魔力は無駄に多いし、魔力は何もしなくても時間が経つだけで回復する。先人達の数多の経験と試行錯誤から、魔力を連続して使う時は自分の魔力を極僅かでも残しておけば大丈夫であり、もし魔力を使い過ぎて魔力が枯渇したとしても、すぐに魔力ポーションを飲んで魔力を補えば問題ないことが分かっている。不思議なのは、魔法を使いながら魔力ポーションを飲んで魔力を補うと、その魔法が途切れてしまうことだ。この現象については未だ原因が分かっていないが、魔力ポーションで魔力を補うことで使用者の魔力の質が途中から変わってしまうためだろう、というのが昨今の通説である。


 魔力制御の極みとして、魔力を制御しながら操作するという魔力操作ができるようになる。学院では自身の魔力が非常に多く、かつ魔力操作がスムーズにできれば複製魔法が使えるようになる、とだけ教えている。それは魔法の才に長けた者を教え導く学院で教鞭を執る者達でも、複製魔法を使える者が非常に少なく、複製魔法自体を実際に見たことのある者自体が少ないためである。


 俺とロイが今日使った複製魔法は原料の読み取りに始まり、それを再現して全く同じ物を複製するまでが大きな一連の魔力操作になる。このため、この大きな一連の魔力操作には非常に多くの魔力が必要であり、魔力の少ない人物がこの複製魔法を使おうとすると、複製魔法に必要な魔力操作を終える前に己の魔力が尽きてしまうことが殆どである。俺は正直ロイが複製魔法をあれだけ使えるようになっているとは思わなかった。ロイも学院にいた時より随分腕を上げたな。俺も負けてはいられない。


 俺は店の前でしばし佇みながら今日増築した部分を眺めていた。



 「―――こんにちは、エルデさん。」



「あの・・・エルデさん?」



 ん・・・これはマシューの声か?ぼんやりと今日の作業を振り返っていて、マシューの声を聞き逃していたようだ。


「エルデさん、こんにちは。お食事を届けに参りましたが、いつも通りお店の裏からお持ちした方がよろしいですかね?」

「ああマシュー。ぼうっとしていて済まなかったね。いつも通り裏から台所まで持って行ってくれる?」

「畏まりました。それでは裏からお邪魔させて頂きますね。」


マシューは食事の入った大きな手提げ籠を持つと、店の裏口へ通じる横の小路へ入って行った。俺も中へ戻るとしよう。俺は店の入り口から中へ入り、店の戸締りをしてから台所へ向かった。マシューもそろそろ店の中へ来る頃だろう。


「ロイ、サーラ。マシューが配達に来たから準備を頼む。」

「はい。」

「わかりました。」


ロイが返事と共に裏口へ向かい、マシューを迎え入れてくれたようだ。


「マシューさん、何度も配達に来て下さってありがとうございます。こちらへどうぞ。」

「ありがとうございます。何度も注文をして下さる魔法屋さんは大事なお得意様ですからね。店も空いていてますから、マーサに任せて私が店を抜けて配達に行くのに丁度いい頃合いなんです。」


マシューがロイと話しながら食事の入った籠を持って台所へ入って来た。


「マシューさん、こんにちは。」


サーラがマシューに向かって挨拶した。サーラに声を掛けられてマシューがはっとした表情(かお)をした。


「ああ、こんにちは。ミリルさんは今日休むって昨日注文を受けた時に聞いたけれど、サーラさんは住み込みだからここにいるんだったね。」

「はい。」


サーラはにこにこしながらマシューに答えた。


「それでは失礼して、お食事の準備をさせて頂きますね。」


マシューは持参した籠から料理の乗った大皿をいくつかテーブルに出した。最後に小鍋を両手で持って辺りを見回し、困った様子でロイに尋ねた。


「ロイさん、こちらの鍋には温かいスープが入っておりますが、鍋はどちらへ置いたらよろしいでしょうか。」

「マシューさん、鍋敷きをこちらで用意致しますのでテーブルの上へお願いします。」


ロイが薄く切った板の鍋敷きをテーブルの中央へ置くと、マシューが鍋敷きの上に小鍋を置いた。マシューは持ってきた籠の中を見て、中に何も残っていないことを確認した。準備はこれで終わったらしい。


