明日はどうしますか 2
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「な、何を選ぶんですか?」
自分が何を選ばされるのか、選ぶ内容にもよるだろう。ミリルにしては珍しく警戒の色が伺える。
「ミリルが明日一日ここの仕事を休みにするか、昼と夜の賄いをミリル一人で全部作るかのどちらかを選ぶんだ。ちなみに賄いは昼がミリルを入れて五人分で、夜は三人分だ。」
「うえっ、俺また明日の夜ここに泊まりかよ。」
ロイが賄いの人数で、自分が明日の夜も魔法屋に泊まることが織り込み済みである事を察してげんなりした。
「私が明日一日ここの仕事を休みにする場合、お店の食事と私の明日の仕事はどうするんですか。」
「ミリルが今日の仕事帰りに、マシューの店へ寄って明日の分の食事を注文してくれることで手を打とう。」
「それでは、昼と夜の賄いを私が一人で全部作った場合は?」
「皆でミリルに感謝して、有難~く、食事を頂くよ。」
「ええっ、それだけですか?」
「そうだね。」
私はしれっと答えた。
「それから、ここの増築が済んでも作業場の更衣室にサーラの作業着を置く場所はない。サーラの私室にベッドだけではなくてお店の服や着替えを置くための家具や調度品も必要だろう。それに、部屋の内装や家具の詳細については私やロイが手配するよりも、サーラがミリルと一緒に女性同士で選んだ方が必要な物かつサーラの好みの合う物やを選びやすいだろう。ということでミリルにはサーラに助言を頼みたい。明後日の朝、商業ギルドの紹介で家具職人が店まで来てくれることになったから、ミリルもサーラと一緒に打ち合わせに同席して欲しい。」
「わ、分かりましたわ。」
「それでだ。ミリルは明日、どうしたい?」
私はにやりと笑ってもう一度ミリルに問いかけた。
「な、何も出ないのでしたら、明日は休ませて頂きますわっ。」
ミリルの心はすぐに決まったようだ。
「了解。帰る時にマシューの店に注文を忘れないでね。それから、ミリルにはオーランの店へ行ってもらったけれど、そちらの話はどうなったかな?」
「どうなったなんてどころじゃないですよ!エルデさん、聞いて下さいよ。」
ミリルがソファーで前のめりになって話し始めた。興奮しすぎてこちらにまで唾が飛んできそうな勢いだ。ミリルってば、一応人妻だろ、おい・・・こんな姿を愛しの騎士様はご存知なのか?まぁ結婚しているんだから、知らないってことはないだろうとは思うが。
「はいはい。ミリルはちょっとお茶を飲んで落ち着こうか。」
ロイに諫められてミリルはソファーに座り直しお茶を勢いよく口に含んだ。ああ、あれは・・・
「げほっ、げほっ。」
予想通りミリルはお茶を慌てて飲んで咽ている。ロイは笑い出してしまうし、サーラも目を見開いていて固まっている。
「ほらほら、そんな咽てしまう位いい話なんだろう?浮かれ過ぎて残念なミリル様がお出まししているから、いつもの優秀なミリルに戻って順番に話してごらん。」
私はミリルに声をかけて、ミリルが落ち着くのを待った。
「ええっと。」
大きく深呼吸してから、ミリルは話し始めた。
「結論から申し上げますと、オーランとの交渉は成功です。」
「そうか、それは良かった。」
「よっしゃぁ!」
「あー、ロイもちょっと落ち着こうか。ロイはそんなに甘くないおやつが欲しかったのかい。」
私は左手をひらひらとさせ、珍しく片手を握り締めて喜んでいるロイを少しだけ窘めた。
「浮かれてしまい申し訳ありません。甘くないおやつがあるのは私としても有難いです。甘い物も食べられなくはありませんが、いつも甘い物ばかりだと口の中がどうしても気持ち悪くなるんですよ。」
ロイも落ち着いたようなので、ミリルに話を続けてもらおう。
「ミリル、話の腰を折って悪かったね。続きを話してもらえるかな。」
「はい、分かりました。やはり詳細は商業ギルドで話し合って決めたいとのことです。オーラン自身もこの話については人員の件からも商業ギルドに一枚噛んでもらった方が良いという判断でした。それから、オーランの都合の良い日ですが、明日の夕方は既に予定が入っているそうで明後日なら大丈夫と―――」
