お買い物へ行こう 6
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綺麗な色のジュースを売る店は、マーサに教えてもらった通りオーランの揚げ菓子屋からそれほど離れていなかった。サーラさんと私はすぐ食べるために買った揚げ菓子を持ったままジュース屋に向かう。
「ねえ、サーラさん。今度のジュース屋さん楽しみね。」
「じゅ、ジュースですか?」
「ええ、綺麗な色なんですって。見た目と味が違うものがあっても面白いわよね。」
「そ、そう・・・なんですね。」
サーラさんって、もしかしてジュースも知らないのかしら?さっきからずっと見る物全てが珍しいようだし、あまりにも物を知らなさすぎるわ。お店に帰ったらエルデさんに聞いてみよう。サーラさんのことを少し考えている間にジュース屋の前に着いた。
「いらっしゃい。」
店主と思しき若い男性が声をかけて来た。先の揚げ菓子屋のオーランと同年代位だろうか。
「こんにちは。さっき向こうで揚げ菓子を買ってきたんだけど、これに合う物はあるかしら?」
私は初めて来た店なので、思い切って店主におすすめを聞いてみた。
「う~ん、その揚げ菓子ってオーランの奴ん所のだろ?だったらお嬢さんの持ってる固いのにはこっちのピンク色のがさっぱりしていていいと思うよ。」
店主は視線を少しずらしてサーラの持っている揚げ菓子をちらっと見ると
「隣のお嬢さんのは柔らかい奴だから・・・水色のがいいかな。」
ふうん、一応私とサーラさんの揚げ菓子それぞれに合う物を勧めてくれたのね。オーランの所もそうだったけれど、マーサが言うだけあってこの店も結構頑張ってるじゃない。
「これって、両方色が変わるものなの?」
今日のお目当ては色の変わる飲み物だ。もちろん、色が変わらなければ他の店で買う気満々である。
「ああ、もちろんそうさ。何色に変わるかは買ってからのお楽しみだよ。」
「なら、あなたのおすすめを頂けるかしら。」
「ありがとう。お代は先払いで頼むよ。すぐ作るから、そこの席で待っててよ。」
店主は会計を済ませると手慣れた様子でコップに氷を入れてジュースを作り始めた。王都の飲食店で飲み物は陶器か木製のコップで出されることが多いが、この店は王都では珍しくガラスのコップでジュースを出してくれるらしい。
「はい、お待たせ。固い揚げ菓子にはこっちのピンク色、柔らかい揚げ菓子にはこっちの水色だよ。この棒でかき混ぜると、色が変わるからね。」
私がサーラさんと店の前にあるテーブル席について待っていると、店主がガラスのコップをトレーに乗せて持って来てくれた。中にコップと同じ透明なガラスの棒が入っている。
「悪いけど、飲み終わったらこのかき混ぜ用の棒とコップを戻してくれるかい。ガラスのコップは色の変わるジュース限定で出しているから、店に置いてあるかき混ぜ棒とコップの数もそんなに多くないんだ。」
「ええ、分かったわ。ありがとう。」
私は店主に返事をすると、サーラさんに声をかけた。
「サーラさん、どちらも美味しいうちに頂いてしまいましょう。」
「は、はい・・・」
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「うわぁ・・・」
早速ジュースをかき混ぜたサーラさんが目をキラキラさせて微笑んでいる。サーラさんのジュースは水色から綺麗なピンク色に変わった。私も、自分のジュースをかき混ぜてみる。
「・・・!」
私のはピンクから薄紫に変わった。味もさっぱりしていて美味しい。オーランの店の揚げ菓子もカリッとしていい香りがする。シナモンかしら?歯ごたえがあって、ジュースにピッタリだわ。
私は自分の食欲とジュースの色の変化に気を取られていて、すっかり向かいに座っているサーラさんの存在を忘れていた。あら、サーラさんてばお口のまわりに砂糖が沢山ついちゃってるわ。それにしても嬉しそうに食べているわね。甘い物が好きなのかしら。うふふ、可愛らしいわね。
サーラさんが食べ終わって少したった頃を見計らって、私は彼女に声をかけた。