 「明日籠ごと取りに伺いますので、空いた器はこちらの籠へ入れておいて下さい。それでは私はこれで失礼致します。」


食事の配達を終えたマシューは作業場に続く扉の前で一礼してから台所を退出し、自分の店へ帰って行った。






       ********************************************************






 夕べも今朝も同じ場所に座っていたので、この三人だと座る場所が定まってしまったようだ。簡易ベッドの目隠し代わりにしている衝立を背にエルデ、エルデの向かいにサーラ、エルデとサーラの斜めにロイといった具合だ。


 「さて、二日続きだが三人で食事をしようか。食事の前に少し話をしたいからまずは乾杯だけしよう。ロイ、昨日の白葡萄酒はまだ残ってたかな。」

「はい。白葡萄酒と葡萄のジュースの両方残っております。」

「私とロイは白葡萄酒で。サーラは白葡萄酒と葡萄のジュースのどちらにする?」

「ぶ、葡萄のジュースで・・・お願いします。」

「ロイ、サーラの分も宜しく。」

「畏まりました。」


ロイが人数分の飲み物を用意してそれぞれの前にカップを置いた。俺はカップが皆に行き渡ったのを確認して口を開く。


「今日は魔法屋の増築作業が予定通り無事に終わって何よりだった。手伝ってくれたロイとサーラには大変感謝している。昨日のサーラの歓迎会と二日連続になってしまうが、慰労会を兼ねて今日も三人で食事をしよう。まずは乾杯しようか。まだ細かい作業は残っているが、これからの魔法屋に乾杯!」

「乾杯!」

「か・・・かんぱい?」


俺とロイはカップに口をつけ、中の白葡萄酒を飲み干した。サーラは俺達の様子を見てから、自分のカップにおずおずと口を付けた。それぞれのカップの中身が空になったところで、改めて俺は話し始めた。


「俺達―――いや、主に俺とロイが酔っていないうちに大事な話がある。この話が終わるまでは、俺とロイはお酒は無しで。皆、食事を目の前にしておきながら申し訳ないが、食事は話が終わってからだ。」

「畏まりました。」

「は、はい・・・。」

「サーラ。少し君に聞きたいことがあるんだが、いいかな。」

「は、はい。何でしょう・・・。」


サーラは自分の事が話題になるとは思っていなかったようで、目をまん丸にして驚いていた。


 「サーラは今日重い物を運んでいた時に魔法を使っていたよね?」


サーラはきょとんとした顔で俺の顔を見返してきた。


「え・・・そうなんですか?」

「うーん、やはり無自覚か。君と同年代の女性の腕力では、増築の時に使った石の塊を一つでも持ち上げることすらできないのが普通なんだよ。」

「あの石、そんなに重いんですか?私が持った時はそんなに重くありませんでしたよ。」

「魔法を使わずに運ぼうとすれば、かなり重いはずなんだけどなぁ。サーラちゃんは、これまでに重い物を運ぶ手伝いをしたことがあるかどうか覚えている?水汲みとか薪を運んだりとか。」


ロイがサーラに助け舟を出してくれた。


「すみません・・・わからないです。」


サーラは目を閉じて何かを思い出そうとしていたが、首を振りながら困った顔をして答えた。


「そうか、サーラは分からないんだね。別に今、分からなくてもいいんだ。それじゃぁロイに聞こうか。ロイはサーラが石を運んでいる時や運んだ後で、サーラの魔力について何か気が付いたことや感じたことはある?」 

「私にはサーラちゃんが石を運んでいる間も石を運んだ後も大きな魔力の流れは感じませんでしたし、特に魔力が減って疲れているような様子は見受けられませんでした。」

「そう。それなら重い物を運ぶ時は魔法を無意識に使うことに慣れていて、魔力も自分の身体から使わないで済ませているか、極少量の魔力で済ませているかのどちらかなのだろう。このことについては俺が魔法の使い方を教える時に、一緒に検証してみよう。」

「エルデ様の仰せの通りに。」


ロイは了承の意味も兼ねて軽く一礼した。俺は改めて二人に言い聞かせるように話す。


「という訳で、サーラは重い物を運ぶ仕事はしないでロイに任せておいて。」

「畏まりました。サーラちゃん、力仕事は俺に頼んでね。」

「へ?」

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