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83話 レベルが上がらなくても強くなれるというアイテム?

 何が起こったのか。


 香りを嗅いだだけで、着替え終わるとは……。


 仄かに残る生温かさは誰かが着ていたモノっぽい。


 モルフィンの平熱は38度らしいから、時間が経っても体温が残っているのかもしれない。


 モルフェウス界で剣技を教えてくれた時に着ていたものにそっくり……いや、そのもの?


 それに、ユリの香りはモルフィン以外に考えられない。


 体臭がユリの匂いなのか……神様は不思議な仕様だ。


 青いジャージで立ち尽くしていると、頭の中に声が聞こえてきた。


〈弟子ログインボーナス。スキルシステムを獲得。スキルポイントを3ポイント手に入れた〉


 弟子ログインボーナス……。


 もう、俺はモルフィンの弟子になってしまったようだ。


 断っても俺の意思は反映されないとか……。


 きっと、ダレンさん以外の神様は人の話を聞かないのではないだろうか。


 ステータス画面を開くと、スキル獲得メニューへの矢印が現れた。


 獲得できるスキルは……。


[⇒くちぶえ 消費0ポイント  歩く 消費3ポイント 呼吸 消費3ポイント]


 何だか、使えそうにないスキルばっかりだ。


 貯めておけば、もっといいものが覚えられるのだろうか。


 0ポイントならばと……、くちぶえのスキルを覚えてみた。


 覚えてみると、スキルの説明が現れる。


[そのフィールド上で出会ったことのある自分より格下のモンスターを一匹呼び出せる]


 モンスター呼んじゃうのか……、それに、自分より格下のモンスターなんて存在するのか疑問。


 そこに更に声が聞こえてきた。


〈デイリークエスト開放〉


 デイリークエスト?


 ステータス画面のスキルの矢印の下に、クエストを示す矢印が出現した。


[デイリークエスト モンスターを10匹討伐せよ]


 これは無理だ……。


 ステータスもないし、武器もないし、唯一勝てそうなのは……スライム?