「サーラさん、そろそろコップを返して残りのお買い物を済ませてしまいましょうか。明るいうちにお店に戻りたいわ。」
私達は店先でごちそうさま、と店主に声をかけながらコップとかき混ぜ棒を返し、店を離れた。
「そういえば、あのジュースってかき混ぜる前と後では味は違うのかしら?」
「あ、あの・・・私はすぐに混ぜてしまったので、分からないです。」
「サーラさんもそうなのね。私もうっかりしていて混ぜてからしか飲んでいないのよね。まあいいわ、また何かで王都に来る時のお楽しみにしておきましょう。」
あとサーラさんに必要な物は・・・そうね、雑貨とアクセサリー位ね。あれこれ見ながら、サーラさんの気に入った物を買えばいいわ。
私達は二人で王都の店を回りながらサーラさんの日常生活に必要な物を少しずつ買い揃えていった。あとは髪を束ねる物ね。サーラさんは髪の毛が長くてふわふわしているから作業する時に髪を束ねる必要があるわ。もしかしたら原料の液がはねて汚れるかもしれないから、替えも何個かあった方がいい。そうだ、お店に出る時にサーラさんの髪型はどうするのかをエルデさんに聞いてくるのを忘れたわ。お店で仕事をする時に使う物は今日は買わないでおいて、エルデさんに聞いてから買った方がいいわね。そうだ、うちのお店のアクセサリーを宣伝替わりにつけてもらうのもいいわよね。帰ってからエルデさんに相談しよう。
王都の中を歩いているうちに、色とりどりの紐やリボンを売っている小間物屋を見つけたので行ってみることにした。
「サーラさん、お店で仕事をするときに髪の毛を束ねる必要があるので髪の毛を束ねる物を買いに行きましょう。今日のお買い物はこれで終わりよ。」
店に着く前に、そうサーラさんに声をかけると心なしかサーラさんの顔が嬉しそうに見えた。いきなり連れまわされて疲れたかもしれないわね。
「こんにちは!この子の髪を束ねる物が欲しいんだけど。」
女性にサーラさん用と伝えて店の商品を見せてもらう。
「いらっしゃい。おや、お嬢さんこの辺ではあまり見ない髪の色だねぇ。」
くすんだ金髪を後ろで結い上げた中年の女性が店の中から出て来た。どうやらこの人が店主のようね。王都で商売しているだけあって、この人よく見ているわね。確かにサーラさんの銀色の髪って・・・どこの出身なのかしら?
「サーラさん、あなたが使う物だから好きな物を選んで大丈夫よ。作業場で使う時の物は汚れてもいい物か洗える物ににした方がいいわ。」
「おや、髪の毛を束ねるものが汚れるだなんて、お嬢さんたちは染物でもしてるのかい。」
店主が私達に声を掛けてきた。私達の会話を聞いていたのだろう。
「ええ、染物ではないのだけれど植物を大量に扱うから、樹液やら葉の汁が顔や髪の毛に付く時があるわ。」
「そうかい、それなら水ですすげるものの方がいいかねぇ。ちょっと待ってておくれよ。」
店主は店の奥から数種類の紐が入った細長い箱を持ってきた。
「これはお嬢さんたちのように水で洗える物が欲しいというお客さんに出している紐だよ。蜜蝋をしっかり染み込ませてあるから、水をかけて洗えばある程度の汚れは落とせるよ。まあしっかり汚れを落とそうとお湯で洗ったり、こすったりすると染み込ませてある蜜蝋が取れてしまうから、気をつけておくれ。そこだけ気をつけてもらえれば、普通の紐よりも丈夫さね。」
「あの・・・すみません。これは何色があるんですか?」
珍しくサーラさんが店主に質問していた。
「ああ、これはなかなか売れないから、今はここにある黒と紺と茶色しか作っていないんだよ。一束まとめて買ってくれるなら、好きな色で作ってあげることもできるよ。お嬢さん、他の色が欲しかったのかい?」
「えっと・・・そうなんですね。それでは、こちらを・・・おねがいします。」
サーラさんが選んだのは紺色だった。サーラさん、本当は何色が欲しかったのかしら。また今度サーラさんと買い物に来る時は、このお店にも寄ることにしましょう。
サーラとミリルのお買い物編はひとまずこれで終わりです。
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