「なら明後日にしよう。明後日の夕方なら商業ギルドのマスターも空いていると言っていたから丁度良い。私の予定はどうにでもなるから大丈夫だ。今日・・・オーランは今頃も店をやっているのかな?」
「大体夕方前にはいつも店じまいするようなことを言っておりました。今日はそろそろ店を閉める頃かと。」
ミリルは少し考える素振りを見せた。オーランと話したことを思い出しているのだろう。
「そうか。明日ミリルには魔法屋の仕事を休んでもらうと言ったけれど、明日オーランへ『明後日の夕方商業ギルドで打ち合わせしたい。』という伝言も頼めるかな。商業ギルドの方へは私が伝えておこう。」
「それくらいのことでしたら大丈夫ですよ。私の家から直接オーランの所へ行っても問題ないですか。」
「ああ、ミリルが休みの日に頼むのだから、もちろん私服で構わないよ。伝言さえちゃんとしてくれたらそれでい。」
「分かりました。それでしたら、オーランへの伝言も私が承ります。」
「それでは、明後日の朝までの予定を皆で確認しようか。」
私は、自分を入れた四人の予定をまとめた紙をテーブルに置き、サーラにも分かるよう順番に読み上げた。
エルデ
今日:増築する部分に接する部屋の壁側にある荷物の片付けと移動(主として自分の寝室と魔法屋店内)
明日:モリスの手伝いで魔法屋の増築の立ち合い並びに手伝い、作業終了後にモリスが図面を引くために建物内の見学に立ち会う
明後日:ロイと一緒に店を開ける時間まで増築の細かい仕上げと後片付け
ロイ
今日:増築する部分に接する部屋の壁側にある荷物の片付けと移動(主に資材置き場と作業場)
明日:モリスの手伝いで魔法屋の増築の立ち合い並びに手伝い、作業終了後は後片付け
明後日:エルデと一緒に店を開ける時間まで増築の細かい仕上げと後片付け
サーラ
今日:増築する部分に接する部屋の壁側にある荷物の片付けと移動(脱衣所・洗面所)
明日:モリスの手伝いで魔法屋の増築の立ち合い並びに手伝い、作業終了は後片付け
明後日:ミリルと一緒に家具職人と打ち合わせ
ミリル
今日:増築する部分に接する部屋の壁側にある荷物の片付けと移動(主に作業場)、帰り際にマシューの店へ明日の昼食五人分と夕食三人分の配達を依頼
明日:魔法屋の仕事は休み。魔法屋への出勤は不要。オーランへ『明後日商業ギルドで打ち合わせしたい』というエルデの返事を伝える
明後日:サーラと一緒に家具職人と打ち合わせ
「皆、明後日までのそれぞれの予定は大丈夫かな?」
私の問いかけに残りの三人は頷いた。
「サーラが移動させる脱衣所と洗面所の物は台所の空いている棚に、作業場と資材置き場の物は、通路になる場所を残してなるべく反対側の壁際に移動させて。」
「あの・・・今日の夜、お風呂で使う分のタオルはどうしますか?」
「うーん、とりあえず全部移動しておこうか。」
「あ~サーラちゃん。あんなこと言ってるけど、エルデさんはお風呂に入る前にタオルを台所に取りに来るのを絶対に忘れると思うから、今夜エルデさんとサーラちゃんが使う分はそのまま残しておいた方がいいよ。」
「そ、それなら・・・今日の夜使う分は、そのままにしておきますね。」
「それはそうとエルデさん、お店の棚にある商品はどうしますか。」
「いけね、忘れてた。えーっと、増築するのは魔道具とアクセサリーのある棚側だから、種類別に箱に入れてポーション類のある棚の方へ置いておくしかないかなぁ。」
「明日は休みだから店の入り口の前に置いちゃダメなんですかね。」
「モリスが図面を引くために増築後に建物全体を見るから、全部の扉が開けられるように一時的に動かした荷物を置いて欲しいな。」
「分かりました。」
「エルデさん、増築する部分の壁際にある棚はどうしますか?」
「中の物を出したら、私とロイで移動させよう。ロイ、宜しくね。」
「分かりました。」
「他には何か質問ある?」
「あ、あの・・・」
「ああ、サーラは自分の分が終わったらミリルの手伝いを頼むよ。ミリルの分片付けが終わったら、ミリルと一緒に夕食を作って貰いたい。」
「わ、わかり・・・ました。」
「それでは、各自作業開始!」
私の掛け声で皆がそれぞれの場所の荷物を片付け始めた。




