お買い物へ行こう 5
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ジルさんのお店を出てしばらくすると、王都の飲食店が集まっている道に出た。あちこちの店からいい匂いが漂ってきて、歩いているだけで余計に空腹を感じてしまう。お腹の音、サーラさんに聞こえていないといいんだけれど。
「サーラさんは、お昼に何か食べたいものある?」
「え・・・とりあえず、た、たべ・・・られれば・・・。」
「サーラさんは、王都に来るのは初めてだっけ?」
「は、はい・・・。」
相変わらずサーラさんは見る物全てが物珍しいようで、あちこちをキョロキョロと見ながら歩いている。王都で生まれ育った私には何の変哲もない普通の景色だけれど、そんなに物珍しいのかしら。
「さっきマーサに聞いた揚げ菓子とジュースも気になるから、まずは軽めに食べましょうか。サーラさんはそこのベンチで座って待ってて。」
私はサーラさんに近くのベンチで場所取りも兼ねて座ってもらっている間に、炙った肉の薄切りを挟んだパンを二つ買い、一つをサーラさんに渡した。
「はい、どうぞ。お口に合うといいんだけど。」
「あ、ありがとうございます。これ、どうやって食べるんですか?」
「そのまま、齧り付いて大丈夫よ。この辺りの人は皆そうやって食べているわ。それでは、頂きましょうか。目の前の糧に感謝を!」
私は感謝の言葉もそこそこにいそいそと食べ始めた。うん、やっぱりここのお肉はおいしいわ。どうやって味をつけているのかしら。少し燻製のような香りもするけれど、う~ん、やっぱり買い食いは最高よねぇ・・・
私は自分の食欲に集中し過ぎていたことに気づき、慌ててサーラさんの様子を見た。サーラさんは少しずつかじりながら食べている。ゆっくり食べているけれど、食べにくいのかしら。
「サーラさん、何か飲み物があった方がいい?後でジュースを飲みに行くから今は飲み物を買って来なかったんだけど、大丈夫だった?」
「え、ええ・・・少し時間はかかってしまいそうですが・・・大丈夫ですか?」
「それ位の時間はあるから大丈夫よ。食べ終わったら揚げ菓子とジュースを買いに行きましょう。」
私はサーラさんが食べ終わるのを待っている間に店を回る順番をぼんやりと考えながら、マーサに教えてもらったジュースはどんな味なんだろうと想像していた。
「ミリルさん・・・お待たせしました。もう、大丈夫です。」
サーラさんに声を掛けられて私は我に返った。サーラさんは王都は初めてなのだから、私がしっかりしないと。
「そ、そう。それでは揚げ菓子とジュースを買いに行きましょうか。どちらのお店も近いようだから、揚げ菓子から見に行きましょう。」
マーサに教えてもらった揚げ菓子屋の前まで来た。店頭では店主と思われる若い男性が揚げるものを次々と油に入れたり、揚がった物を油から引き揚げたりとしていた。私は店主と思われる若い男性に声をかけた。
「こんにちは~。マーサから聞いてこちらに来たんだけれど、おすすめの物はどれかしら?」
「いらっしゃい!マーサさんの知り合いかい?そうだねぇ~最近はこのねじったやつが形が面白いって人気だよ。だけど、俺の一押しは、こっちの甘くない奴だね。パセリ味とチーズ味、胡椒味は甘い物が苦手なお客さんにも人気でお土産に買って帰る人が多いよ。酒のつまみにもいいよ。」
へぇ、甘くないのもあるんだ。エルデさんやロイにはいいかも。
「ねぇお兄さん、ちょっとずつ味見させてもらえないかしら?」
「こっちに味見用に小さく切ったのがあるからそれでいいかい?。そっちのお嬢さんもよかったらどうぞ。」
と男性は言いながら、小さく切った色々な揚げ菓子を木製トレーの上に並べて出してくれた。