 ドクロン装備に着替えればいけるのかもしれない。


 けれど、武器は……。


 魔法バッグの中をまさぐる。


 入れた覚えのないものが入っているくらいだから、武器くらい入っているかもしれない。


 何か手に触れた。


 出てきたのは、銅の剣。


 しかし、この銅の剣は以前に持った銅の剣とは明らかに違う。


 重さを感じても、持ち上がらないわけではない。


 そうか……、判定付きの銅の剣は俺のステータスを認めないけれど、これは只の銅の剣なのか。


 判定付きの銅の剣は、判定を通ってしまえば、この銅の剣より軽くて使いやすいのだろう。


 ゴブリンが使っている銅の剣は、俺の低いステータスを認めてくれないから……持てやしない。


 けれど、普通の銅の剣だ。


 普通が一番。


 神様がくれる武器なんて癖が強くてかなわない。


 モンスターと戦うなら……ドクロン装備に着替えてみようか。


 魔法バッグから、昨日着ていたドクロン装備を取り出して見た。


 着るときは一瞬だったのに、脱ぐ時は普通に脱がないといけないジャージがちょっと、理不尽だ。


 黒い盗賊っぽい姿は正義の味方っぽくはないけど、ドクロン装備の効果は抜群だ。


 着替えてみたら途端に力が湧き出る。


 けれど、スキルの矢印は残っているのにデイリークエストの矢印は消えてなくなった。


 どうやら、弟子として認められるのは青ジャージを着ている時だけのようだ。


 青ジャージに着替えるためにドクロン装備を脱ぐと、途端に気持ち悪くなる。


 ステータス変化で起こるこの症状さえなければ、もっと気楽に着るのに……。


 ステータスが低すぎる俺が悪いのか。


 その場に、10分ほど座ってドクロン装備の酔いを覚ますことにした。


 装備酔いが覚めてから青ジャージに着替えると、デイリークエストの表示がまた現れる。


 このクエストをクリアすると何が貰えるのだろうか。


 俺の中の探究心がざわめき始める。


 ひょっとしたら、イイモノが貰えるかもしれない。


 この銅の剣をスライムの核に突き刺せば、スライムを倒せるのではないだろうか。


 俺の探究心は時間とともに高まっていく。


 俺だって、やってやれないことはない。


 口笛で呼べるモンスターは俺より格下なんだ。


 試しに吹いてみよう。


 何も来なかったら、ショックだ……。


 俺は犬を呼ぶみたいにひゅーっと口笛を鳴らす。


 途端に目の前に魔法陣が現れ、スライムらしきモノが召喚された。


 俺は現れるやいなや、銅の剣を核らしき赤いものに突き刺す。


 何て言ったって格下モンスター、いきなり召喚されて慌てていたに違いない。


 俺が現れて真っ先に刺したその核は、活動が休止していく。


 よくよく見てみるとやっぱり、スライムじゃないか。


 これで、一匹だ。


 ちょろいもんだ。


 死体を魔法バッグの中に収納する。


 後、9回繰り返せばいいのか。


 もう一度、口笛を吹いてみた。


 またもや、魔法陣が出てきてスライムが現れる。


 俺は銅の剣で核に向かって剣を突き立てようとした。


 それより、一瞬早くスライムの触手が1本伸びて俺の身体に当たってくる。


 俺は驚いて、たまたま後ろにあったベッドの上に背中から倒れ込んだ。


 格下とか言っても、弱点の核を狙わないで倒そうとすると、スライムの方が俺より強い。


 触手の当たったところは石ころをぶつけられたような痛さがした。


 それでも、気を取り直して触手の動きを警戒しながらスライムに近づいていく。


 一気に銅の剣で核を突き刺す。


 スライムの核は今度も色を失っていき……生命活動を終える。


 3匹目から以降のスライムはどのモンスターも触手を伸ばして、攻撃してくるようになった。


 知恵が付いている?


 たまたまなのか?


 これには、少しだけ離れて触手の動きが治まったのを確認してから突き刺せば上手くいく。


 気になるのは、少しずつ触手が伸びる本数が増えて、体格が大きくなってきている気がする。


 10匹目のスライムは触手が5本も伸びてきて、今までの2倍の大きさ……。


 俺を狙って、的確に触手が伸びてきた。


 俺はその触手を切り払いながら近づき、スライムの核を突き刺しにいく。


 身体には入ったものの……剣はすんなり刺さらず、途中で止まってしまった。


 スライムの身体が硬くなってきているのだろうか。


 俺は銅の剣の柄を思いっきり足で蹴飛ばした。


 一気に剣は奥に突き進み、核を貫き、色を変色させていく。


 最後のそいつを倒し終えた時、また声が聞こえた。


〈デイリークエストクリア。力の実、素早さの実、スキルポイントを3ポイント手に入れました〉


 レベルが上がらなくても強くなれるというアイテム?


 目の前に光が現れると、その光の中からピーナッツくらいの木の実が二粒だけ落ちてきた。


 どっちがどっちなんだろう。


 けれど、そんなのはどうでもいいことだ。


 俺はその粒を2粒とも口の中に放り込む。


 どちらも、ピーナッツの味そのもの。


 しっかり味わって飲み込んだ。


 途端に身体に力が湧いてくる気がした。


名前 :小林直樹

種族 :人間

ジョブ:なし


レベル:1

HP  :103

MP  :33

力  :15

敏捷 :15

体力 :7

知力 :30

魔力 :40(腎臓内に10万)

運  :20


 ……やった……強くなってる。


 俺の時代がこれからやってくるに違いない。


 クエストをこなしていけば、俺は強くなれる。


 何だか、すっかり嬉しくなって透析室に向かった。


 しかし、透析室の入口まで来ると違和感に気がつく。


「ん?」


 何だか、気分がおかしい。


 力が入らないし、足元はふらつくし、なんだか最悪の気分になっていく。


 フラつきながら透析室の中に入った時には、もう一歩も歩けずに崩れ落ちていた。


「どうしたの、お兄ちゃん?」


 ゴブリンが駆け寄ってくる。


「これは……テント状T波。ゴブリン。直ぐにベッドに運んで」


 離れたところにいるベルさんはゴブリンに俺をベッドに運ぶように指示を出した。


「直ぐに透析を始めましょ。準備は私がしておいたから、透析はゴブリンが始めて」


 ベルさんも透析回路のプライミングできるのか。


 ただ回路の中に生理食塩水を満たすだけとは言え、ベルさんができるなんて思わなかった。


 ゴブリンは俺をベッドに運ぶと、シリンジと消毒綿を持ってきて透析回路と俺の首の管を繋げた。


 徐々に俺の血液で染まっていく透析の回路……。


 どうやら、ステータスアップのアイテムはカリウムを大量に含んでいたようだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 何故か百合の香りを嗅いだだけで青ジャージに着替え終わるとは便利ですね。 小林君は、モルフィンの世界に来たようですね。 今、着ているジャージが生暖かいのはモルフィンさんが着ていたから だと思…
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