か・そ・く 3
「おっはよぉございまぁーす」
「・・・・・・・・・・・・」
朝6:40に晴生は娘明日香に起こされた。
(・・挨拶いらないから寝かせて欲しかった・・)
急に休みを貰ったわけだが、前日までも仕事をしていたのだ、せっかくなので惰眠を貪ろうとした矢先の攻撃は、思ったよりも身にしみた。
「・・おはよう」
不機嫌なトーンで言っても怯える様子はなく、ベットの上でキャッキャッと喜んでいた。
「あ、おはようございます、旦那さん起きましたか?」
スーツ姿の今日子も現れ、ベットの横に座った。
(・・・・なんだこのシュールな光景)
「低血圧なんですか?」
「いや・・でなんか用か?」
「はい、今から私は仕事に行くのですが」
「あぁ」
「私、今日は残業なので少し帰るの遅くなります」
「あぁ、それで?」
今日子はお財布を取り出し、ベットの上に置いた。
「明日香のお世話、頼みますね」
にっこりと笑うと立ち上がり、扉を開けた。
「・・・・え」
「分からないことは、お隣のお婆さんにきいてください、飯嶋さんって言います。それじゃあ今日も元気に」
「いってらっしゃぁーい」
明日香は両手で手を振ると今日子も手を振って去っていった。
「・・・・」
扉が閉まると明日香は晴生に抱きついた。
「お父さん起きてー」
「・・・・お父さんじゃない」
「お父さんお父さんお父さん」
この餓鬼・・連呼しだしやがった。
「ふー・・分かった分かった」
布団から起きる。
それにしても昨日は今日子に先に寝ててくださいといわれ布団に押し込められて寝ていたが、今日子は一体何処で寝たのだろう・・一緒に寝ていたのか・・?熟睡しすぎてなんにも思いだせん
「お父さん、お母さんが朝食用意してるよ」
服をクイクイと引っ張られる。
「お父さんじゃない」
溜息をつきながらリビングに歩き出した。
「きょーこーーー」
会社につくとすぐに同僚の愛海子が現れ、今日子の肩を掴んだ。
「どうだった?男!イケメン?」
「そうね、どちらかというといいほうだったわ」
「へぇー、今度遊びに行こうかな~」
「やめといたほうがいいわよ?」
「えー?なんでよ」
今日子はニッコリと微笑んだ。
「コミュニケーション能力の乏しい方ですから」
「男ってのはそこがいいんじゃない、五月蝿い男より黙ってできる男よねー」
今日子はロッカーに鞄を入れると自分のディスクに座った。
「石河さん、どうだった?お見合いの彼」
「課長」
もうすぐ定年の禿げ上がりの課長が突如横に現れたので、今日子は急いで立ち上がり挨拶をする。
「コミュニケーション能力の乏しい方ですが、問題ありませんよ」
「根に持ってるの?」
愛海子は少し覘きに行くのを止めようかなとチラッと思った。
「ま、先方が君を指名してきたのはコッチも驚いたんだけどね」
「・・そうなんですか?」
「そうだよ?向こうの偉いさんが君と彼はどうだっていいだしてね、うまくいったら会社の利益にもなるしってことで・・あぁ別に君を売ったわけじゃないんだよ?ただ社長も君に幸せになってほしいからって」
「社長が、ですか」
今日子は歩いていった課長を笑顔で見送ると愛海子のほうを見た。
「あんたってどういうコネもってんのか知らないけど、ここの社長とも知り合いって凄いわよね」
「そうだね、私もビックリよ」
「・・いやいや」
今日子は時計を見た。
・・明日香と仲良くできてるかしら・・?
「・・・・・・」
「あははは」
とりあえずソファに二人並んでテレビを見るが、さっきからチャンネルの権利は明日香に取られ、子ども向け番組を見せられている。正直何が面白いのか分からない。
「・・・・」
それにしても何もない家だ。散らかってもない、洗濯物もない、食べ終わったお皿はとっくの昔に洗った。なんというかこざっぱりした家だ。今日子のさっぱりした性格がよく見受けられる。
「・・おちび」
「明日香だもん」
返事をするならおちびでいいや。
「おちび、今までお母さんが居ないときはどうしていたんだ」
「お隣のおばあちゃんとこ」
「お隣・・?」
『分からないことは、お隣のお婆さんにきいてください、飯嶋さんって言います。それじゃあ今日も元気に』
「なるほど、飯嶋さんか」
飯嶋さんが誰か知らんが、特に今はどうでもいい情報だったな。
「明日香ねお母さんが働くからいっつもお留守番なの」
そりゃ会社に子ども連れて行けまい
「お父さん居たらお母さん働かなくてもいいんだって、保育園のたっちゃんが言ってた」
「お父さんがいても、低堕落なヤツだったら働かなくちゃいかんよ」
「ていだらく?」
子どもには必要のない情報だったな・・っていうか、何時の間に人の足の上に座っているんだ。
「ね」
「あぁ」
「お父さんは明日香のこと嫌いなの?」
「・・」
嫌い?
「・・分からん」
正直に答えてみる。
「好きだといえば何か変わるのか?」
「お父さん」
「・・じゃあ嫌いだ」
「じゃあお母さん」
「なんだそのじゃあは、おかしいだろう」
明日香は自分で言ってきゃっきゃっと笑っていた。ずいぶんといい根性をした娘だな
「おちびの、前の父親はどうした」
「知らない」
「どんなやつだったかも聞いてないのか?居なくなった理由も」
「さぁ」
明日香が嘘をついている風はない、ということは今日子は教えていないらしい。しかし明日香が聞かないでおくはずもないだろう・・
「お母さんは何も言わないのか」
「言うよ」
言うのか
「えっとねー『明日香はお母さんのお腹から産まれたんだよ。お母さんが力んだら明日香が産まれたんだよ、お父さんは力んでもしょうがないから居ないんだよ』って」
嘘は言ってないけど、頭おかしいんじゃないのかお母さん。理由がおかしいだろう・・いや正しいのか?
「・・おちびはお父さん欲しいだろうが、お母さんは欲しくないんじゃないのか」
「なんで?」
「なんとなく」
明日香は首をかしげた跡、首を横にフッタ。
「お母さんが、いっつもいってるもん『二人は寂しいね』って」
「・・・・・」
そうなのか・・
俺は一人でも寂しくない。
「昼だな」
さぁ、何食べようか・・。
「・・・・なんだか俺ニートみたいだな・・」
激しく嫌だ。