「お嬢さん達の腹に余裕があるなら、全部食べてもいいよ。」
「本当?それなら遠慮なく頂くわ。サーラさんも頂きましょう。」
私はサーラさんと並んでつまみ始めた。うん、店主が勧めるだけあって、この甘くないのは美味しいわ。甘いのもカリッとしたものや、ふわふわしたものがあったりで味や食感に飽きがこないようにしているのね。大きさも一つ一つが大きすぎず、何種類も食べ比べられるように小ぶりで丁度いい。お店に今日のお土産として買って帰ろうかな。休憩時間にお茶を飲みながら皆で食べるのに良さそう。
「うん、お兄さんがお勧めするだけあって、甘くないのは初めて食べたけれど美味しいわ。ねえ、これって日持ちはどれくらいするの?」
「そうだねぇ~揚げ菓子はどうしても日がたつと味が落ちてきちゃうから、あさって位までには食べて欲しいなぁ。俺としても自分の作った物は美味しいうちに食べてもらいたいし。」
「そう・・・それなら、この甘くないの全種類と、ねじってあるのを5つずつ下さいな。サーラさんはどれか欲しいのある?」
「えっ・・・と、この丸いのが・・・」
「そう、それならこの丸いのも5つお願い。それから、お兄さんの所って配達はしている?」
「うーん。俺一人で最近この店を始めたばかりだから、この近くだったら夕方店を閉めてから俺が寄ることはできるけれど、それ以外は悪いけれど無理だな。」
「分かったわ。実は私達、まだこの辺りで買い物の途中なの。配達が無理なら、先にお金は払うから私達の買い物が終わるまで、お兄さんの店で今買ったものを預かってもらうことはできる?あと、取りにくるまでに味が混ざらないように種類別に袋に入れてもらえると助かるんだけど。」
「それ位ならお安い御用さ。全部二人で持って帰るなら、持って帰れる用にまとめて袋に入れておくよ。」
そういいながら、若い店主は注文したものを手際よく小さな袋に入れていく。
「お姉さん、持ち帰り用の袋は一つでよかった?」
「ええ一つでいいわ。サーラさん、お店へ持って帰るのとは別に、今すぐ食べたいものを一つずつ買って食べましょうか。何がいい?」
「わ、私は・・・この、ふわふわのを・・・」
「分かったわ。それなら、このふわふわしたのとカリッとしたの一つずつ頂戴。」
「お姉さん気前がいいねぇ。お代は全部まとめてでいいかい?」
「ええ、もちろんよ。それから、私はミリルよ。魔法屋で働いているわ。」
私は代金を支払って、すぐに食べる二つを受け取った。
「魔法屋のミリルさんだね。俺はオーランって言うんだ。残りのやつは俺がちゃんと店の中で預かっとくから、二人でゆっくり買い物してくるといいよ。俺にはよく分かんねぇけど、女同士の買い物ってやつは見てるだけでも楽しいんだからとにかく邪魔すんなって、うちのお袋がよく言ってるよ。買ってくれた物を預かるのは全然構わないけど、俺も夕方には店を閉めたいんだ。それまでにここに戻って来れるかい?」
「それは大丈夫よ。私達も夕方までに魔法屋に戻らないとならないから、間に合うように必ず戻って来るわ。それにしても、荷物を気にしないで買い物できるなんて本当に助かるわ。それじゃあオーラン、また後で寄らせてね。」
「おう、またいつでも買いに来てよ。」
私達はすぐに食べるつもりで買った揚げ菓子を持ったままオーランの揚げ菓子店を離れ、綺麗な色をしたジュースを売る店を目指した。
あと1話ミリルとサーラのお買い物の話にお付き合い下さい。
冬の童話祭2019に短編『逆さ虹の森 最後のどんぐり』を出品中です。こちらの連載とは違う雰囲気の作品ですが、併せて箸休めにご賞味頂ければ幸いです。
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