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交流しよっ!  作者: 一理
2/22

か・ぞ・く 2

 朝、6:10に目が覚めてから流しに行き、顔を洗い意識をハッキリさせる。髪留めを探して動き回った後キッチンに移動する。たたんでおいたエプロンを手に取り、腰に巻き、冷蔵庫を開ける。

「ふんふんふーん」

 今日子は鼻歌交じりに料理を始める。と言っても朝からこったものは作らない。冷蔵庫からキャベツやトマトやシーチキンを取りだし、お皿に盛り付ける。棚においていたパンを袋から三枚とりだし、一枚を半分に切ってレンジにいれる。

「ピっとな♫」

 パンが焼ける前に卵を二つ冷蔵庫から出して熱しておいたフライパンで焼く。

「お!お湯も沸いたね」

 ガチャ・・明日香が朝食の匂いでおなかをすかせて起きてきた。

「お母さんお早う」

「おっはよー!顔洗ってらっしゃい」

 何気ない、いつもの日常・・だけど今日はその日常が少し変わる。

 明日香が顔を洗い終わり笑顔でキッチン前の椅子に座った。

「お父さんくるの今日だよね!」

「そ-だよぉ、楽しみだねぇー」

 朝食の用意を済ませ机に並べる。

「いつくるの?」

「お昼に来る予定だよ」

 明日香は楽しみで仕方ないらしい、保育園でお友達にお父さんの話をされて辛い思いをしてきたから・・本当のお父さんが来るのが楽しみで嬉しくて堪らないらしい。

 そんな明日香を見て今日子はもっと深く慈愛に満ちた笑顔で笑った。





「断るだって?」

「はい」

 仕事の上司、主任の永原元鷹ながはら もとたかは晴生をみて不服そうな顔をした。

「ど-してさぁ~せっかく美人で若い子を見つけてあげたのに~、子持ち駄目なの?」

「そういう問題じゃありません」

「あー、はいはい成程」

 主任は手を鳴らした。

「君そっちのケの方?ボクと一緒だね~ボクはどっちでもいけるけど」

「あんたと一緒にしないで下さい」

「冗談なのにー」 

 クスクス笑いながら主任は目を細めた。この人は自分の部下が困る様を見るのが最も快楽のときらしく、重要な講演のときも邪魔したり他の人がひくような質問までしてくる。

 だからこいつ嫌いなんだ。と晴生は心の中で叫んだ。

「とにかく私はお断りしましたから」

「いーのかなぁ~???」

 出て行こうとして見せた背中を戻す。

「どうゆう意味ですか?」

 にィ

「相手の女性を紹介した会社・・うちのスポンサーなんだよね~」

「・・だからなんですか」

「君と彼女が結婚するって条件で今回驚愕な金額をもらってんのに~」

「驚愕って・・指定したのあんたでしょうどうせ。それが途切れて困るのはお互い様でしょう」

「ボクは別に痛くないよ?もしこのお見合いを君が断るようだったら君の大事なデーターを向こうにあげるって約束しちゃった」

「嘘も寝言も死んでから言ってください」

「死なないもーん、信じてないでしょーう、ホラ証拠」

 書類のコピーが一枚目の前に出された。確かに本物らしい・・会社も中々の王手だ・・。

「・・・・・・なんで俺のデーターなんですか、向こうも貰ったって困るでしょうよ」

「うちのライバルに売るんだって、うちの優秀な人材だからね君☆」

 この腐れ野郎・・。

「せめて一年我慢してよ、そうしたらボクのほうから断ってあげるからさー」

「あんたが約束守れるんですか」

「敬語崩れてるよ★・・なんなら契約書でも書こうか?」

 にこー・・と笑う主任に殴りたい衝動を抑え、晴生はしぶしぶ頷くのであった。


 昼12:35

 ピンポーン。家のチャイムがなる。

「あーい」

 明日香が今日子よりも先に扉を開ける。


「・・石河今日子さんのお宅ですか?」


 奥から今日子が歩いてきた。

「はい、今日子ですが・・もしかして夕島さ―――」

「きゃぁー!お父さんだ―――!!お父さんが来た―――!!お母さんお父さん来タァ!!」

 突如興奮しだした明日香が今日子の周りを跳ね回り、男性と眼が合うと後ろに隠れた。

 少し沈黙。

「・・夕島さんですよね?」

「えぇ・・」

 キラキラと輝く明日香を見て晴生は嫌悪した。子どもと騒がしいのは嫌いなのだ。あと、そのキラキラした目を止めてほしい。

「どうぞ、お上がりください」

 持っていた鞄を奪われる。

 『奥さん』になるらしい今日子は確かに若い。思っていたようなちゃらっとした女ではなかったが、人が良さそうだ。母子ではあるがバツ一ではない・・男に孕まされて逃げられたのか・・?

 リビングについて向かい合って座る・・なんだこれは、面接か?

「あの」 

 そう思っていると今日子が笑顔で話しかけてきた。

「はい?」

 二人で顔を見合わせた。何をいう気だ?

「はじめまして!『奥さん』の石河今日子です!」

「右に同じ『娘』の石河明日香です!」

 すぅ

「「ふつつかですがどうぞお願いします!」」

 しーん

「・・・・はぁ」

 二人は緊張でもしたのか頬が少し赤いが、正直聞かされているほうが恥かしかった。

「お断りしても良いですか」

「「えぇ!?」」

 二人はショックを受けた顔をした。

「一年だけココで生活しますが、俺は結婚意欲はありません。つまりあなた方と家族になるつもりはありません」

「そうですかぁ・・何で一年なんですか?」

「・・主任命令です」

 明日香は泣きそうな顔をしていたが、今日子はいたって冷静で、泣きそうな明日香に何かを耳打ちした。すると明日香は晴生に飛びついた。

「何をいったんですか」

「さぁ・・?なんでしょう?」

「・・・・」

 明日香はぐいぐい身体を押し付けるように抱きついてくる。初めて子どもを抱っこしたが重い。そして邪魔だ。

「とりあえず、一年。お願いしますね『旦那さん』」

 不敵な笑みで今日子は笑った。

 こうして模擬家族ができたのであった・・

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